復興するための修繕費や流された廃材を処分するためにたくさんの資金が必要となります。今回は東日本大震災の必要な復興の財源を確保する目的で作られた税金である復興税(復興特別所得税)について見ていきましょう。
そして自身の持っているマンションを売却する際、税金がどのように課税されるのか確認していきます。
復興税(復興特別所得税)とは何か?
復興税とは、東日本大震災の復興に必要な財源で金融機能安定確保や、廃棄物・リサイクル対策を推進するために必要な経費を徴収することになった期間限定の税金です。2011年12月に「東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法」で復興特別所得税が定められました。期間は平成25年(2013年)から平成49年(2037年)までの各年の所得に対して課税されます。今は廃止されましたが以前は法人税にも課税されていました。
サラリーマンの方はいつの間にかお給料から天引きされているので復興税の存在も知らないままに払っていることが多いかと思います。
復興税は世間的にもあまり知られていないため、不動産売却時の確定申告の申告書にも記入を忘れる人が多いようです。特に税理士に依頼せず、自身の手書きで申告書を作成する人は、復興税の追徴課税を取られないためにも記入漏れには注意しましょう。
復興税の納税義務者は、所得税を納めている人の全てが対象となります。
復興税の税率は一律2.1%となっています。
復興税の課税対象となる所得のある非永住者以外の居住者の税額に2.1%を累乗した金額を「復興特別所得税」として徴収されます。非永住者とは簡単に言うと、普通に日本に住んでいる人の事です。
フリーランスなど個人で所得税を納めている人も更に復興税を同時に納めなくてはいけません。
平成25年から平成49年まで(2013年から平成2037年まで)の各年の基準所得税額が、復興特別所得税の課税対象となります。
復興税の計算方法
復興特別所得税額は次の計算で答えを出すことができます。
復興特別所得税額 = 基準所得税額 × 0.21(2.1%)
納税額は、所得税と復興特別所得税を合わせた金額で計算することになります。
課税期間の確定申告については、毎年、所得税と復興特別所得税を一緒に申告しなければなりません。
所得税や復興特別所得税の申告書を提出したら、その申告書の提出期限までに申告書に記載した所得税と復興特別所得税を足した額を納める事になります。
所得税や復興特別所得税の申告書を提出した方について、所得税と復興特別所得税の控除しきれない特別税額や源泉徴収があるときは、その金額が還付されます。
源泉徴収義務者の方は、お給料や源泉徴収をすべき所得を支払う際、その所得について所得税と復興特別所得税が徴収されます。
個人の所得で復興税の課税される対象となるのは、非永住者以外の居住者 全ての所得に対する所得税額、非永住者 国内源泉所得及び国外源泉所得のうち国内払のもの又は国内に送ったお金に対する所得税額、非居住者の国内源泉所得に対する所得税額です。
非永住者以外の居住者は、お給料をもらえばほぼ復興税が課されるのです。 ゆえに、マンションなどの不動産を売却したときも、譲渡所得が発生した場合には所得税が発生します。しかし、不動産を売却すれば必ず復興特別所得税を払わなくてはいけない訳ではありません。
マンションなどの不動産を売却しても課税されない場合を見てみましょう。
売却した場合の課税対象である譲渡所得下記のような式で表されます。
譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用
ここで譲渡価額とは実際に売却した時の金額です。取得費とは売却したマンションなどの不動産を当時購入したときの価格になります。ただし、建物は減価償却後の値段となります。(減価償却とは時間の経過や使用によってその価値が減少する事)譲渡費用とはマンションなどの不動産の売却に掛かった費用です。例えば仲介手数料や名義変更料、印紙代などが該当します。
売却した譲渡価額が3,000万円であっても、取得費が5,000万円のマンションであれば、譲渡所得はマイナスです。譲渡所得がマイナスの場合、所得税は課税されません。
つまり復興税も発生しないことになります。実は譲渡所得がプラスになる人は案外少ないのです。
さらに売却したマンションが居住用財産の場合、3,000万円の特別控除を受けることができます。
その場合、このように計算されます。
譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用 - 3,000万円
控除を適用すると、3,000万円以上の儲けが出ている人でないと、譲渡所得は無いに等しくなります。
3,000万円の特別控除が適用できれば所得税は生じなくなり、結果、復興税も徴収されません。
それでは次に税金が掛かった場合の税率を見てみましょう。
最初にマンションなどの不動産を売却した場合の譲渡所得に掛かる税率を紹介します。
不動産の種類(マンション、土地、一戸建て)、 所有期間、 所得税、 住民税、によって違ってきます。
持っている全ての不動産が5年以下(短期譲渡所得) の場合・・・所得税30% 住民税9%
5年超(長期譲渡所得)の場合・・・所得税15% 住民税5%
マンションや戸建てのような自分が所有して住む(居住用財産)のみで10年超 3,000万円特別控除後の譲渡所得のうち6,000万円以下の部分だと所得税10% 住民税4%。
3,000万円特別控除した後の譲渡所得のうち6,000万円超の部分は所得税15% 住民税5%になります。所得税は累進課税のため所得が上がるとその分、税率も上がります。
一方、マンションなどの不動産を売却したときの所得税は、所有期間が長くなると減価償却の影響でその税率も下がります。
売却したマンションなどが居住用財産となる場合、所有期間が10年を超えていると更に税率が下がるという特例があります。
所得税率は、譲渡所得に直接かけるのがポイントです。
譲渡所得に所得税率を掛け算して求められた金額を基準所得税額と言います。
譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用
基準所得税額 = 譲渡所得 × 所得税率
復興税(復興特別所得税)の税率は、すべて2.1%となります。
それでは長期譲渡所得の場合は、税率は15%+2.1%=17.1%ってことでしょうか?
復興税の税率は、基準所得税額に累乗されるという事が注意点です。
つまり、復興特別所得税(復興税)は、2回に分けて求めます。
譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用
基準所得税額 = 譲渡所得 × 所得税率
復興特別所得税 = (譲渡所得 × 所得税率) × 2.1% = 基準所得税額 × 2.1%
所得税 = 基準所得税額 + 復興特別所得税 となります。
ゆえに、復興税を出すのには「基準所得税額」を求めて、それに2.1%を掛けるのです。
譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用
基準所得税額 = 譲渡所得 × 所得税率
復興特別所得税額 = 基準所得税額 × 2.1%
住民税 = 譲渡所得 × 住民税率
短期譲渡所得の場合は、所得税率が30%、住民税率が9%となりますが、その他の計算方法は同じです。
まとめ
以上、マンションを売却したときに生じる復興税について見てきました。
復興税の計算は、一旦、基準所得税額を求めてから2.1%を掛けましょう。
ただ所得税率に2.1%を加算するだけでなく、ややこしいですが、基準所得税額と復興税額は2回に分けて計算するようにして下さい。そして、マンション売却をした際に掛かる税金を無駄に多く納めないように控除も上手く使いましょう。
私たちが納税した復興税が何に使われているのかなど復興庁のホームページで確認することができます。