中古マンション売却査定のポイント(209)住宅ローンが払えない?

トラブル・特殊な物件の売却

住み心地の良い分譲マンションを見つけたので買いたくなった。でも一括では代金を支払えない…そんな時に助かるのが住宅ローンです。
購入時には思い至らない、または考えたくないことですが、何らかのきっかけで収入が途絶え、住宅ローンが返せなくなると、せっかく買ったマンションはどうなってしまうのでしょうか?
そこで今回は住宅ローンが返済不能になってしまったらどうなってしまうのか、お伝えしていきます。
この記事を読むことで、マンションを購入したら何をしなければならないか、お分りいただけると思います。
ではさっそく見ていきましょう。

目次

住宅ローンが払えなくなったら

 

抵当権とは?


住宅ローンとは、マンションなどの不動産を住宅として使用するために購入する時に、金融機関から借りる購入資金のことです。
金融機関のほとんどは、指定の信用保証会社の連帯保証を条件に融資を行なっていますので、借入れをする時にはローンの申込みをすると同時に保証委託の申込みをしています。
ですので、その保証会社は土地(マンションの場合は持分)に抵当権を設定しています。
抵当権とは何でしょう?
住宅ローンを借りる際、マンションであれば自宅の専有部分を担保に入れておくことで、もしローンの支払いが滞ったらそのマンションを競売にかけて売却することで、ローンの残債の回収に充てることができる、という権利のことです。
ここで、抵当権に関係する法律上の呼び方を、マンションに絞って整理しましょう。
・金融機関=お金を貸す人=債権者=抵当権者
・マンション所有者=お金を借りる人=債務者=抵当権設定者
となります。
お金を貸す金融機関は、、お金を回収する権利を持っている債権者であり、抵当権を実行できる抵当権者とも言います。
ちなみに抵当権が設定されていても、マンションの所有者(=抵当権設定者)は抵当権者に自分の家を渡すことなく住み続けることができます。

競売(けいばい)までの流れ


住宅ローンの借り入れ期間の多くは35年(認定長期優良住宅に利用できるフラット50は50年)です。
しかしその長い期間中に何事もなく過ごせるのはごく稀なケースです。
何らかの事故、病気にあい、主な収入を得る人物が働けなくなり、収入が途絶えるかもしれない…ということはローン借り入れ時に考慮に入れなければなりません。
もし本当にそうなってしまい、住宅ローンの返済が滞ってしまったら、一体どうなるのでしょうか?

・1〜2か月滞納…
金融機関から返済が滞っているという連絡が、郵送や電話で来るようになります。
・3か月以上滞納…
個人信用情報機関へ金融事故情報として登録されます。いわゆるブラックリストです。
これによりあなたの情報は銀行だけでなく、カード会社などにも知られることとなります。
・6〜8か月以上滞納…
期限の利益を喪失します。今までローン返済を分納で良いと言われていたのが、残債を一括で返してくださいと迫られるようになります。
・9か月滞納…
住宅ローンを借りた時に連帯保証をしてくれている信用保証会社が代位弁済(ローン残債を代わりに金融機関へ返済すること)します。以降は信用保証会社からあなたへ返済請求が来ることになります。
・10か月〜11か月滞納…
信用保証会社(利用していなければ金融機関)が担保にしている中古マンションに対して競売を申し立てます(=抵当権の実行)。
裁判所から自宅に「担保不動産競売開始決定通知」が届きます。
・12か月滞納…
裁判所から裁判官が法律に基づき現地調査(=競売に向けての査定)を行います。この査定は強制的に行われるため、拒否はできません。居留守を使っても鍵を開けられてしまいます。
・競売開始〜売却の決定〜立ち退き…
現地調査に基づく査定により、裁判所が最低入札価格を決定します。
競売の入札通知書が自宅に届きます。
オークションのように、一番高値をつけた入札者に売却されます。
その後売却が完了すると、自宅マンションからの立ち退きが求められます。応じない場合は執行官により強制立ち退きが行われます。
・その後…
売却された代金は債務返済に充てられますが、売却価格が残債より少ない場合は保証会社に対して返済が続きます。

以上が住宅ローン返済を滞納したときの流れになります。
競売は、住宅ローンが払えなくなった場合に、競売は、国家権力(裁判所)が行う売却であり、ルールが厳格で、なおかつ、強硬手段になります。
裁判所の執行官が査定に訪れてからは競売物件情報として公開されますので、あなたのマンションに様々な業者が査定に現れるようになります。
手続きも厳格で時間がかかり、競売の申立てから競売の実行まで半年以上もかかります。

任意売却とは?

 

しかし、指をくわえて自宅マンションが競売にかけられるのを黙って見るしか、私達には方法がないのでしょうか?
実は競売に至るまでにもうひとつ手段があるのです。
それが「任意売却」です。
そこでこの第2項では、まず任意売却についてご紹介します。

任意売却は「国が介入しない」


住宅ローンを滞納し、一括返済を迫られるようになったとき、債務者が債権者の同意を得て普通の不動産市場で中古マンションとして売却し、その代金をローン残債に当てるやり方を「任意売却」と言います。
任意売却は法的な手段ではありません。ですので裁判所の介入はないのが大きな特徴です。

任意売却での売却手続き


基本的には通常の中古マンションの売買と同じです。
抵当権のついたマンションを中古物件として扱い、不動産会社が仲介して取引します。
競売では裁判所から執行官が強制的に査定に入るというのはすでにお伝えした通りです。場合によっては近隣の住民にも調査が行われ、さらに色々な業者が競売物件の査定のためにしょっちゅう現れるようになりますので、近所中に自宅マンションが競売にかけられることが分かってしまいます。
その点任意売却では、通常の中古マンションの取引と同じような査定のやり方になりますので、業者が近隣の住民に敢えて話を聞くということはありません。ですので普通に中古でマンションを売却した、という認識を近所の住民にも持ってもらいやすいです。
売買契約が成立すると、債権者がマンションについている抵当権を抹消します。

任意売却での注意点


ここで、任意売却ならではの事情から来る注意点をご紹介します。
その事情とは、「売主が経済的に厳しい」という点です。
任意売却を決断した時点で、売主は金融事故情報(ブラックリスト)に載っている状態です。そのため通常の中古マンション売買とは、契約が少し変わってきます。

内覧に心の準備が必要


人はお金が手元にないと、身の回りを整える余裕がなくなってきます。
マンションの内部はゴミ屋敷状態になっていたりするケースも散見されます。
不動産会社が中古マンションの査定に入る際には、手入れの行き届いていない部屋というのはどうしても査定に響きますので、査定や内覧の日は可能な限り部屋を掃除することが重要です。

手付金の扱い


任意売却では、売買代金は中古マンションの引渡し時に一括で全額支払うことになります。これは、売主が夜逃げするのを防ぐためです。
夜逃げされてしまうと、債権者は債務者(売主)と連絡が取れません。
手付金だけ受け取られてしまうと、売却後のローン残債も回収できないというケースもあります。

滞納金の負担・瑕疵担保責任の免責


売主はローン返済が滞っている状態ですから、物件が中古マンションならば、管理費と修繕積立金の支払いも滞っていることがほとんどです。
実は管理費と修繕積立金はローン残債には含まれていません。ですので中古マンションを任意売却物件として購入する際には、売主が滞納しているこれらの代金を後日負担する必要が出てきます。
また、通常の中古マンション売買では、売主に瑕疵担保責任(買主が買ったマンションに隠れた欠陥があれば、買主がその欠陥に気づいた時から1年間は売主の責任になること)がありますが、任意売却では売主の瑕疵担保責任は免責になります。経済的に厳しく、責任を負えないからです。

現況有姿での購入


現況有姿とは、「ありのまま」ということです。通常の中古マンションを買う時は、壁紙の張り替えやクリーニング代など、設備についての取り決めがなされますが、任意売却ではそれはありません。壁紙が破れていようが、窓ガラスが割れていようが、そのままでの購入になります。
査定時にしっかりとチェックしましょう。

白紙解約


抵当権を登記した人が1名なら良いのですが、債権者が複数名いる場合は、中古マンションを売却したその代金の配分を債権者同士で話し合って決めます。
当然どの債権者も自分の債権は回収したいので、なかなか配分がまとまらないこともあります。
任意売却はローン返済のために行われる売却ですので、この配分が契約の期日までにまとまらないと、契約が実行されない(=白紙解約)ということになります。
そうなった場合は、別の買い手がつかない限り、この中古マンションは競売にかけられてしまうことになるのです。

まとめ


ここまで、住宅ローンが払えなくなった場合についてみてきました。
住み慣れた自宅マンションを中古市場に出すというのは、色々な事情から来ることと思います。
中でも競売や任意売却というきっかけでマンションを手放さなければならないというのは、大変不本意なことでしょう。
いずれにしても、手放すことになれば、中古マンションの査定というのは次の買い手の方にとっても、また自分たちにとっても必要なことです。
少しでも有利な条件で売却するためにも、自宅を整え、綺麗で住みやすい状態にしておくのは査定において最重要課題と言えます。
いまこの時も一括返済を迫られている方も、まずは査定を意識した暮らしをしてみてはいかがでしょうか?