不動産売却に係る仲介手数料と問題点について
あなたが所有する中古マンションを売却する際,まずは,不動産会社にマンションの査定を依頼するでしょう。
中古マンションを売却するに当たっては,予め査定によりマンションの市場価値を把握し,売却に必要な費用を知っておくと,その後の資金計画が立てやすくなります。
そこで,今回は,中古マンションを売却する際に必要な費用のうち,不動産業者に対する仲介手数料についてお話しましょう。
仲介手数料とは
まず,中古マンションを売却する場合,通常は自分で買主を探して売却することは困難ですので,不動産業者に売却を依頼するかと思います。
売却を依頼された不動産業者は,物件のチラシを作ったり,HPに情報を載せたり,購入希望者の内見に立ち会ったりして買主を探しますので,無事に買主が見つかって中古マンションを売却できた場合,不動産業者に報酬を支払う必要があります。
その報酬が仲介手数料です。
(ⅰ) 仲介手数料の支払時期
不動産業者に売却の仲介を依頼する場合,その報酬は「成功報酬」です。
ですので,売買成立前には支払う必要はなく,あくまでも売却できた場合にのみ支払う,ということになります。
(ただし,売主のたっての希望で,遠方の購入希望者に説明に行ってもらった旅費や,ビルの屋上に看板広告を出すなど,通常はやらない特別な方法で広告を出してもらった費用等は手数料の範囲外として,別途請求されることはあります。)
(ⅱ) 仲介手数料の金額
不動産業者が請求できる仲介手数料は,マンションの売買価格によって,以下のとおり,上限が決まっています。
(1) 売買価格が200万円以下 5.4%以内の額
(5%+消費税)
(2) 売買価格が200万円超~400万円以下 4.32%以内の額
(4%+消費税)
(3) 売買価格が400万円超~ 3.24%以内の額
(3%+消費税)
具体的に説明すると,例えば,中古マンションが4000万円で売却できた場合(※基準となる売買代金は税抜価格です),4000万円のうち(1)200万円の部分については10万8000円(200万円の5.4%),(2)200万円超~400万円の部分については8万6400円(200万円の4.32%),(3)400万円超~4000万円の部分については116万6400円(3600万円の3.24%)の手数料がかかることになり,合計で136万0800円(10万8000円+8万6400円+116万6400円)の仲介手数料がかかることになります。
(ところで,このように計算するのは煩雑ですので,通常は400万円超の取引の場合,「仲介手数料=売買価格の3.24%+6万4800円」という簡易計算式で計算することも可能です。)
なお,これは,あくまでも請求できる仲介手数料の上限ですので,不動産業者によっては,それより低い業者もあります。
不動産業者への仲介手数料はかなりの高額になりますので,査定時において,将来的に最大でどのくらいの費用が発生するのかしっかり押さえておき,査定後,実際に売却の仲介を依頼する時には,依頼する業者の仲介手数料がいくらになるのか,最初に確認しておきましょう。
両手取引について
ところで,不動産業界では,『両手取引』という言葉をよく耳にします。
両手取引とは,不動産業者が売主と買主の双方から依頼を受けて売買取引を成立させることです。
一つの不動産業者が売主と買主の両方を代理するということは,これまでご説明した仲介手数料について,売主側と買主側からの両方から貰うことができるということです。
(先ほどの例で言えば,ある不動産業者の仲介により中古マンションが4000万円で売却できた場合,売主側から136万0800円,買主側から136万0800円,最大で272万1600円の仲介手数料を請求することができます。)
このような取引は違法ではなく,我が国の不動産業界では広く行われています。
このような取引は,売主と買主の間に入る不動産業者が一つなので,取引がスムーズに行われるというメリットがありますが,一つの不動産業者が売主と買主の双方の仲介をする,ということは不公平な取引となる危険があります。
というのは,中古マンションの取引においては,売主としてはできるだけ高く売りたい一方で,買主としてはできるだけ安く買いたいのですから,潜在的には,売主と買主の利益は常に相反しています。
ですから,本来,その両方の利益をそれぞれ最大限に図るというのはできないはずです。
ですので,両手取引においては,売却予定の中古マンションの情報を広く開示すれば,より高く買ってくれる買主が見つかるかもしれないところ,情報開示を限定的にして業者の顧客の中から購入希望者を探す,あるいは多少売却金額が安くなったとしても,自社の顧客に売却してしまう,というように,主に売主側に不利益になる取引となる危険性があるのです。
そこで,近年,両手取引はしない不動産業者や,売主買主双方の仲介をしたとしても,片手分の仲介手数料しか請求しない,とする不動産業者も増えています。
ですので,査定をして売却の仲介を依頼する際は,仲介手数料に関しては上記のような問題点があることを頭に入れておいた上で,しっかり信頼できて,自分の側に立つ不動産業者を選ぶことが大切です。