相続などで既存不適格物権を所有することになったとき、売却することができるのか気になるところかと思います。
既存不適格物権は、売れにくい傾向にありますので売却のポイントを必ず抑えておきましょう。
今回の記事は、こんな方に向けた記事です。
・既存不適格物件を売却したい
・既存不適格物権を所有することになった
・既存不適格物件とは何かを知りたい
既存不適格物件は売却できる?
売却は可能だが買い手がつきにくい
既存不適格物件とは、建物が建築された時点では法に適合していたものの、法律が改正されたことによって適法でなくなってしまった物件です。
法律に適合していないので売却出来ないのでは、と心配になるかも知れませんが、売却することは可能です。ただし、既存不適格物件は通常の物件と比較すると買い手がつきにくい傾向にあります。
買い手がつきにくくなる理由は主に以下の2点です。
・融資が受けられない可能性がある
既存不適格物件は金融機関からの融資が受けられない場合があり、買主が限定されてしまいます。融資が受けられないと現金で購入しなければいけなくなるため買いたくても買えないという状況が生まれます。
融資が絶対に受けられない、というわけではありませんが、受けにくくはなります。既存不適格物件は、積極的に法律違反を犯したわけではありませんが、不可抗力でも法律に適合していない事には変わりはありません。条件は金融機関次第ですが、例えば容積率オーバーが1割未満など、不適格の程度によって融資が可能な場合もあります。ただしもし仮に融資が受けられるとしても、担保価値が低いと評価されるため金額はかなり下がってしまう可能性があるでしょう。
銀行によっても受けにくい場合があります。例えばメガバンクや日本政策金融公庫で融資が受けられる可能性はほとんどないと考えておくべきでしょう。ノンバンクの場合は既存不適格物件でも融資が受けられる可能性がありますが、金利や返済期間などの条件はメガバンクより厳しいものとなります。
・大規模なリフォームや改修がしにくい
一定規模以上のリフォームや増築などを行う場合には一部緩和規定はありますが、原則は建物全体を現行の法律に適合させる必要があります。
例えば新たに防火規制区域に指定されたため既存不適格となっている物件は、増築するにも構造から変更しなければならないなど大規模な改修が必要となってしまいます。そのため、結局増築自体を諦めざるを得ないといった状況に陥る可能性もあります。
将来的に改築や増築がしにくくなる事で買い手が慎重になる事が考えられます。
既存不適格物件は値下げして売却した方がいい?
既存不適格物件は前述の通り買主がローンを組みにくいため、買い手がなかなかつかない状況が考えられます。もちろん既存不適格という事を隠して売却する事はできません。既存不適格物件の売却には告知義務があります。
ですから売却を考えている場合は、相場よりも値下げした価格の方が売れやすくなります。
ただし、アパートなどの投資物件に絞って考えてみた場合、既存不適格物件であっても駅から近く立地が良い物件は、必要以上に弱気になって値段を下げ過ぎてしまわない方がいいでしょう。
立地が良い既存不適格物件であれば出口戦略も描きやすくなります。
客付けにもそう困る事はありませんし、既存不適格物件であっても家賃を相場より低くして貸し出す必要はありません。購入後数年間経営して家賃収入を得た後、更地にすれば高値で売却が期待できるでしょう。割安で購入しやすい既存不適格物件をお得に仕入れて利益をあげたいと考えている投資家は多くいるからです。
ご自身の既存不適格物権にどの程度の価値があるのかは、不動産会社に判断してもらう必要があります。一括査定サイトを活用して、売却査定額を確認してみましょう。
既存不適格物権は、腕のある不動産会社でないと売却することが難しいですので、査定サイトで複数の不動産会社を比べてみて信頼できる会社に売却の依頼をしてみてください。
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既存不適格部分の是正で通常物件として売却できる場合も
既存不適格物件となっている事由によっては、是正する事が出来れば、適法の物件として通常通り売却出来る場合もあります。
例えば、接道義務で2mに満たないため再建築不可の既存不適格物件となっている場合は、2mに欠ける部分だけ隣地から買取る事が出来れば再建築が可能になります。通常の物件と同様ですので売却もしやすくなるでしょう。
既存不適格物件を相続するときの注意点
大規模改築するとき
既存不適格物件は、相続して所有することや、そのままの状態で利用するには特に問題ありませんが大規模改築などで建築確認申請が必要とされる場合は注意が必要です。
建築確認を自治体に申請すると、「都市計画法」「建築基準法」が審査されます。
既存不適格物件で大規模な増築を実施する場合は遡及の免除がなくなり、法に合致した建物にする必要があります。
ですから、建築許可を得るために法に適用させるための工事を追加しなければならないのです。大規模な追加工事が必要となる場合は計画以上の費用や工事期間がかかる可能性があります。コストがかかりすぎるため最初の計画していた工事を断念しなければならない場合も考えられます。
建物の用途を変更するとき
例えば既存不適格物件のテナントビルの1階にある事務所を飲食店へ変更するといったような用途変更の場合は確認申請が必要となります。
ただし、以下の2つの場合は、確認申請が必要ありません。
・規模が200㎡以内の変更
・類似用途への変更
既存不適格物件とは?既存不適格物件の予備知識
既存不適格物件とは?違法建築物件との違い
既存不適格物件は、法に適合していない建物ですが「違法建築」とは異なります。
違法建築は、建築時点ですでに法に適合していない建物、建築した時点で合法でも違法な増築や改築を行っている建物です。違法建築の場合、物件の所有者には行政の改善指導や撤去命令を受ける場合があります。
一方、既存不適格物件の場合は所有していても、著しく危険で有害な場合を除いて改善の指導や除去命令はありません。自分で住む以外にも、賃貸物件として他人に貸し出す事も問題ありません。先述の通りもちろん売却も可能です。
既存不適格物件となる原因
建築基準法が制定されたのは1950年(昭和25年)、都市計画法が制定されたのは1968年(昭和43年)です。以来、耐震基準や日影規制など、建築に関する法律は何度も改正され続けています。
新築当時は適法でも、法の規制は安全性の問題点などがあるたびに変わっていきます。現行法に合致しなくなる既存不適格物件が生まれてしまう原因です。ですから所有者も気がつかないうちにいつの間にか既存不適格物件となっているケースも多くあります。
例えば1981年には耐震基準の大きな改正が行われたため、それ以前の建物であれば、新耐震基準を満たしていない場合があります。
20年前の法律では適法だった建物でも、その後20年間の改正や追加された規定にすべて合致するのは到底無理な話です。そのため既存不適格物件では過去にさかのぼって法律の効力を適用する「遡及」が免除されています。既存不適格物件でも所有して利用している分には特に問題がないとされるのはそのためです。
既存不適格物件の要因となる法改正
既存不適格物件の原因となる主な法改正について見ていきましょう。
接道義務や耐震、昇降機については建築基準法の改正です。それ以外は地方自治体の都市計画の改正の影響によります。
接道義務規定
建物は建築基準法で定められた道路に2m以上接していない場合は建設出来ません。
建築基準法によって接道義務が定められたのは1950年(昭和25年)ですので、施工前に建てられた建物は既存不適格物件となり接道義務規定は適用されません。ただし、壊して建て直す事は出来ない「再建築不可物件」となります。
用途地域の変更や基準の変更
用途地域は用途や利用目的に応じて区別して区切ったエリアのことです。13種類の地域に分けられ、それぞれに建てられる建物の種類や大きさに決まりがあります。
およそ5年に一度、各自治体が都市計画法に基づいて見直しを検討します。その見直しのタイミングで、建物が建っている地域の用途地域が変更になって既存不適格物件となるケースがあります。また、用途地域に変更がなくても、制限が追加されたり厳しくなったりする場合もあります。
建ぺい率や容積率の基準
用途地域ごとにどれくらいの規模の建物が建てられるかの基準である建ぺい率や容積率が決められています。
・絶対高さに関する制限
低層住居専用地区では建物の高さに制限があり、10mまたは12m(都市計画で規定)より高い建物は建てる事ができません。
・高度地区の制限
高度地区には最低の高さと最高高さに制限があります。最高高さの制限は2004年(平成16年)に新たに定められ、高さの基準は各自治体により異なっています。
・北側斜線規制・日影規制
北側斜線規制や日影規制は、採光や通風を守るために用途地域によって建てられる範囲や建物の高さが制限される規制です。1970年に第1種・第2種住居専用地区での北側斜線規制が強化され、1976年には日影規制が創設されています。
景観地区の制定
2005年(平成17年)に景観法が施行され、都市計画区域、準都市計画区域内に景観地区を設定することができるようになっています。景観地区は市街地の美観を形成することを目的として定められます。定められたエリアで建築を行う場合は建築物の面積や高さなどが制限され、従わない場合には是正命令や罰則が与えられます。景観地区に新たに指定されたエリアに元々建っていた建物が既存不適格物件となる場合があります。
防火地域・準防火地域
市街地での火災被害拡大を防ぐ目的で、主に駅前など建物が密集する地域や、幹線道路の周辺などが指定されます。エリアの指定は各自治体が行い、用途地域と同様に一定期間で見直しが行われます。指定地域に建物を建てるには、防火や耐火の基準を満たす建物の構造や材料にする必要があります。防火エリアが見直され、耐火基準を満たしていない建物が既存不適格物件となってしまう場合があります。
耐震基準
大きな地震が起こる度に、耐震基準は改正されています。もっとも大きな改正は1981年(昭和56年)の改正で、以降を新耐震基準、以前を旧耐震基準として大きく区別がされています。新耐震基準では震度6強から7以上の揺れでも倒壊しない構造基準が求められるようになっています。1981年以前の建物は既存不適格物件となる可能性があります。
昇降機の安全基準
建物内の設備では、エレベーターやエスカレーターに関して2014年(平成28年)に建築基準法が改正されています。地震時や故障時の安全装置の設置義務化などの安全基準が追加されました。改正が2014年なので比較的新しい建物でも既存不適格となるケースが多いため注意が必要です。
まとめ
既存不適格物件を相続した場合、売却することは可能ですが、非常に売れにくい傾向にあります。
特に築年数が古い建物の場合は、買い手が見つからずに更地にしてからでないと売却できないケースも多々見受けられます。
まずは、既存不適格物権の売却が上手な不動産会社を一括査定サイトで見つけてみてください。