マンション売却 相続の基礎知識

遺産相続の基礎知識

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相続人の範囲~胎児について


はじめに


ある男性が2人の息子を遺して死亡したとしましょう。
民法上,人が死亡した時には相続が発生します。
具体的には,上記の例では男性の息子2人が相続人となり,息子らが男性の遺産を相続することになります。
ところで,かつて,旧民法においては「家督相続」と言って,長男が家督相続人となり,一人ですべての遺産を相続・継承していました。
現在でも,長男の方が次子よりも多く遺産をもらえるのではないか,と誤解している方もいらっしゃいますが,現在の民法においては,長男とそれ以外の子らの相続権は同じです。
ですので,長男であろうと末っ子であろうと,子供は全て平等に扱われます。
よって,この場合,息子2人が相続人となり,原則として,息子らは父親の遺した遺産をそれぞれ2分の1ずつ平等に相続することになります。
(相続の順位については,>>>~マンション売却のための税金の基礎知識~(2)の「相続ってなに?」をご参照ください。)

 

胎児の相続権


それでは,ある男性が死亡した時,男性には妻と2人の息子がおり,かつ,妻が3人目の子を妊娠中であった,という場合,誰が相続人になるのでしょうか。
まず,男性の妻と2人の息子は当然に相続人になります。
そして,民法上,相続の場面においては,まだ生まれていない胎児であっても相続権が認められていますので,胎児も相続人として扱われることになります。
ですので,男性の遺産については,原則として妻がその2分の1,息子2人と胎児がそれぞれその6分の1ずつ相続する権利が認められています(※異なる割合で相続させるような遺言のない場合です。)。

(2) 死産の場合について
それでは,男性が死亡した時に胎児であった子が,結局は死産であった,という場合の法律関係はどうなるのでしょうか。
結論から言えば,胎児が死産であった場合は,結局,胎児は相続人でなかったということになります。
ですので,死んだ男性の遺産は,結局は妻が2分の1,息子2人がそれぞれ4分の1ずつ相続することになるのです。

(3) 出生後すぐに死亡した場合について
それでは,胎児がいったんは生きて生まれたものの,出生後ほどなく死亡した場合はどうなるのでしょうか。
胎児が生きて生まれた場合には,生きていた時間の長短を問わず,その子は問題なく相続人となります。
よって,男性の遺産は妻が2分の1,息子2人と生まれた子の3人の子供がそれぞれ6分の1ずつ相続することになります。
そして,生まれた子が相続した6分の1の遺産については,子の死亡によって更に相続が発生するので,結局は,子の母親(男性の妻)が相続することになるのです(※胎児にとっての祖父母が既に死亡している場合。祖父母が生存している時には,母親と祖父母が相続人となります。)。
(胎児と相続については,>>>~マンション売却のための税金の基礎知識~(4)「相続における胎児について」をご参照ください。)

相続税について


(1) 税法上の胎児の取扱い
上記のとおり,胎児であっても,民法上は相続権が認められていますが,税法上の取扱いについては,胎児は考慮されません。
つまり,相続が発生した時の相続人が胎児であった場合の相続税の計算については,胎児はいないものと考えて申告しなければいけないのです。
そして,申告後に胎児が生きて生まれた時には,先の申告を修正等することになるのです。
相続税の申告期限は死亡を知った日の翌日から10か月ですので,申告期限内に胎児が産まれることがほとんどでしょうが,胎児が出生してから申告しようとしているうちに,バタバタして期限が徒過してしまうと,無申告加算税や延滞税が課されてしまうので,先に申告をしておくことをお勧めします。

(2) 基礎控除額を下回る場合
相続税とは,相続や遺贈によって取得した財産の価額の合計額が基礎控除額を超える場合に,超える部分(課税遺産総額)に対して課税される税金です。 そして,相続税の基礎控除額は,『3000万円+600万円×法定相続人の数』です。
ですので,例えば,先の例で男性の遺産が現金5000万円であったという場合には,胎児が生きて生まれると「3000万円+2400万円(600万円×法定相続人4人(妻,息子2人,胎児))」の合計5400万円が基礎控除額となり,基礎控除額を超える遺産がなく,結局,この場合には相続税の申告書の提出は不要です。 他方,胎児を相続人に含めずに基礎控除額を計算すると,基礎控除額は「3000万円+1800万円(妻,息子2人)」の合計4800万円となりますので,基礎控除額を超える200万円について相続税の申告書の提出が必要となります。
このように,胎児を生まれてきた場合には申告が不要である,という場合には,胎児の生まれた日以後2か月の範囲で申告の延長を求めることが可能ですので,基礎知識として覚えておいて頂ければと思います。

(相続税の基礎控除については >>>~マンション売却のための税金の基礎知識~(26)にまとめてありますので,ご参照ください。)
相続税の計算などは複雑で,専門家でないとなかなか気が付けない問題が多いものです。
万が一間違った申告をすることのないように,相続時には必ず事前に税理士などの専門家に相談することをお勧めします。

今回は,相続と胎児について簡単にお話しましたが,まずは,安心安全な以下のリンクのサイトを利用して,自分の不動産の価値の分かる営業マンと出会うことも大切です。

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相続人の範囲~半血兄弟について


はじめに


半血兄弟とは,父母どちらかを同じくする兄弟のことです。
例えば,甲という男性がもともとAという女性と結婚してXという子供が生まれた後にAと離婚し,Bと再婚してYとZという子供が生まれたとしましょう。 この場合,YとZは父母が同じですので全血兄弟ですが,Xについては父親は同じですが母親は別ですので,XとY・Zは半血兄弟,ということになります。 また,ある男性が妻以外の女性と浮気をして子供(非嫡出子)が生まれた場合についても,その子供(非嫡出子)と妻との間に生まれた子(嫡出子)は半血兄弟となります。
(※なお,本件の前提として相続人の範囲な >>>兄弟がいる場合の不動産相続はどうなるの? のサイトを参照してください。)

半血兄弟の相続分


ここでは,甲という男性について,Aという女性との間にXという子が,Bという女性との間にY及びZという子がいる上記のケースで,誰が死んだら誰が相続人となり,その相続分はどうなるのか,具体的に見ていきましょう。

(1) Aが死亡したというケース
Aが甲と離婚後,再婚せずにXと二人で生活していたという場合,Aが死亡すれば,Xだけが相続人となり,XがAの全財産を相続します。
この場合のY及びZはAとは法律上,何のつながりもありませんから,そもそもY及びZはAの相続人にはなりません。
また,Aと離婚した甲も,法律上は最早Aとは他人ですので,Aの相続人にはなりません。
なお,Aが甲と離婚後,乙という男性と再婚していた,という場合には,乙(配偶者)とX(子)がAの相続人となり,Aの遺産を2分の1ずつ相続することになります。

(2) Bが死亡したというケース
次に,Bが死亡した場合ですが,この場合,配偶者である甲と子供であるY及びZが甲の相続人となり,甲が2分の1,YとZが4分の1ずつ遺産を相続します。
(1)と同様,この場合のXはBとは何のつながりもありませんから,XはBの相続人とはならず,Bの遺産を相続することはありません。

(3) 甲が死亡したというケース
それでは,甲が死亡した場合はどうでしょう。
まず,配偶者であるBは必ず相続人となり,その法定相続分は2分の1です。
一方,前妻であるAは,すでに甲とは離婚して法律上何のつながりもありませんので,Aは甲の相続人にはなりません。
また,甲の子供であるX,Y及びZは,3人全員が甲の相続人となります。
そして,その法定相続分は,X,Y及びZで違いはなく,法律上は平等に扱われますので,3人が平等に6分の1ずつ相続する,ということになります。
前妻の子や非嫡出子にも相続権がある,しかも法定相続分も同じであるということを知らない方もいらっしゃいますが,現在の民法上,被相続人の子である以上,半血兄弟間であろうが,非嫡出子であろうが,相続の場面では平等に扱われますので,前妻の子の相続分を減らしたいのであれば,法定相続分を変更する遺言を遺しておくべきでしょう。

(4) Y(又はZ)が死亡したというケース
半血兄弟の相続分に違いが出るのが,このケースです。
具体的には,半血兄弟の相続分は,全血兄弟の相続分の2分の1となります(民法900条4号)。
ただ,そもそも兄弟が相続人となるのは,被相続人が結婚しておらず,子供もおらず,直系尊属(自分より前の世代で,直通する親族。)も既に死亡しているという限定的なケースですので,注意が必要です。

つまり,本件でいうと,Yが死亡した時点でYに子供がいたり,直系尊属である甲やAが生きている場合には,兄弟であるX,ZがYの相続人となることはありませんので,半血兄弟の相続分について考える必要はありません。
Yの兄弟が相続人となるのは,例えば,Yが生涯未婚のまま死亡し,子供もおらず,死亡時点で甲・A・祖父母も死亡していた,という場合です。 この場合には,兄弟であるZ,XがYの相続人となりますが,半血兄弟の相続分は全血兄弟の相続分の2分の1ですので,ZがYの遺産の3分の2を,XがYの遺産の3分の1を相続する,ということになります。

また,Yが結婚はしているけれど子供がいないという状況で死亡し,その時点で既に甲・A・祖父母も死亡していた,という事例では,Yの妻,Z,Xが相続人となります。
この場合には,Yの遺産は,Yの妻が4分の3,XとZで4分の1を相続することになり,XとZの相続分は,具体的にはZが12分の2,Xが12分の1を相続することになるのです。

(5) Xが死亡したというケース
Xが死亡した時に,配偶者・子・直系尊属がおらず,相続人がYとZしかいない,というケースでは,半血兄弟云々を考える必要はありません。

この場合には,YとZが2分の1ずつ,Xの遺産を相続することになります。

最後に


 かつては,民法上,非嫡出子の相続分は嫡出子の半分とされていたことなどと相まって,半血兄弟の相続についてしっかりと理解していない方も多いと思います。 相続が開始し,被相続人の戸籍について,改正原戸籍,除籍謄本まで遡って調査すると,思いがけない兄弟が存在することはそれほど珍しいことではありません。 他に子供がいるけれど,妻には打ち明けていたけれど,子供たちには知らせていなかった,というケースも存在します。
他に相続人がいないであろうと思って遺産分割協議をした後,実は半血兄弟がいた,という場合には協議が無効となってしまいますので,事前に弁護士等の専門家に被相続人の戸籍を全て洗い出してもら,他に相続人がいないことを確定してもらうことをお勧めします。

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また,そもそも誰が相続人になるのか知っておく必要がありますので,先にも書きましたが,一度,>>>兄弟がいる場合の不動産相続はどうなるの?で確認してみてください。

不動産の共同相続


はじめに


被相続人が死亡すると,相続人がその遺産を相続します。
遺産が現金や預貯金であれば分配しやすいのですが,遺産が土地・家屋・マンションなどの不動産の場合,不動産を誰がどのように相続するのか,というのはなかなかの難問です。
土地・家屋・マンションなどの不動産が遺産に含まれる場合,通常,これらの不動産は①現物分割,②代償分割,③換価分割のいずれかによって,売却ないし特定の相続人が相続することになりますが(これらの分割方法については >>>兄弟がいる場合の不動産相続はどうなるの?や,>>>~マンション売却のための税金の基礎知識~(13) にもまとめてありますので,是非ご一読ください。),売却が困難であったり,代償金の支払いが必要であったりと,なかなかスムーズに分割できないことが少なくありません。
そして,上記の方法で遺産である不動産について分割できない時は,「共有分割」という方法が採られることがあります。
ここでは「共有分割」の問題点などについて見ていきましょう。

『共有分割』について


(1) 共有分割とは
共有分割とは,遺産である不動産を複数の相続人全員で所有するという分割方法です。
例えば,Aという男性が投資用マンション1部屋を遺して死亡したケースで,相続人が妻と2人の子供の合計3人という場合に,遺産のマンションについて妻が2分の1,子供がそれぞれ4分の1ずつ持分を取得する,という形で解決するケースです。
この場合,不動産を売却する必要もなく,特定の相続人が所有するでもないため,相続人にとっては公平な分割方法であると言えます。
投資用のマンションであれば,賃料収入を持分割合に応じて分配できる,というのも明確で魅力的です。

(2) 共有分割の問題点
ただし,このような共有分割には,以下のとおり,いくつか問題点もありますので,不動産を共有分割する場合には,必ず事前に問題点を理解しておく必要があります。
妻が2分の1,子供らが4分の1ずつマンションを共有しているという,先の例でご説明しましょう。

ⅰ 共有不動産の管理等に関する問題
マンションの一部が破損した,賃借人が退去して新たな賃借人を募集したい,市場価値が下がってきたのでもう売却したい,など,投資用マンションに関する問題は様々です。

このような問題が発生した時,共有者の一部が独断で判断して行動できるのでしょうか。
この点,民法は,共有物の『保存』,『管理』,『変更』の3種類に分け,『保存』に関する行為は各共有者が単独でできる,『管理』に関する行為は持分価格の過半数でできる,『変更』に関する行為は共有者全員の同意が必要であると規定しています。

(ⅰ) 共有物の『保存』について
『保存』に関する行為とは,例えばマンションの水道管が破損して水漏れしている場合にこれを修繕するといった,共有物の現状を維持するためのもので,他の共有者に不利益がない行為です。
『保存』に関する問題が生じた場合,妻と子らはそれぞれ自分の判断で他の共有者の同意を得ることなく行うことができます。

(ⅱ) 共有物の『管理』について
『管理』とは,共有物を利用・改良する行為のことですが,例えば,マンションの賃借人との間の賃貸借契約について賃料を変更する,あるいは賃借人が賃料を払わないため,賃貸借契約を解除する,というようなケースです。
このような行為を行う場合,共有者の持分の過半数の同意が必要ですので,例えば,妻が希望していたとしても子らがいずれも反対した場合には,妻の持分だけでは「過」半数にはならず,妻は単独ではできない,ということになります(少なくとも妻と子供のうち1人の同意が必要です。)。

(ⅲ) 共有物の『変更』について
『変更』とは,意味物理的変化を伴う場合と法律的な処分を伴う場合がありますが,例えば,マンションの大修繕を行ったり,マンションを売却したりするケースです。
このような場合,共有者全員の同意が必要ですので,マンションを売却したいと思っていても,共有者の1人でも反対していた場合には売却することはできず,必ず全員の同意が必要となります。

ⅱ 共有者が変更・増加して法律関係が複雑化するという問題
本件のように,共有者が親子3人,という場合には,マンションの管理に関する意思決定にはさほど問題もないかもしれません。
ですが,共有者の一部が持分を他に譲渡してしまい,全くの他人が新たな共有者になる場合や,共有者の一部が死亡して更に相続が発生して共有者がどんどん変更され,あるいは増えてしまう場合があります。

本件の事例で言えば,妻が死亡した場合には,子供2人が妻(子供らにとっては母親)の遺産を相続し,共有者が3人から2人になりますので,むしろ問題は少なくなりますが,子が死亡すると,その妻・子供がマンションの持分を更に相続しますので,共有者がどんどん増えてしまうおそれがあります。
共有者が増えていき,しかも,共有者間の親密さが薄れていってしまうと,管理に関する意思決定も大変です。
長年住んでいた賃借人が賃料を滞納しているので賃貸借契約を解除したい,と一部の共有者が希望しても,そもそも誰が共有者なのか,持分がどうなっているのか判然としないというケースもあります。

   

最後に


以上のとおり,遺産である不動産を共有分割する場合,確かに分割時のメリットは大きいですが,後々のことを考えるとかなりリスクが高いと言えるでしょう。
遺産分割の際,一時的に共有分割とする場合であっても,長期的にその状態が継続することはあまりお勧めできません。
遺産である不動産を共有分割をする際は,必ず将来的なリスクを検討した上で行うことが必要です。

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不動産の相続と費用


はじめに


生涯賃貸生活のまま,あるいは老人ホームなどで亡くなる方が増えているとは言え,マイホーム信仰の厚いわが国では,まだまだ自宅を所有したまま亡くなってしまう方が多数でしょう。
親が死亡すると,子供が相続人となり,親が所有していた土地・家屋・マンションなどの不動産は子供が継承・相続することになります。
それでは,不動産を相続した場合,どのような費用が発生するのでしょうか。

相続税について


(1) 相続税とは
相続税とは,被相続人の遺産の総額から「基礎控除額」を差し引いた際,基礎控除額を超える部分に課税される税金です。
そして,相続税の基礎控除額は,『3000万円+600万円×法定相続人の数』です。
ですので,そもそも遺された遺産が3000万円にも満たない,というような場合には,相続税はかかりません。
例えば,ある男性が6000万円の財産を遺して死亡し,その相続人が妻と子供の合計2人,という場合には,基礎控除額は「3000万円+1200万円(600万円×2)」の合計4200万円ですので,これを超える1800万円(6000万円-4200万円)について相続税がかかってくる,ということになるのです。
(相続税については,以下のサイトでも詳しく説明していますので,ご参照ください。 >>>~マンション売却のための税金の基礎知識~(24)

(2) 相続税と不動産の評価
それでは,不動産を相続するという場合,遺産である不動産はどのように金銭的に評価されるのでしょうか。
(ⅰ) 土地の場合
相続した不動産が土地であれば,評価の方法は「路線価方式」と「倍率方式」があります。 「路線価方式」とは,路線価が定められている地域の評価方法で,路線価をその土地の形状等に応じた各種補正率で補正した後にその土地の面積を乗じて計算します(例えば,間口が小さくて狭い,奥行きがあり細長い,整形されておらずいびつな形である,などの使い勝手の悪い特殊な土地であれば,路線価から減額されます。)。
次に「倍率方式」とは,路線価が定められていない地域の評価方法で,土地の価額はその土地の固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて計算されます。
路線価及び評価倍率表は国税庁のHPで誰でも確認できますので,暇がある時に確認してみてください。
(ⅱ) 家屋の場合
相続した不動産が家屋の場合,相続税の計算においては家屋の固定資産税評価額に1.0倍して評価しますので,その評価額は固定資産税評価額と同じです。
(ⅲ) その他
その他,第三者に貸している投資用マンションなどは,権利関係に応じて評価額が調整されたり,相続した土地が事業の用に使われている場合などには評価額の一定割合を減額する特例等があります。

相続税の計算は非常に複雑で,入り組んでいます。
万が一間違った場合には後々追徴課税等を支払うことになりかねませんので,必ず税理士等の専門家に事前に相談することをお勧めします。

登録免許税について


(1) 登録免許税とは
日本では,法令上,国内の土地・家屋・マンションなどの不動産について,その所在地,広さ,構造などの物理的状況及び誰が所有しているのかという所有権などの権利関係を公にしなければなりません。
そして,このような不動産の物理的状況や権利関係について,法務局に備えてある「登記簿」に記載されているのですが,登記簿にそれらを記載することを「登記」と言います。
相続により,不動産の所有者が被相続人から相続人に変更された時は,新たに相続人を所有者とする登記をしなければならず,この時にかかる税金が「登録免許税」です。

(2) 相続にかかる登録免許税
相続を原因とする所有権移転登記をする際にかかる登録免許税は,『不動産の固定資産税評価額×0.4』です。
ですので,例えば3000万円の土地を相続した際の登記にかかる登録免許税は3000万円×0.4で12万円になります。
登録免許税は,登記を申請する際,税額分の印紙を申請用紙に貼付して支払うことになります。
また,登記は自分でもできますが,司法書士に依頼する際は,別途司法書士に支払う報酬等が発生するでしょう。

最後に


以上のとおり,不動産を相続した際に発生する費用は,主に「相続税」と「登録免許税」です。
遺産の額によっては,支払うべき相続税は莫大な金額になります。
ただ,相続税には配偶者の税額軽減特例など,各種控除の制度もあり,知っていれば節税できた,ということも少なくありません(相続税の税額控除については, >>>~マンション売却のための税金の基礎知識~(36)にもまとめてありますので,ご参照ください。)。 また,上記のとおり,路線価方式で土地を評価する場合にも土地の形状や広さによって,各種の補正がありますので,評価額が減少する可能性がありますので,相続税の計算・確認の際には,必ず事前に税理士等の専門家に相談することをお勧めします。

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相続と遺産分割協議


はじめに


人が死亡すると,相続が発生します。
死んだ人を「被相続人」と言い,被相続人の遺産を相続する人を「相続人」と言います。
相続人が1人しかいない,という場合には,その相続人が被相続人の全遺産を単独で相続しますので,遺産をどのように分けるのか,という問題はありません。 一人っ子で,父母の片方は既に死亡しており,今回,もう一方が死亡した,という場合には,子供が一人で全遺産を相続しますので,単独で相続することはそれほど珍しくありません。
しかし,複数の子がいる場合などでは,原則として子供全員が相続人となりますので,被相続人の遺産を相続人間でどのように分けるのか,協議する必要があります。
これが「遺産分割協議」です。
(遺産分割については, >>>~マンション売却のための税金の基礎知識~(12)にもまとめてありますので,ご参照ください。)

遺産分割の方法


誰が相続人になるのかという相続人の範囲や,どのような割合で相続できるのか,という相続分については,民法に規定があります。
ただ,民法で規定された法定相続分は,絶対的なものではありませんので,被相続人の遺言や相続人の合意で変更でき,必ず法定相続分どおりに遺産を分配する必要はありません。
そして,遺産分割の場面で,遺産が現金や預貯金のみである,という場合には,相続人間でその分配についてそれほどもめることはありません。
兄弟は大学費用を出してもらって大学まで出たけれど自分は高校卒業後すぐに働いた,兄弟は自宅の建築費用を出してもらったけれど,自分は賃貸暮らしをしていてそのような恩恵にあずかっていない,などという不満がある場合にはいささかもめるでしょうが,結局は現実にある金銭をどのように分けるのか,という話ですので,もめ事の解決はそれほど難しくありません。
相続で問題が発生するのは,やはり,遺産に土地・家屋・マンションといった不動産がある場合です。
そこで,ここでは土地・家屋・マンションのような不動産をどのように分割するのか,簡単に説明しましょう。

(1) 現物分割
「現物分割」とは,遺産をそのままの状態(現物)で相続することです。
例えば,相続人が2人いて遺産にマンションが2棟ある,という場合に1棟ずつ相続するような場合です。
また,広大な土地が1筆あるような場合に,分筆して各相続人に分ける,ということもあります。
「現物分割」は簡易な方法ではありますが,各不動産の市場価値に隔たりがある場合には公平性に欠けるという問題点もあります。
また,後々,相続した不動産に問題が生じた場合,当該不動産を相続した相続人が「外れくじ」を引いたと感じて他の相続人との関係が険悪になることもままあるようです。

(2) 換価分割
「換価分割」とは,土地・家屋・マンションなどの不動産を売却した上で,売却金額を相続人間で分配する分割方法です。
この場合には,金銭を平等に分ければ良い上,不動産自体売却してしまいますので,公平である上,後々のトラブルの可能性は低いでしょう。
ただ,換価分割のために売却の手間・費用が発生する上,なかなか買い手がつかないような不動産の場合には,現実的には売却できない,という問題はあります。

(3) 代償分割
「代償分割」とは,相続人の一部が法定相続分を超える不動産を相続する代わりに,その超えた部分の代償を他の相続人に金銭で払う,という分割方法です(例えば,相続人が2人いて,遺産が1000万円のマンションであるという場合に,1人がマンションを相続する代わりに,他の相続人に対して500万円払う,という場合です。)。
この場合には,土地・家屋・マンションなどの不動産を一部の相続人が単独で相続できますが,不動産の市場価値の評価が問題になる(当該不動産を相続する方はできるだけ安く見積もりたい一方で,当該不動産を相続しない方はできるだけ高く見積もりたいという利害が対立します。)上,不動産を相続したい相続人がいても,実際に他の相続人に代償金を支払う必要がありますので,その資金がない場合には現実的には難しいでしょう。

遺産分割協議書の作成


相続人間で遺産をどのように分配するのか,という話し合いがどうしてもできないようであれば,家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることになります。
他方,相続人間の話し合いがついた時には,必ず「遺産分割協議書」を作成することをお勧めします。
特に,遺産に土地・家屋・マンションなどの不動産がある場合には,被相続人名義から相続人名義に登記を移転する必要がありますが,その登記の申請の際には必ず必要になります。
(遺産分割協議書については, >>>不動産の相続でトラブルを防ぐ、遺産分割協議書とは? に詳しく説明していますので,是非ご参照ください。)

遺産分割協議書は,遺産が少なければ自分たちで作成することも可能ですが,不備などがないように,なるべく弁護士等の専門家に相談しながら作成することをお勧めします。

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また,そもそも誰が相続人になるのかということについては, >>>兄弟がいる場合の不動産相続はどうなるの? をご一読ください。

遺言について


はじめに


人が死亡すると(死亡した人を「被相続人」といいます。),被相続人の遺産は相続人に承継・相続されます。
被相続人の範囲及び法定相続分は法律で決まっていますが,必ず法律で決まっている通りに遺産を分ける必要はありません。
ある男性が,自分の死後,妻と同居している自宅の土地・家屋は妻に相続させたいと思った時,男性はどうしたら良いのでしょうか。
男性に妻と2人の子供がいた場合,法律に従って男性の遺産を分配するとすると,自宅に関しては妻が土地・家屋の2分の1,2人の子供たちが土地・家屋の4分の1ずつ相続することになります。
男性としては,確実に妻だけに相続させたいと思っていても,死後,妻と子供たちとの協議がつかないことがあり得ます。
子どもたちが,自宅の土地・家屋については相続しない代わりに現金を多めに相続し,結局妻が相続税を支払えなくなっても困ります。
自分の死後,相続人がどの範囲で自分の遺産を相続するのか,予め決めておきたい時に準備するのが『遺言』です。

遺言の種類


まず,遺言の方式ですが,遺言は,「普通方式」と「特別方式」に分けられます。
「普通方式」の遺言には(1)自筆証書遺言,(2)公正証書遺言,(3)秘密証書遺言あり,「特別方式」の遺言には(4)緊急時遺言,(5)隔絶地遺言がありますが,ここでは「普通方式」の遺言についてご説明しましょう。

(1) 自筆証書遺言
自筆証書遺言とは,遺言の全文を自分で書く遺言のことです。
自筆証書遺言は,①全文を自書すること,②日付を特定すること,③署名,④捺印が必要になります。
かつて,手の震えと視力の減退により一人では遺言が書けそうになかったため,相続人の一人が背後から遺言者の手の甲を握り遺言を作成したという事例について,①の全文を自書したとは言えないとして遺言書が無効にされた例がありますので,自筆証書遺言を作成する時は,注意が必要です。
自筆証書遺言は,誰でも好きな時に作成できるというメリットがある一方で,後々(死後)遺言の有効性が争われやすい遺言です。
特に,相続人の一部が法定相続分以下の遺産しか相続できない,というケースでは,不満も大きくなるでしょう。
自筆証書遺言を作成する時は,生前から遺言書を作成したということを相続人に言い含め,特に法定相続分以下の遺産しか相続できない相続人に対して事前に根回しをしておく必要がありますね。

    (2) 公正証書遺言
公正証書遺言とは,公証役場の公証人に作成してもらう遺言のことです。
公正証書遺言は,①証人2人の立ち会い,②公証人に対する遺言の口授(口頭で話すこと),③公証人の作成した遺言書の読み聞かせ,④署名・捺印などの要件がありますが,公正証書遺言であれば,自筆証書遺言のように第三者が遺言書を偽造した,などと言って後々その有効性を争われることは少ないでしょう。
公正証書遺言を作りたいという場合は,自分の財産をリストアップした上で,どの財産を誰に相続させるのか,ということを予め決めておき,公証役場に相談に行くことになります。
ところで,公証人は,かつて,裁判官や検察官などの法律の専門家であった方たちですが,専門分野はそれぞれに異なります。
専門分野以外については意外に不得手であったりしますので,後々,公正証書の有効性が裁判で争われるケースは決して少なくありません。
公正証書遺言を作成しようと考えている場合は,直接公証役場に行くよりも,まずは,弁護士などの専門家に相談し,公証人の作成した遺言案を事前にチェックしてもらうことをお勧めします。

(3) 秘密証書遺言
秘密証書遺言とは,遺言者が遺言証書を作成し,それに署名・押印した上で封書に封じ,この封書を遺言証書に押印したのと同じ印鑑で封印し,この封書を公証人と2人以上の証人に提出して自分の遺言書であることと氏名および住所を申述し,公証人が,その封書に日付と遺言者の申述を記載した上で,遺言者・公証人・承認がそれぞれ署名押印するという遺言作成の方式です。
秘密証書遺言は,遺言の内容を他の人に秘密にすることができるというメリットがありますが,内容について公証人のチェックを受けませんので,結局,方式不備等で死後,無効となることが多い遺言です。
ですので,秘密証書遺言を作成するくらいであれば,やはり公正証書遺言まで作っておくことをお勧めします。

検認手続について


「検認手続」とは,遺言書(又は遺言書らしきもの)の存在を確認し,その外形を保全して以後の偽造,変造を防止する手続です。
遺言書の保管者又は遺言書を発見した相続人は,遺言者の死亡を知った後,遺言書を家庭裁判所に提出して,家庭裁判所に「検認」を請求しなければなりませんので,この点に注意が必要です。
また,封印された遺言書は勝手に開封することはできず,家庭裁判所で相続人の立会の上で開封しなければなりません。
父親の死後,自宅に「遺言」と書かれた書面が見つかったとしても,勝手に開けて中身を確認してはいけません。
必ず家庭裁判所に検認を申し立てる必要があります。
ただし,家庭裁判所による検認手続が必要とされるのは「自筆証書遺言」と「秘密証書遺言」で,「公正証書遺言」については検認手続は不要です。
ですので,後々の手間という点でも,やはり公正証書遺言が良いでしょう。
後々の相続人間のトラブルを防ぎ,自分の意思どおりの相続を実現するためには,事前に弁護士等の専門家に相談し,公正証書遺言で予め相続分を決めておくことをお勧めします。

遺言について簡単にお話しましたが,まずは,安心安全な以下のリンクのサイトを利用して,自分の不動産の価値の分かる営業マンと出会うことも大切です。

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また,遺言については >>~マンション売却のための税金の基礎知識~(19) にもまとめてありますので,是非ご一読ください。

相続と特別寄与


はじめに


人が死亡すると(死亡した人を「被相続人」といいます。),被相続人の遺産は相続人に承継・相続されます。
相続人が一人しかいない,という場合には,唯一の相続人が全遺産を相続しますので,相続に関してそれほど揉めません。
問題は,相続人が複数いて,相続人の中にかねてから被相続人の資産の維持・増加に特別な貢献をした相続人がいる,という場合です。
民法904条の2は,共同相続人の中に,被相続人の財産の維持・増加について特別の寄与をした相続人がいる場合,その寄与分を控除したものを相続財産とみなす,と規定して共同相続人間の公平を図っています。
これを『特別寄与』と言います。
今回は,この『特別寄与』について見ていきましょう。

特別寄与の類型について


どのように遺産を分配するのかについて,相続人間で話し合いがまとまらなければ,家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることになります。
『特別寄与』は,調停においても当事者が感情的になりやすく,非常にこじれやすい問題です。
『特別寄与』として認められるは,以下の5つです。

(1) 療養看護型特別寄与
これは,被相続人が病気療養中に,相続人がその療養看護に従事したという場合です。
これが認められるかどうかは①療養看護の必要性,②特別な貢献と言えるか,③無償性,④継続性,⑤専従性,⑥財産の維持・増加の有無,などという観点から判断されます。
例えば,被相続人が自宅でなく入院中,施設に入所中の場合や,要介護度認定が低いという場合には,①の必要性が否定されますので,この類型の特別寄与が認められることはないでしょう。
また,療養看護に従事していたとしても,被相続人の収入で生活していたり,被相続人の所有する自宅に無償で住んでいるような場合には,③の無償性が否定されますので,特別寄与が認められる可能性は少ないでしょう。
よく,兄弟は両親と別居して好き勝手生活しており自分は同居して面倒を見ているのだから,その分相続で優遇されるべきである,という主張を耳にしますが,実際の調停の場で療養看護型の特別寄与が認められること多くはありません。
この類型の特別寄与が認められるためには,本来ならば介護費用がかかったであろうところ,相続人の一人が担当したためにその分の支払いを免れた,と評価される必要がありますので,仕事の傍らに面倒をみていた,とか,極めて短期間面倒を見ていた,という程度では認められないことに注意が必要です。

  (2) 家業従事型特別寄与
次に,相続人が被相続人の家業に従事していた,という場合です。
これについても,①特別な貢献と言えるか,②無償性,③継続性,④財産の維持・増加の有無,などから判断されます。
これは,被相続人が自営業を営んでおり,子供の一人が家業を手伝っていた,というケースでよく主張されますが,家業を手伝う代わりに通常は報酬・給与を受け取りますので,ほとんどのケースでは②の無償性の要件が認められないことになるでしょう。

(3) 金銭出資型特別寄与
これは,相続人から被相続人に対して,金銭上の援助をしていたような場合です。
これについても,①特別な貢献と言えるか,②無償性,③財産の維持・増加の有無,などから判断されます。
このケースでいう金銭の出資は,扶養の範囲を超える金銭的援助が必要ですので,両親が働けなくなったため月々の小遣いを渡していた,という程度では①の「特別な貢献」とは言えず,認められる可能性は少ないでしょう。
他方,例えば被相続人に療養看護が必要な状態にあり,その入院費用や介護費用を相続人が支払っていた,という場合にはその支出について特別寄与が認められることになるでしょう。

(4) 「扶養型特別寄与」
これは,相続人が被相続人を扶養し,その分の支出を被相続人が免れていたような場合です。
これについても,①不要の必要性の有無,②特別な貢献と言えるか,③無償性,④継続性,⑤財産の維持・増加の有無,などから判断されます。
例えば,夫に稼働能力がなく無職のため,妻が働いて生計を維持していたという場合や,年老いた両親に生活を毎月送金していた,という場合であれば特別寄与と認められることが多いでしょう。

(5) 「財産管理型特別寄与」
これは,被相続人の財産を管理することにより,被相続人の財産を維持形成していた,というような場合です。
これについても,①財産管理の必要性,②特別な貢献と言えるか,③無償性,④継続性,⑤財産の維持・増加の有無,などから判断されます。
これは,例えば被相続人が投資用マンションを複数所有しており,相続人がその管理に携わっていた,というケースです。
このようなケースであっても,マンションの管理について管理会社と契約していたような場合は①の必要性が否定されるでしょうし,相続人が管理を担当していたとしても被相続人のマンションで生活して家賃を支払っていなかった,というような場合には③の無償性が否定されるでしょう。

最後に

『特別寄与』については,特に相続人間の感情的な対立が激しいところです。
実際に調停となった場合に特別寄与が認められるケースは決して多くはありません。
後々の相続人間のトラブルを防ぐためには,事前に弁護士等の専門家に相談し,遺言等で相続分を調整しておくことをお勧めします。

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また,特別寄与については, >>~マンション売却のための税金の基礎知識~(21)にもまとめてありますので,是非ご一読ください。

相続と特別寄与


はじめに


人が死亡すると(死亡した人を「被相続人」といいます。),被相続人の遺産は相続人に承継・相続されます。
相続人が一人しかいない,という場合には,唯一の相続人が全遺産を相続しますので,相続に関してそれほど揉めません。
問題は,相続人が複数いて,相続人の中にかねてから被相続人の資産の維持・増加に特別な貢献をした相続人がいる,という場合です。
民法904条の2は,共同相続人の中に,被相続人の財産の維持・増加について特別の寄与をした相続人がいる場合,その寄与分を控除したものを相続財産とみなす,と規定して共同相続人間の公平を図っています。
これを『特別寄与』と言います。
今回は,この『特別寄与』について見ていきましょう。

特別寄与の類型について


どのように遺産を分配するのかについて,相続人間で話し合いがまとまらなければ,家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることになります。
『特別寄与』は,調停においても当事者が感情的になりやすく,非常にこじれやすい問題です。
『特別寄与』として認められるは,以下の5つです。

(1) 療養看護型特別寄与
これは,被相続人が病気療養中に,相続人がその療養看護に従事したという場合です。
これが認められるかどうかは①療養看護の必要性,②特別な貢献と言えるか,③無償性,④継続性,⑤専従性,⑥財産の維持・増加の有無,などという観点から判断されます。

例えば,被相続人が自宅でなく入院中,施設に入所中の場合や,要介護度認定が低いという場合には,①の必要性が否定されますので,この類型の特別寄与が認められることはないでしょう。
また,療養看護に従事していたとしても,被相続人の収入で生活していたり,被相続人の所有する自宅に無償で住んでいるような場合には,③の無償性が否定されますので,特別寄与が認められる可能性は少ないでしょう。

よく,兄弟は両親と別居して好き勝手生活しており自分は同居して面倒を見ているのだから,その分相続で優遇されるべきである,という主張を耳にしますが,実際の調停の場で療養看護型の特別寄与が認められること多くはありません。
この類型の特別寄与が認められるためには,本来ならば介護費用がかかったであろうところ,相続人の一人が担当したためにその分の支払いを免れた,と評価される必要がありますので,仕事の傍らに面倒をみていた,とか,極めて短期間面倒を見ていた,という程度では認められないことに注意が必要です。

(2) 家業従事型特別寄与
次に,相続人が被相続人の家業に従事していた,という場合です。
これについても,①特別な貢献と言えるか,②無償性,③継続性,④財産の維持・増加の有無,などから判断されます。
これは,被相続人が自営業を営んでおり,子供の一人が家業を手伝っていた,というケースでよく主張されますが,家業を手伝う代わりに通常は報酬・給与を受け取りますので,ほとんどのケースでは②の無償性の要件が認められないことになるでしょう。

(3) 金銭出資型特別寄与
これは,相続人から被相続人に対して,金銭上の援助をしていたような場合です。
これについても,①特別な貢献と言えるか,②無償性,③財産の維持・増加の有無,などから判断されます。
このケースでいう金銭の出資は,扶養の範囲を超える金銭的援助が必要ですので,両親が働けなくなったため月々の小遣いを渡していた,という程度では①の「特別な貢献」とは言えず,認められる可能性は少ないでしょう。
他方,例えば被相続人に療養看護が必要な状態にあり,その入院費用や介護費用を相続人が支払っていた,という場合にはその支出について特別寄与が認められることになるでしょう。

(4) 「扶養型特別寄与」
これは,相続人が被相続人を扶養し,その分の支出を被相続人が免れていたような場合です。
これについても,①不要の必要性の有無,②特別な貢献と言えるか,③無償性,④継続性,⑤財産の維持・増加の有無,などから判断されます。
例えば,夫に稼働能力がなく無職のため,妻が働いて生計を維持していたという場合や,年老いた両親に生活を毎月送金していた,という場合であれば特別寄与と認められることが多いでしょう。

(5) 「財産管理型特別寄与」
これは,被相続人の財産を管理することにより,被相続人の財産を維持形成していた,というような場合です。
これについても,①財産管理の必要性,②特別な貢献と言えるか,③無償性,④継続性,⑤財産の維持・増加の有無,などから判断されます。
これは,例えば被相続人が投資用マンションを複数所有しており,相続人がその管理に携わっていた,というケースです。
このようなケースであっても,マンションの管理について管理会社と契約していたような場合は①の必要性が否定されるでしょうし,相続人が管理を担当していたとしても被相続人のマンションで生活して家賃を支払っていなかった,というような場合には③の無償性が否定されるでしょう。

最後に


『特別寄与』については,特に相続人間の感情的な対立が激しいところです。
実際に調停となった場合に特別寄与が認められるケースは決して多くはありません。
後々の相続人間のトラブルを防ぐためには,事前に弁護士等の専門家に相談し,遺言等で相続分を調整しておくことをお勧めします。

相続と特別寄与について簡単にお話しましたが,まずは,安心安全な以下のリンクのサイトを利用して,自分の不動産の価値の分かる営業マンと出会うことも大切です。

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また,特別寄与については, >>~マンション売却のための税金の基礎知識~(21)にもまとめてありますので,是非ご一読ください。

賃借人の死亡~賃貸人側の問題点


はじめに


人が死亡すると,死亡した人(死亡した人を「被相続人」といいます。)の遺産は相続人に承継・相続されます。
「遺産」には被相続人が生きていた時の権利・義務関係(※一審専属上の権利・義務は除く)が含まれ,相続人は被相続人の生前の法律上の地位をそのまま引き継ぐことになります。
賃貸借契約は賃貸人と賃借人との間の契約ですので,もしも賃借人が部屋を借りたまま死亡した場合,賃借人の地位はそのまま賃借人の相続人に承継されることになります。

賃借人が死亡した場合の問題点


(1) 賃借人が死亡した時の法律関係

賃借人とその家族(相続人)が同居しているような場合には,賃借人が死亡したとしても,同居の家族が相続人として,そのまま部屋を借り続けるか,それとも解約するかすぐに判断・行動できるので,特に問題はないでしょう。
問題は,賃借人が一人で生活しており,相続人の連絡先等が一切分からない,又は相続人がいないという場合です。

① 相続人が存在し,賃貸借契約の終了に合意してくれる場合

上記のとおり,賃借人が死亡してもその相続人が賃貸借契約を引き継ぎますので,賃貸借契約は当然には終了せず,賃貸人と相続人が合意により終了させるまで継続します。
ですので,賃貸人としては,まずは弁護士等に相談して,賃借人の相続人を調査・確定してもらう必要があります。
弁護士等であれば,賃借人の改正原戸籍や除籍謄本等を調査して,相続人の有無を調べることができますので,調査により相続人がいると判明した場合には,全ての相続人に連絡をとり,賃貸借契約の終了に合意してもらった上で,室内の荷物を処分してもらうことになります。

② 相続人が存在するが,賃貸借契約の終了に合意してくれない場合

被相続人に親戚付き合いがないような場合には,賃貸人から連絡が来て初めて自分が相続人になったことを知る,というケースも少なくありません。
そして,そういう相続人の中には,関わり合いになりたくないとして,賃貸人の連絡に応じないこともままあります。
このような場合には,おそらく被相続人の死亡時から賃料は不払いとなっているでしょうから,賃料の不払いを理由として賃貸人から相続人に対し,賃貸借契約の解除の意思表示をすることができます。
ただし,賃料不払いを理由に賃貸借契約を解除したとしても,室内に残された被相続人の荷物を勝手に処分することはNGです。
被相続人の死亡により,賃借人の地位だけでなく室内にある被相続人の所有物は全て相続人に承継されています。
勝手に荷物を処分してしまうと,相続人から後々,権利侵害として損害賠償請求をされるおそれがあります。
あくまでも相続人が賃貸人の連絡に一切応じないような場合には,相続人に対して賃貸借契約の終了を理由として建物明渡訴訟を提起した上,強制執行により室内の荷物を処分せざるを得ないでしょう。
ですので,このようなケースでは,何とか相続人に連絡を取り,賃貸借契約の終了に合意を取り付けた上,室内の荷物の所有権を放棄してもらうのが最善でしょう(処分費用は賃貸人負担となりますが,裁判にかかる費用と手間と比較すれば安上がりと言えるでしょう。)。

③ 相続人が存在しない場合

それでは,調査の結果,賃借人が天涯孤独の身で,相続人が全くいない,という場合はどうでしょうか。
また,調査時には相続人がいたものの,連絡を取ったところ,全ての相続人が相続放棄をして,結果的に相続人がいなくなった場合はどうなるのでしょう。
このケースは厄介です。
上記のとおり,相続人が存在していれば,費用はかかりますが,裁判を提起して賃貸借契約を終了させ,適法に室内の荷物を処分することができます。
ですが,相続人がそもそも存在しなければ,裁判を起こすこともできません。
このような場合は,賃貸人はどうしたら良いのでしょうか。
法律の建前から言えば,相続人がいない場合には賃借人の財産は国庫に帰属することになりますが,そのためには,まず,家庭裁判所に「相続財産管理人」を選任してもらう必要があります。

相続財産管理人選任の申し立ては賃貸人でもできますので,このようなケースで法のルールに則った手続を進めるとすれば,賃貸人が家庭裁判所に賃借人の相続財産管理人の選任を申し立てた上で,選任された相続財産管理人に賃貸借契約を解約してもらった上,室内の荷物等を処分してもらうことになります。
ただ,相続財産管理人選任の申立費用はたかが知れていますが,申立ての際,ほとんどのケースでは,裁判所から相続財産管理人に支払う報酬等を予納せよと言われてしまいます(※賃借人に預貯金があり,後々相続財産管理人に支払う報酬が潤沢にあるという場合には不要なケースもあります。)。

問題が解決するまで被相続人に貸していた部屋を他に貸すこともできず,未回収賃料は増え続ける上に,更に予納金を支払ってまで相続財産管理人選任の申立てをしても良いという賃貸人はまずいないでしょう。

ですので,このようなケースでは,実際は,相続人がいないと判明した時点で賃貸人の責任において,室内の荷物を処分しているケースがほとんどでしょう。
ただ,法の建前上,相続人のいない賃借人の財産は国庫に帰属しますので,このような処分は法のルールには反している,というリスクがあることを知っておくことが必要です。

以上のとおり,賃借人が死亡した場合には,安易に室内の荷物を処分するのではなく,まずは必ず弁護士等の専門家に相談することをお勧めします。

賃借人の死亡した場合の問題点について簡単にお話しましたが,まずは,安心安全な以下のリンクのサイトを利用して,自分の不動産の価値の分かる営業マンと出会うことも大切です。

不動産売却一括査定「イエイ不動産売却査定」

また,相続と賃借については, >>~マンション売却のための税金の基礎知識~(1)にまとめてありますので,是非ご一読ください。

不動産の相続について


はじめに



人が死亡すると,死亡した人(死亡した人を「被相続人」といいます。)の遺産は全て相続人に承継・相続されます。
相続人の範囲と相続分は民法で決まっています。
例えば,ある男性が死亡し,男性には妻と2人の子供がいた,というケースでは,妻が男性の遺産の2分の1,子供2人はそれぞれ遺産の4分の1ずつを相続します。 これは,例えば,男性が自宅の土地・家屋や投資用マンションなどの不動産を遺して死亡した場合も同様で,妻が2分の1,子供らが4分の1ずつ不動産を相続することになります。
もっとも,民法で規定している相続分は必ずその通りに相続しなければいけない,というものではなく,相続人同士で話し合って,誰がどの遺産を相続するのか決めることができます。

投資用マンションを相続した場合


被相続人が投資用マンションを遺して死亡した場合についてご説明します。
先ほどの例で,男性の遺産に月々20万円で貸しているマンションが1部屋ある,というケースで考えてみましょう。

(1) 賃料収入と相続
毎月の賃料と相続についてご説明します。
まず,発生した賃料については,①相続開始前の賃料,②相続開始後遺産分割前の賃料,③遺産分割完了後の賃料,の3つに分けて考える必要があります。
例えば,男性が2月に死亡して,その後,妻と子供らが協議をした結果,3月以降はこの投資用マンションは妻が単独で相続することになったとします。
①相続開始前,というのは,男性が死亡する前ということです。
男性が死亡する前に発生した賃料は,各相続人に分割して承継されます。
例えば男性が死亡する1か月前の1月分の賃料が手つかずで残っていた,という場合には,1月分の賃料20万円のうち妻が10万円,子供2人がそれぞれ5万円ずつを相続することになります。
次に,②相続開始後遺産分割前に発生した賃料ですが,これも,各相続人がそれぞれの相続分に応じて相続することになります。
ですので,3月以降は妻が単独で相続することになったとしても,その前の2月分の賃料20万円については,妻が10万円,子供らがそれぞれ5万円ずつ相続することになります。
そして,③遺産分割完了後の3月分以降の賃料については,投資用マンションは妻の単独所有となりますので,所有者である妻が全額取得することになります。

(2) 不動産を共有した場合の問題点
次に,男性の遺した投資用マンションを妻と子2人の3人の共有とした場合の問題点についてご説明します。
不動産を共有する場合,共有者間の話し合いで決めなければならない事柄も多いところ,時間が経つにつれて共有者が増加・変更するなどして,共有者同士の意思疎通が困難になるケースがままあります。
特に,投資用マンションについては,賃借人の求めに応じて早急に修繕が必要となるケースもありますし,賃借人が退去した後の修繕の必要性や,次の賃借人をどうするか,など共有者間で話し合うことは山積みです。
共有者間の人間関係が良好な時は問題ありませんが,更に相続が発生するなど共有者が増えるに伴い,共有者間の人間関係が薄れ,常に共有者間で早急な話合いがまとまるとは限りません。
ですので,不動産を相続した場合には,可能であれば,相続人間の共有ではなく,特定の相続人の単独所有とすることが望ましいでしょう。

(不動産の共有の問題点については, >>~マンション売却のための税金の基礎知識~(1)に詳しく説明してありますので,是非ご一読ください。)

共有関係を解消する方法について


(1) 共有物の分割(共有物分割協議・民事調停・共有物分割訴訟)

遺産分割協議により,一旦は相続人間で共有すると決めたものの,その後,やはり不便が生じたという場合には共有者間で話し合って共有物を分割し,共有関係を解消することができます。
その際の分割方法としては,①現物分割,②換価分割,③代償分割がありますが,共有者間の話し合いがつかない時には,民事調停の申立てや共有物分割訴訟をすることができます。
ですが,共有物分割訴訟は,共有者全員が訴訟上の当事者(原告又は被告)になっていなければならないなどの条件がある上,裁判所が①現物分割,②換価分割,③代償分割のいずれの方法を選択するかについては裁判所の基準があり,必ずしも希望通りにはならない可能性がありますので,共有者間で協議がまとまらない場合には,まずは弁護士等の専門家に相談することをお勧めします。

(2) 共有物分割以外の方法について

共有物分割以外の方法で共有関係から離脱する方法として,『共有持分の放棄』があります。
上記のような,投資用マンションなど財産的価値のある不動産であれば共有持分を放棄するメリットはないでしょうが,地方の土地など財産的価値どころか「負の遺産」になりかねない不動産については,固定資産税を払うだけマイナスになる,といこともままあります。
このような場合,一旦は遺産他の分割協議により相続人間の共有になったとしても,その後,他の共有者に対して,共有持分を放棄するという通知を出し,共有関係から離脱することが可能です。
先に通知を出した共有者から共有関係を離脱できますので,共有持分の放棄はいわば早いもの勝ちとなります。
ただし,共有持分の放棄は贈与税等の課税対象になる可能性がありますし,後々他の共有者から「そのような通知は受け取っていない」と言われないために内容証明郵便で通知する等の工夫が必要ですので,共有持分を放棄したいと思う時には必ず事前に弁護士等の専門家に相談することをお勧めします。

不動産の共同相続と共有について簡単にお話しましたが,まずは,安心安全な以下のリンクのサイトを利用して,自分の不動産の価値の分かる営業マンと出会うことも大切です。

>>>不動産相続時に注意!共同名義にしない方が良いのはなぜ?

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