日ごとに期待の高まる2020年、東京オリンピック。その注目も加速要因となりインバウンド客(外国人観光客)も倍増しています。
さらに、中東、中国などの富裕層による高級マンションを中心とした不動産投資の影響に伴い、近年、東京都の不動産価値は急速に高騰する結果となりました。
テレビ、情報雑誌、新聞等のメディアのみならず、インターネットでも「東京都のマンションはいつまで高騰するのか!?」という記事を目にしています。
これはどうした? 人気の世田谷区のマンションが中古になっていく!?
それが、8月頃のことだったでしょうか?
「世田谷エリアの新築分譲マンションで、多数の“完成在庫”※が目立ち始めた」という気になる記事があったのです。
※マンションは完成しているが、売れ残っている状態の物件。
私はマンションを専門とした評論家ではないですが、「やっぱりこうなったか?」と思わずつぶやいてしまいました。
25年ほど、数えきれないほどマンションの売却査定を担当し、不動産業界に携わってきた自分でさえ、今の東京都の不動産価格は少し異常です。例えて言うなら、東京都の特定のエリアだけが、“プチバブル”化状態といえばお分かりいただけるでしょうか。
なんと、世田谷区の完成在庫が、約70%。
世田谷といえば、芸能人、著名人も多く住む高級住宅街としても知られる23区でも人気の高いエリア。ニューファミリー層を中心に根強い人気で、中古マンションを売却して移り住む人が増え、再開発が進む二子玉川もこの世田谷区です。ですので、契約率を見ても、新築分譲マンションが発売されれば、他の地域より高い評価を得ていました。
実際、ここ数年は2割程度だった世田谷エリアの完成在庫。中古を含めても30棟のマンションがあれば、完成在庫を抱えているのはわずか5~6棟のレベルだったのに、4倍ほどに急増しているということなら、異常事態としか言うしかありません。
富裕層を狙ったやみくもな億ションで手が出ない…、聞いたことのない新規・中古マンション販売会社の強引な営業手法の査定段階で不信感を持ってしまった…と、こういうことならうなずける話です。
それが、完全在庫の物件として、名前があがっているのは、マンションデベロッパーとしては大手の三井不動産や住友不動産だけでなく、完売を目指すために、完成間近になると大幅な値引きすると言われる野村不動産の物件でさえ売れ残っているのです。
なるほど解説!完全在庫の“ワケ”
最大の要因は、ズバリ「価格の高騰」です。たとえ世田谷区でも、数年前までは250万~300万円(/1坪)で、新築分譲マンションを購入することができました。
が、2016年現在ですと、マンション平均400万円(/1坪)にまで高騰しています。
これを一般的に、ファミリー向け70㎡換算すると、約21坪程度ですので【400万円×21坪=8400万円】という計算になります。
買いたくても住宅ローンが組めない。
今住んでいる中古マンションを売却査定すると用立てる算段ができない。
利便性やブランド価値が高い世田谷区だったらいくら高額でもいい、中古マンションを売却して、新しい分譲マンションがほしいと思う人はいます。しかし、売却査定が思うようにいかない、新しく組む住宅ローンの問題など、断念するしかない人が増えているのです。
あくまでも全額借入した場合ですが、6000万円台であれば年収1000万ほどで住宅ローンを組めるのですが、8000万円台になると年収が約1500万円必要になってしまいます。
当然、共働き世帯も多いですし、現在住んでいる中古マンションを売却査定し、なるべく高い資金にしたり、頭金を貯蓄していたり、親などから贈与してもらうケースもあるでしょう。
それでも現実問題として、この年収400万円の差はかなり大きい負担になっており、そのことによって世田谷区の新築分譲マンションの完成在庫に繋がっているのではないでしょうか。
これから中古マンションを売却し、新築マンションに買い替えを検討するなら…
今回は、世田谷区の新築分譲マンションにフォーカスしていますが、世田谷区だけの問題では決してなく、大阪・京都などの関西圏でも目立ち始めているようです。
この現象が全国的に広がるのは、時間の問題かもしれません。中古マンションにお住まいで新築マンションを購入する予定があるなら、なるべく希望の価格で売却するためにベストな査定額と、媒介業者を的確に見つけるため、常に状況はチェックしておきたいですね。