Contents
中古マンションの売却における「リフォーム」
中古マンションの売却物件が掲載されたチラシやネット広告などを見ていると、大きく「リフォーム済み!」と書かれている広告を見かけます。
同じマンション内で比べてみると分かりやすいのですが、リフォーム済みの中古マンションの販売価格は、そうではないマンションよりも高いことが多いです。
中古マンションを売却しようとしている人の中には、
「やはりリフォームはしなければいけないのだろうか?」
「うちのマンションは リフォームしないと売れるわけがない」
「リフォームしないと査定に響くのかも?」
等々のことを思っている方も多いと思います。
もしかすると、リフォーム代金のことを気にされている方もいらっしゃるかもしれませんね。
結論を言えば、リフォームしなくても中古マンションを売却することはできます。
そこで今回の記事では、中古マンションの売却における「リフォーム」にフォーカスします。
売却査定とリフォームの関係も、合わせてご紹介します。
ではさっそくみてみましょう。
リフォームと新築の違いとは?
一口に「リフォーム」といいますが、実際はどのようなものなのでしょうか?
ウィキペディアによりますと、「老朽化した建物を建築当初の性能に戻すこと」をリフォームと呼ぶそうです。システムキッチンやトイレの交換、壁紙や襖・畳の張り替えなどはリフォームに含まれます。どちらかといえば修復の意味合いが強いようです。
一方で、「リノベーション」という言葉も最近耳にするようになりました。
同じくウィキペディアには、修復に加え、「用途や機能を変更して性能を向上させたり価値を高めたりする」ことをリノベーションと呼ぶとありました。こちらは間取りに変更を加えたりすることを含みますので、どうしても工事が大規模になってしまいます。ここでは一括りに「リフォーム」で統一したいと思います。
リフォームと新築の違い、それは「自由度」と言えるでしょう。
新築で分譲マンションを購入された方はご存知と思いますが、専有部分の設備は標準で用意されており、入居時に選べるのは壁紙の色などに限られています。もちろんオプションを追加できますが、購入時に追加料金がかかってしまいます。部屋のタイプや階数、日当たりにより価格に差が出ますが、同タイプ、同階層では価格面にほとんど差はありません。
それに対して、リフォームは水回りなどを自分の好きなメーカーの製品にできたり、思い切って和室を洋室に変更したり、と自分の好みに合わせた家づくりを可能にしてくれます。
リフォームは割高?
テレビ番組で、時々リフォームの特集が組まれますね。私(筆者)もリフォーム番組が大好きで、リフォーム完成までつい画面に釘付けになってしまいます。
ですが施工費用を見てみると、
「新築の時と費用があまり変わらない、むしろ高いのでは?」
という感想を抱くことも多々あります。
テレビをご覧になるとお分かりでしょうが、リフォームの場合、新築とは異なり「一部壊して」取り付けるという追加の作業が発生します。
例えばリビングのフローリングの床板を4〜5枚取り替える時、リビングのすべての板材を外すのではなく、割れたり曲がったりした板材のみ取り替えます。取り替えた部分は他の部分と違和感の無いように調整する、という新築には入らない作業が加わります。
また、壊すときにはマンションですと重機などの機械を入れられませんので、機械で壊すのではなく、職人さんが手で壊す作業になります。
手壊しは手間も人手もかかりますので、機械で壊すのよりも費用が高いです。
さらに、新築ではまず出ない、使用済みのユニットバスやキッチン、床材、壁材などの廃材処理費用が掛かってきます。
以上のような理由から、リフォーム費用は新築工事よりも割高になってしまうのです。
マンションでのリフォーム
ここからは、いよいよマンションをリフォームするときの具体的な費用を見てみましょう。
と、その前に気を付けたいポイントがあります。
マンションではリフォーム可能な部分が限られているという点です。
どこかといいますと、マンション室内の専有部分、それもマンションの躯体(コンクリートの柱・梁・構造壁など建物を支えるところ)以外になります。
どんなに柱の位置を変えたくても、ベランダの手すりを交換したくても、玄関ドアの外側の色を変えたくても、勝手にリフォームできないのです(但し玄関ドアの内側については色の変更可能)。
外装に手を加えられないので、意外に制約が多いと感じられたかもしれませんね。
ですがマンションのリフォームは、部屋自体がダイナミックに変わるものから、簡単に室内のイメチェンを図るもの、プライバシー保護のためのもの、利便性や快適性を追求するものなど、できることは多岐に渡ります。
代表的な工事の部位別におけるおよその価格は下記の通りです。
・キッチン 50万円~200万円
・ユニットバス 70万円~150万円
・トイレ 50万円~100万円
・内装壁紙 10万円~30万円
・和室の洋室化 50万円~90万円
・フルリフォーム 500万円~1,000万円
壁紙交換や和室の洋室化と比べますと、水回り関連の費用がより多く掛かることが分かります。
水回りのリフォームで注意をしたいことは、キッチン・バス・トイレの位置を変えるような工事です。
水回りの部分は、排水を家の外に流す必要があり、床下の排水管には勾配が設けられています。そのため、排水管の位置をずらそうとすると、床を上げる等大工事になってしまい、結果金額が跳ね上がるのです。
フルリフォームにおいては、各部位の工事をどのように選択するかの積み上げによって金額が決まります。目安としては500万円~1,000万円になりますが、内容次第でコストカットや逆に予算を積み増すことが可能です。
以上、ここまでリフォーム工事費用について見てきました。
では、リフォームすると、その分、売却価格の査定に含むことは可能なのでしょうか?
そこで次にリフォーム代と売却価格への影響について見ていきます。
リフォーム代と売却査定
例えば、リフォームせずに売却した中古マンションの価格が3,000万円だったとします。
この中古マンションに600万円のリフォーム代を投じても、3,600万円で売却できるとは限りません。せいぜい3,200万円~3,300万円程度に査定されてしまうのが関の山です。
つまりリフォームによって300万円~400万円を損することになります。
なぜリフォーム費用が売却価格の査定には影響しないのでしょうか?
例えば、100万円するドイツ製のオシャレなシステムキッチンにリフォームしたとしましょう。
ただキッチンを置くだけではありません。古いキッチンの取壊し・撤去費用も加算され150万円になってしまうようなことがあります。
中古マンションの購入者にとって、新しいドイツ製のキッチンに100万円の価値はあると思っても、工事費を含めた150万円の価値まであるとは思えません。
さらにキッチンの位置を変えたことで床下排水管の工事が加わり、総額300万円になってしまった場合はどうなるでしょう?
床下排水管に関しては、購入者は全く目にすることができません。
あくまでも100万円のキッチンが目の前にあるだけで、設置のための工事については売主が勝手にやったことなので関係ないと大半の購入者は考えるのではないでしょうか?
多くの場合、内装が綺麗になることで売却査定が多少良くはなりますが、リフォームをしてもその金額をそのまま売却価格に転嫁することはできません。
つまり、リフォーム後は確かに売却価格は多少高く査定してもらうことはできますが、投じた工事費用を全額回収することができないため、中古マンションの売却においては「リフォームの必要はない」と言えます。
それでも不安な方はまず「無料査定相談」を
中古マンションの売却を検討中で、リフォームすべきかどうかが不安の方は、まずは現状で不動産査定会社で査定してもらうことをオススメします。
中古マンションでは築年数、管理状況など総合的に査定されます。リフォームしないと売却できないという物件は、中古マンションではほぼ存在しません。査定に出せば必ず売却の目安になる金額が出てきます。
まずは現状でどの程度の金額で売却できそうか、査定を取るようにしましょう。
査定は、一括査定サイトを使えば無料で取ることが可能です。
一括査定サイトでは、複数の査定会社からの査定を取得することができます。
「中古マンションの売却にはリフォームしなくてはいけないんじゃ………」
と疑心暗鬼になったり、一種の強迫観念に陥っている方には、特に一括査定サイトがオススメです。
一社の査定だけだと不安が拭えなくても、複数の会社から査定額を提示してもらえると、
「なんだ、リフォームしなくても売れるんだ」
と納得感を得られ、
「中古マンションの売却には、リフォームは必要ないんだな」
と自信を持てるようになるではずです。
くどいようですが、リフォーム後に中古マンションの売却を考えているのであれば、まずは査定を依頼して、現時点での売却価格の目安を確かめてからにしましょう。
中古マンション売却査定と買主の関係
中古マンションの売却を検討するとき、どうしても気になってしまうのが、設備の経年劣化です。
売主としては少しでも高く売却したいと考えてしまいますので、
「リフォームして綺麗にしたほうが高値で査定してくれるか?」
と期待する方もいらっしゃるかも知れません。
とにかく良い条件で売却を、と焦っている方、ここで買主の思惑に目を向けてみましょう。
売主によるリフォームは、買主が本当に求めていることなのでしょうか?
そこで、今回は中古マンション売却査定と買主の関係についてご紹介します。
買主の本音
リフォームすると、工事の費用全額を売却価格に転嫁することはできませんが、何もしないより高く査定・売却できることは事実です。
一方で、中古マンションの価格が高くなることに関しては、買主は全く歓迎していません。
中古マンションの購入希望者の中には、DIYやリノベーションのブームから、自分好みの部屋に作り上げたいという希望を持っている人たちが少なからず存在します。
それこそが新築分譲マンションとの大きな違いで、中古マンションの購入者は、予算が許せば入居時から自分たちの生活スタイルや好みに合う部屋を作れるという醍醐味が得られるのです。
そのような買主にとって、売主に中途半端なリフォームをされて購入価格が高くなるのはハッキリ言って迷惑行為にもなり得ます。それよりは、安く買ってその分のお金を使って、自分で納得のいくリフォームをしたい、というのが買主の本音でありましょう。
リフォームは売却後で
中古マンションでのリフォームは、工事によっては配管・配線・床や壁の断熱材をいじることもありますが、大抵はキッチンやバス、壁紙、床等の目に見える部分を変更します。
このような目に見える部分は、各人の嗜好や状況に大きく左右されます。
床の例をみましょう。フローリングが好きな人、アレルギー対策でフローリングを選択する人もいれば、カーペットの方が好きな人、騒音防止のためカーペットにしたい人もいます。和テイストが好みの方は畳を選ぶかも知れません。
カーペットを選びたい人は、たとえ気になるマンションでも、売主が綺麗にフローリングにリフォームしてしまっていては、そこに価値を見出すことはできません。場合によっては買主が別途リフォーム代を支払うことになりかねません。そうなると、売主のリフォーム工事は無駄になってしまいます。
つまり、中古マンションの売却時には「買主にリフォームさせる」という考え方を取った方がお互いにウィンウィンの関係になれるのです。
売主の趣味嗜好を押し付けるのではなく、そのまま売却して買主にリフォームしてもらった方が中古マンションも幸せなのではないでしょうか?
少し脱線しますが、私(筆者)は2年に1度転居する時期が過去にありました。その際エアコンの脱着を業者にお願いしたのですが、ある時無茶な設置をされたことがあり、そのせいでエアコン内部の配管がねじれていた、というトラブルを経験しました。取り外しの時に別の業者が気付いて分かったことですが、これはリフォーム工事にも当てはまるのではないかと思います。リフォーム工事を繰り返す事で、内部の配管・配線が破損するリスクが上がってしまいますが、マンションの買主にリフォームをお任せする事で、実質工事の回数を減らし、結果、内部破損(水漏れ・カビ・断線による停電など)のリスクを減らすことができます。
それでもリフォームしておきたかったら
それでもリフォームしたい場合には、トイレだけリフォームするのはいかがでしょうか。
中古マンションの購入者は、どんなにリフォームしない人でも、トイレだけはリフォームを検討します。
もし最初からトイレが新品にリフォームされていればどうでしょう?トイレが新しいだけでも嬉しいはずです。
まだ築年数がそれほど経っておらず、タンクも便器も充分使えるのならば、「ウォシュレットの便座」のみ交換という手段もアリです。
新しい便座だけを買っておき、マンション売却時に未使用のまま購入者にプレゼントするのが良いでしょう。
「トイレの便座プレゼント」はちょっとした工夫ですが、トイレ全体をリフォームするよりは費用が安く済みますし、問い合わせ増という効果が期待できます。
売却をやめて賃貸にする場合は
一旦は売却を検討し、査定もしてもらったものの、売却を取りやめて貸すことにする場合もあるかと思います。その場合は、考え方を180°変えましょう。
中古マンションを人に貸すときは、貸す前にリフォームすべきです。
賃貸マンションでは、借り手が勝手にリフォームできないからです。
借り手の立場からすれば、自分でリフォームできないのであれば、既に貸主でリフォームしてくれている物件を借りる方が快適に暮らせます。
またまた筆者の体験談で恐縮ですが、築年数が15年以上の物件では水回りを中心に不具合が出てきます。トイレや給湯器が故障しても一度大家さんに話を通さねばならず、不便を感じることもありました。
その点、水回りだけでも最新のものにリフォームしてくれていると、故障などに振り回されることもグッと減りますので、借り手としては助かります。
また、電力会社に要相談となりますが、同じく築年数によっては電気のアンペア数の見直しも必要になるでしょう。最近では意外と多くの生活用品が電気に依存していますので、ブレーカーがすぐに落ちてしまうようなマンションには借り手がつきにくくなることも考えられます。
気になるのは費用面ですが、リフォーム費用は毎月の家賃から回収することもできます。通常のアパートでも空室対策としてリフォームは良く行われています。
中古マンションを売却する場合は必ずしもリフォームをする必要はありませんが、賃貸する場合はリフォームをするようにしましょう。
より良い査定を勝ち取るために
以上、ここまで中古マンションの売却時のリフォームについて、買主の立場に立って見てきました。そして売却をやめて賃貸に出した場合についても触れました。
ところで、生活していく以上、室内にある程度傷が付いてしまうのは避けられません。建具も棚板が曲がったりといったこともあるでしょう。
住んでいるときは目をつぶることができていた傷や痛みですが、売却するときにはどうすれば良いでしょうか?
結論から言えば、「査定前後に修理」しましょう。
先ほどから何度も「中古マンション売却時のリフォームは不要」とお伝えしていますが、やはり直しておけるものは直しておくのがベターです。
そうしないと、綺麗に使っていないということで、査定に響く恐れがあるからです。
ただ、中古マンションの場合、例えば床に家具を置いた跡の穴がある、網戸に一部穴が開いている等の軽微な傷や痛みに関しては、修理は不要です。
こういった軽微な損傷は、最終的に買主の「容認事項」ということで整理して売却を行います。
つまり、細かいことは買主に我慢してもらうということです。買主が購入後にリフォームを考えているかも知れませんからね。
一方で、買主にも我慢できない部分はあります。例えば、窓ガラスが割れている、玄関扉が閉まらない、お湯が出ない等々の重大な損傷を抱えているものに関しては、通常は到底容認できないでしょう。
このような重大な損傷は修理しないと売却できませんので、査定を依頼する前に、一度ご自分の目で修理が必要な箇所を確認しておきましょう。
その一手間がより有利な条件の査定額を勝ち取ることにつながるのです。
ではどこからが修理すべき箇所で、どこまでが容認事項なのか?
これは売主と買主の力関係が大きくものを言います。
例えば、非常に立地が良く希少性の高い中古マンションであれば、「ぜひ欲しい」という買主が現れます。
「ぜひ欲しい」という状況であれば、買主は多少の不具合があっても手に入れたいと考えます。
この場合、容認事項の範囲は広くなります。
一方で、条件があまり整っておらず、なかなか売却できないような中古マンションであれば、売主が「頼むから買ってください」という物件になります。
「頼むから買ってください」という状況であれば、ほとんど容認事項がなく、売主側自ら網戸の穴ですら修理しなければいけないかもしれません。
なお、容認事項にできるかどうか、それとも修理すべきかどうかについても、査定依頼の際に複数の不動産査定会社に意見を聞きながら決めていくことをオススメします。
微妙な損傷については、査定会社によっても意見が分かれます。
修理についても、できるだけ多くの査定会社の意見を聞いた方が、客観性が高まります。
一括査定サイトから問い合わせをして訪問査定を受けた際、気になる箇所を修理すべきかどうかについても、同時に確認するのが良いでしょう。
まとめ
以上、中古マンションを売却する際にリフォームはするべきなのかについて、買主の立場に立ってお伝えしてきました。
リフォームは、何をどこまでやるかによって、大きくリフォーム代金が変わります。売却にあたってはリフォームをする必要はありません。
修理すべきかどうかについては、複数の不動産査定会社に意見を聞きながら、決めることをお勧めします。