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親が介護老人福祉施設に入居する際に行う中古マンション売却の所得税と相続税の注意点
現在の日本は、少子高齢化社会です。今後もこの勢いは加速化していくと思われます。自分が働きながら、年老いた親の面倒をつきっきりで見守ることはなかなか誰にでもできることではないですよね。そのため、親には、特別養護老人ホームや、ケアハウス、グループホームなどの介護福祉施設に入居を勧める方も今後さらに増えていくと思います。
その場合に、親が居住していた、中古マンション等の不動産はどうするのか、頭を悩ませるところです。子である自分自身の職場や生活基盤から遠く、親の中古マンションに自分たちが引っ越すのは妥当ではない、となった場合に、中古マンションを査定して売却しようと考えるでしょう。
今現在、親が介護老人福祉施設に入っている方や、入ろうかと検討している方で、中古マンション等の不動産を持っている方に、不動産の売却や相続、税金の特例などを解説します。
中古マンション売却した場合の所得税と相続税
中古マンション等の不動産を査定して売却すると、発生する税金は以下の2つです。
所得税・・・中古マンション等を売却して、売却益が出ると所得税が発生
相続税・・・相続した際に、相続財産が基礎控除額以上である場合は相続税が発生
不動産税制において、一般の人が中古マンションを査定後売却したり、相続したりした場合に、負担を軽くする様々な特例があります。
居住用財産であるなどいくつかの要件を満たしていれば、3000万円の控除が受けられる場合があります。
しかしながら居住用財産でなければ、受けられないのです。親が、介護老人福祉施設に入居したら、その中古マンションは空き家になってしまいますよね。間髪いれずに急いで査定売却しなければならないというわけではありませんが、空き家でありながら居住用財産として認められるには期限があるので、お早めに複数の不動産会社に査定を依頼することをお勧めします。
居住用財産の期限とは?条件とは?
中古マンションが居住用財産としてみなされるには、所有する本人、つまり親が、転居してから3年以内です。転居後3年後の12月31日が期限となります。
そして、以下の要件を満たす必要があります。
・現に居住している家屋やその家屋と共に譲渡する敷地の譲渡の場合
・居住していた家屋やその家屋と共に譲渡するする敷地の譲渡の場合(この間に貸付や事業用に供していても適用となる)
・災害などにより居住していた家屋が滅失した時(災害のあった日から3年後の12月31日)
・その敷地だけ譲渡する場合
・転居後に家屋を取り壊した場合には、転居してから3年後の12月31日までか、取壊し後1年以内か、いずれか早い日までに譲渡する場合(取壊し後にその敷地を貸し付けたり、事業の用に供したりすると適用外となる)
この間、第三者に貸付を行っても適用されます。
転居には、介護老人福祉施設への入居も問題ありません。
つまり、親が介護老人福祉施設に入居した日から、3年後の12月31日を超えた段階で売却してしまうと3,000万円の特別控除が適用できなりますよ、ということですね。
中古マンション査定売却は親本人の同意が必要になりますが、控除が受けられなくなると思わぬ出費が発生しますから、お早めに親子で話し合いをする必要があります。
居住用財産である以外の細かな条件は以下になります。
・1981年5月31日以前に建てた
・区分所有登記がない
・相続直前まで親が一人暮らしをしていた
(2016年4月1日~2019年12月31日までの売却が対象)
3,000万円の特別控除
中古マンション等の不動産を査定売却する時に、譲渡所得が発生すると所得税が生じます。
譲渡所得とは売却益のようなものであり、式で表すと、以下のように計算されるものになります。
譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用
譲渡価額とは、中古マンションを売却して得た金額です。
譲渡費用とは、中古マンション査定・売却に際の仲介手数料などのことです。(測量費・印紙税・不動産取得税 等)
取得費とは、売却した中古マンションを購入したときの価額(建物は減価償却後の価額)
中古マンション等の居住用財産を売却した場合には、3,000万円の特別控除という制度が設けられています。
3,000万円の特別控除を適用すると譲渡所得は以下のようになります。
譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用 - 3,000万円
例えば、親が昔から住んでいる中古マンションですと、いくらで購入したのか、取得費がわからない場合に、原則として“概算取得費”と呼ばれる取得費が用いられます。
概算取得費は、譲渡価額の5%となります。
例えば、中古マンションを3000万円の譲渡価額だとしたら、その5%の150万円が取得費となります。
ですが、売却金額-購入金額-譲渡費用=譲渡所得となります。購入金額があまりにも安い場合に、売却益が高くなり、所得税がとんでもない金額になってしまいます。
その際に、居住用財産で、かついくつかの条件に当てはまれば、3000万円までの譲渡所得は控除されますから、税金の負担が非常に軽くなります。それどころか、3000万円の控除をうけることで、譲渡所得の金額が0かマイナスになれば、所得税は課税されません。
相続税には、相続税評価額
中古マンションの相続には、相続税評価額というものが適用されます。
これは、建物でしたら、固定資産税額と同じ金額です。建物の相続税評価額である固定資産税とともに、占有する土地の相続税評価額をプラスしなければいけません。
中古マンションにおける土地とは、占有部分だけではなく共有部分も含みます。これらの計算は非常に複雑ですから、税理士に相談することをお勧めします。
相続税にも税金の特例は存在します。特例は、中古マンションの場合、建物ではなく土地が対象ですので注意が必要です。
相続税の特例“小規模宅地等の特例”とは
小規模宅地等の特例とは、330㎡までの宅地の評価額を80%減額できる、というもの。
また、以下の条件にあてはまっていなければいけません。
・宅地が居住用または事業用であること
・相続人と被相続人が、配偶者や親族であること
・宅地に相続人が同居していたか
・遺産分割が完了しているか(申告期限がある)
中古マンションにおいては、同居しているかどうかがネックになるかもしれません。
もし上記の条件にあてはまれば、税制上とても得です。
しかしながら、前述の、所得税の時には、空き家の状態で3年間は居住用住居とみなし、その間に貸し出してもOKだったのですが、相続税の特例である、小規模宅地等の特例を受ける場合には、空き家になったからといって人に貸してはいけないのです。貸してしまうと特例が受けられなくなりますのでご注意ください。
3000万円の特別控除と小規模宅地等の特例の違い
これまで、2つの大きな税法上の特例を説明してきました。
実は、この2つは得する受け取り手に違いがあります。
3,000万円の特別控除は、中古マンションを売却する親自身が得をします。
例えば、親自身が介護老人福祉施設に入居する際に、自宅マンションを売却して自分の老後費用に充てるなどが理由の場合です。
さらに、親自身が介護老人福祉施設に入居した後に、3年間は売却をせずに、しばらくの間、賃貸で人に貸すことを考えてもよいのです。
小規模宅地等の特例の場合、相続する子や配偶者、親族が得をします。
親が、介護老人福祉施設へ入居する際には、居住していたマンションはどうするのか、よく考えましょう。その後の売却や相続のことも視野に入れておくことをお勧めします。
まとめ
以上、親が介護老人福祉施設に入居する場合の中古マンション売却に係る、所得税と相続税についてお話させていただきました。
2つの特例は条件が厳しいものですが、もし適用されると、税金の支払いが大変軽くなりますから、どちらかだけでも適用されるといいですね。そのためには居住用財産でなければいけませんから、3年間の期限を忘れずに!
まずは、親の中古マンションを高く早く売ることが第一だと思います。中古マンションを売却する際には、必ず、複数社に査定を依頼するのがポイントです。査定には、インターネットの一括査定サイトを利用すると簡単ですよ!親のマンションの査定金額を見て、売却し、親の老後の資金にも役立てるかと思います。より高い査定金額を見比べることができるのでお勧めです。また、複数社の対応を見比べることで、親の中古マンションを熱心に売却努力してくれるかどうが、営業マンを選べるという利点もあります。
親の居住していた中古マンションは思い出もたくさんあるものですから、よりよい不動産業者や仲介業者がみつかるといいですね。
中古マンション査定、売却においても神経を使うことは多いと思いますが、まずは、大きな出費である、所得税と相続税についてはクリアになったかと思います。
あなたの中古マンションの査定・売却がうまくいくように祈っています!