父が亡くなり、父が一人で住んでいたマンションをきょうだい三人で相続することになりました。だが三人とも地元から離れて暮らしており、管理が難しいため、マンションの売却をして売却益を遺産分割することにしました。
平成25年住宅・土地統計調査(総務省統計局)によれば、マンションなどの共同住宅が2209万戸となっており、住宅全体の約42%を占めています。平成20年と比較すると、共同住宅は140万戸(6.8%)増加しています。一戸建て住宅の増加率が4%代ということを考えますと、今後も引き続きマンションの建設が増加するのではないかと思います。
全ての世代(特に子育て層)が郊外から市街地・都心で暮らす流れが進んだり、また外国人の定住者が居住先として都心部や市街地を選ぶケースも増えています。
ところが都心部には土地がほとんど残っていないため一軒家が増えることは考えにくく、また管理の面からもマンションの方が手軽という点から、マンションの所有者が増加し、ひいては将来中古マンションを相続する人が増加することが予想されるのです。
上記のような相続の例もこれからますます増えてくることでしょう。
ところで、いざその時を迎えたら、私たちはどんな手段を取れば良いのでしょうか?
相続税の計算にも関わるため、中古マンションなどを相続し、遺産を分割するには、価格の査定が欠かせません。
「遺言も残っていないし、どうやって遺産分割したらいいのか?」
「相続税の支払いのためには、マンションを売却した方がいいのか?」
「マンションの査定は不動産鑑定士にお願いした方がいいんだろうか?」
「WEBの無料査定を利用しようか?」
など、大切な家族を亡くした悲しみの中、少しでも公平に、また相続人が全員納得できる形でマンションの査定をしてもらい、遺産の配分を決めなければなりません。
そこで今回の記事では、相続の遺産分割のやり方や、遺産の査定額を把握するときの「中古マンションの査定の方法や注意点」をお伝えします。
この記事を読むことで、あなたの納得できる査定方法が見つかり、中古マンションを査定してもらう時、すぐに行動に移せるはずです。ぜひ最後までご覧ください。
Contents
中古マンションの相続
換価分割
中古マンションを相続した際、先の例のようにマンションの売却益を相続人で分けるやり方を「換価分割」と言います。
この時は、不動産会社に査定してもらった金額を元に、買主と折り合った価格で売却すれば良いので、査定額が低いと業者と揉める可能性はありますが、査定額が満足できるものであり、かつ相続する割合が等分の場合は相続人同士で揉めることはあまりないといえます。
代償分割
別の例を考えてみましょう。
先程の例の三人きょうだいのうち、長男が父のマンションに住むことになりました。
その長男がマンションを相続し、残りの二人にはマンションの代金の三分の一ずつを長男から現金で渡すことにしました。
このように、一件しかない不動産を一人が相続し、残りの相続人が本来受け取るはずの不動産部分に相当する額の現金を、不動産を相続した相続人から受け取るやり方を「代償分割」と言います。
代償分割は、特に中古マンションなどの不動産を相続した場合によく使われる手段で、相続人全員がもらう金額に納得している場合はスムーズに話が進むことでしょう。
なぜ相続で揉めるのか?
このように、中古マンションを相続した時には円満に解決できそうな仕組みが法律面でも用意されているのですが、実際には「争族」という言葉も生まれたように、相続には揉め事が絶えないイメージがついてしまっています。なぜでしょうか?
故人の生前に遺産分割について決着が付いていれば良いのですが、まだ平均寿命前の年齢で突然亡くなった場合などは、故人が死後のことまで考えていないことも多いです。
亡くなるまでに財産の行く末などを決めておく生前整理の考え方もまだ浸透していない現状があります。
中古マンションの場合では、揉めてしまう要因が他にもあります。
査定額の違い
相続の遺産分割で揉める原因の一つに、マンションの査定額があります。
代償分割は、不動産を相続した人(=現金を他の相続人に渡す人)にとっては、一時的に現金の負担が大きくなってしまいます。ですのでそういった負担はなるべく小さくしたいと考えています。
一方、現金をもらう側の相続人は、中古マンションを手に入れられなかった分、少しでも多く現金をもらいたいと思っています。
高い価格で査定してもらいたい側と、低い価格で査定してもらいたい側が折り合わないと、「現金ばかり負担させやがって」「住む家をタダでもらえていいよね」など後の生活にまでヒビをもたらす問題が生じてしまうのです。
不動産鑑定士に依頼してみるが…
そこで、少しでも公平を期すため、相続した中古マンションの査定を不動産鑑定士に依頼しようと考える方もいらっしゃるかもしれません。
不動産鑑定士に報酬を支払い、不動産鑑定評価書を取得することができます。
しかし、普通の相続人の関係の遺産分割協議で、わざわざ不動産鑑定評価書を取得する方はほとんどいらっしゃいません。
不動産鑑定士による鑑定評価書を取得するケースは、相続人同士で本格的に揉めてしまい、最終的に調停・裁判になってしまった、というような時です。
相続人がそれぞれ不動産鑑定士を雇い、鑑定評価書をぶつけ合うような形になります。
解決までには相当の時間がかかり、それぞれの精神的負担も計り知れなくなります。
不動産会社による無料査定
それでは、不動産会社による無料査定はいかがでしょうか?
無料査定では、今売れる売却予想価格を査定します。
ここで注意する点は、相続税の算出の時に使われた中古マンションの評価額とは違う価格が提示される可能性があることです。
というのは、相続税の計算は固定資産税の算出を元になされるのに対し、無料査定では物件の所在地などの情報から相場を参考に売却価格を算定しますので、そのマンションの売却査定額は時価での評価となります。そのため不動産によっては相続税評価額と大きくかけ離れてしまうような結果になります。
例えば底地などは相続税評価額よりも安くなります。また実際はほとんど宅地なのに、山林などで評価されている土地などは、時価は相続税評価額よりもかなり高くなります。
おススメの不動産査定方法
一括査定サイト
遺産分割の協議の際、おススメの査定方法は、やはり不動産会社による無料査定です。
中でもまずはWEB上での一括査定サイトを使うことをおススメいたします。
一括査定サイトでは、一度に5~6社程度の不動産会社から売却査定額をもらえます。
実はここが大きなポイントで、1社のみによる査定ではなく、5~6社から査定額を入手できるため客観性が高まり、透明性も確保できるのです。
不動産鑑定士に依頼すると思わぬ費用負担が発生し、誰が負担するかでまた揉め事のタネが増えてしまいかねません。そこで一括査定サイトを利用すると、無料のため費用負担でも揉めることもなく、相続人同士でも納得感が得られます。
遺産分割協議で、まず手始めに相続した中古マンションの価格が知りたいというほどのレベルであれば、一括査定サイトによる無料査定で十分です。
不動産一括査定サイトはYahoo!やGoogleで検索するだけでも30は出てきます。
ところで、公的財団法人不動産流通推進センターが出したデータによりますと、2017年度の不動産売買成約件数の総数は163,205件。そのうち手数料収入上位4社の総成約件数は106,270件(両手:売買両方を仲介する場合はそれぞれを1件とカウント:を含む)とのことです。単純比較はできませんが、実に日本の不動産売買の仲介件数全体の半数近くかそれ以上をその4社で占めています。
それだけ日本の不動産売買の取引は、大手に偏っているわけです。
以上のことからも、最低でもこれら大手に1社、欲を言うと2~3社に依頼できたほうがベターです。
それに加えて、中堅の業者から2〜3社、地域密着の不動産会社から2〜3社、売却査定を依頼すると良いでしょう。地域密着型の会社の方が、特定の地域に強かったり、社長が自ら相談に乗ってくれるのでサービスが手厚かったりなど良いことも沢山あります。
一括査定サイトを利用すると、こういった依頼が一度にできますから、忙しい現代人にはピッタリのサービスと思います。
一括査定サイトの利用方法と流れ
一括査定サイトでは売却査定が前提です。
まず「所在」と「物件種別」を入力します。
その後は面積や築年数、構造、間取りといった中古マンションの情報を入力するだけです。
入力査定だけでは2~3分で査定を行うことが可能です。
一括査定サイトを利用した後は、不動産会社の各社から営業アプローチが来ます。
その際、売却については、まだ意思が固まっていないことをきちんと伝えましょう。
良さそうな業者が見つかったら実際に売却査定のため現地調査をしてもらう流れになります。
さらに、実際に売却するかどうかに関わらず、現地調査をお願いする業者も複数あると良いですね。
ここまで一括査定サイトの利用方法と流れについて見てきました。
最後に中古マンションの査定に成功するコツを見ていきましょう。
中古マンションの査定に成功するコツと注意点
複数の不動産物件を相続する場合はまず「収益物件」を優先的に査定してもらうのがコツですが、中古マンションの一室の場合は通常の不動産売買と同じく、普段からマメに部屋の手入れをする・管理組合と良好な関係を築いておく、と言った点がやはり査定においては重要なポイントになってくると思います。
遠方に暮らす家族の場合は可能ならば年1回でも会うようにする、という人間活動が、結果的に相続時に揉めずに済むポイントになるのではないでしょうか?
相続税のこともありますので税理士に相談するのはやむを得ない点もありますが、税理士は不動産のプロではありません。そのため相続税評価額通りに分割案を出してくる先生もたくさんいらっしゃいますので注意してください。
まずは相続人全員で合意の上、不動産を再査定しなおしてみてはいかがでしょうか?
まとめ
以上、相続時の中古マンションの査定の方法とおススメを徹底解説しました。
亡くなられた被相続人は、相続人同士で揉めることを望んではいません。
相続は悲しみの中で進めなければならず、売却して換価分割を選ぶか、それとも代償分割にするのか、なかなか冷静に判断することも難しいのですが、一括査定サイトを上手く利用して、残された家族は仲良く、スムーズに遺産分割協議を進めていきましょう。