古いアパートを相続した時に、老朽化が進んでいて賃貸収入は見込めない場合も少なくありません。
「相続したアパートを取り壊したいが取り壊し費用はいくらかかるのだろう」
「相続アパートは取り壊すと税金対策ができなくなるの?」
といった疑問に不動産会社のスマートアンドカンパニーが解説していきます。
「アパートを相続したときの相続税はいくらか知りたい」「アパートを相続した時にはどんな節税対策があるの?」という場合には、以下の記事を合わせて読んでいただくとより理解が深まります。
相続アパートの取り壊しは相続税節税ができないケースもある
相続したアパートをすぐに取り壊してしまうと相続税節税の特例が適用されない場合があります。
「どのような場合に特例が適用されないのか」「取り壊すことができるのはいつなのか」解説します。
相続アパートを取り壊して相続税節税の特例が適用されないケース
相続したアパートを取り壊して他の賃貸事業を行う場合
例えば、アパートを相続したものの、老朽化のため取り壊したとします。そして駐車場経営を始めたとします。アパートとして賃料収入を得ていたものを、土地を所有したままにして駐車場として貸付事業は継続するという考えです。
「形は変えたけど賃貸事業を引き続き行っているため、良いのではないか?」と思いますよね。
しかしこの場合ですと、相続税の節税対策に有利な小規模宅地等の特例は受けることができません。
小規模宅地等の特例は、貸付事業をそのまま引き継ぐことが前提とされています。
そのため、アパートだった土地を仮に駐車場と変えて経営した場合には、「事業が変更された」と見なされてしまうのです。
貸付事業で小規模宅地等の特例を受けるためには、相続以前の事業を継続しなければいけませんので、アパート経営を続けることが条件となります。
小規模宅地等の特例を受けるためには、相続税の申告期限までは事業を継続している必要があります。
相続したアパートをすぐに取り壊して売却するとき
相続税の申告期限まで、土地を保有し相続以前から続く貸付事業を継続していることが小規模宅地等の特例を受ける条件です。
そのため、相続したアパートをすぐに取り壊して売却をすると、特例を受けられなくなります。
また、相続したアパートをすぐに売却すると「租税回避行為」と見なされる場合があります。
租税回避行為とは、意図的に相続税を逃れることを指します。税務調査があれば指摘され、否認されることが多いです。
租税回避行為は、税法上でどのような行為が該当するかは明言されていませんが、「通常適用される法形式による課税要件の充足を免れ、税負担を軽減・回避する行為」とされています。
租税回避行為と見なされると節税にはあたらず、脱税とみなされてしまいます。
租税回避行為の疑いを免れるためにも、相続アパートは一定期間保有しておく必要があります。
保有が必要な期間は、は、相続が生じてから相続税の申告までの10か月プラス、一般的な税務調査機関である3年を加味したおよそ計4年と考えていただければ良いでしょう。
その後売却活動を進めるようにしてください。
相続アパートを取り壊して相続税節税の特例が適用されるケース
相続アパートを取り壊してアパートを新築するとき
相続したアパートを取り壊して、新たにアパートを建て賃貸経営を継続しようという場合には、相続税節税の面で大きなメリットがあります。
相続したアパートがとても古く、空き室が多かった場合には、賃貸割合が低く、相続税の節税効果としてはあまり期待できません。賃貸割合が多い方が相続税を節税することができるのです。
空室が多い時には、相続したアパートを建て替え、管理会社とサブリース契約を結ぶと空室があったとしても、賃貸割合は100%で計算することができます。
相続したアパートは取り壊して建て替えますが、事業を継続しますから小規模宅地等の特例が適用できるようになります。
次に、建て替える前から賃貸契約を結んで住んでいる人がいることで、貸家建付地評価を行うことができ、さらなる節税につながる可能性も広がります。ただし、相続したアパートに入居者がいない場合には、貸家建付地評価を行うことはできず、自用地評価となります。
貸家建付地評価が適用されるためには、以下の条件があります。
①建て替える前の賃借人が建て替え後にも入居することになっていること
②立退料は支払っていないこと
③敷金などの支払いがあり、契約が成立していること
取り壊して建て替え中のアパートを相続したとき
建て替え途中であっても、上記の「相続したアパートを取り壊してアパートを新築するとき」と同様に相続をした時点で賃貸契約があり、賃借人がいるということが節税のポイントになってきます。
相続税を節税するためには、建て替え途中も同様に、今後も同様の賃貸経営を継続すること、すでに契約している賃借人がいることなどが重要です。
相続アパートの取り壊しにかかる費用は?
相続した木造アパートの解体費用
木造のアパートの場合、解体費用は建物の構造や大きさによって変化します。
2階建てアパートであれば1坪あたり3万から4万円、3階建てアパートであれば1坪あたり6万から8万円が相場です。
これらの費用は養生費なども含まれた金額です。解体費用には本体取り壊し費用だけでなく、廃棄物の処分費用、近隣への配慮に関わる費用なども含まれています。
アパートの立地条件によっても解体費用は変わってきます。解体工事や車両が出入りする際に通行人の妨げになる場合には、警備員を雇う必要がありますから、人件費の分価格が上がります。
アパートまでの道幅が狭いなど、車が通れない立地にある場合も注意が必要です。道幅が狭いと、工事車両が通れず手作業で行う範囲が多くなり、費用も大きくなります。
その他にも、隣の建物と極端に近い、電柱や電線が近いといった場合も作業がしにくくなりますので費用が上がります。
古いアパートの場合アスベストの問題があればそれもまた計上されます。解体するアパートの状態によって、解体費用は様々です。解体の場合にも、ぜひ複数社の見積もりを取り、最も条件の納得できる業者に依頼することをオススメします。
木造アパートの解体費用をおさえるポイント
相続アパートの状態によっては高額になってしまう解体費用ですが、自治体が行っている補助金を活用すればある程度おさえることができます。お住まいの自治体によってはやっているものとやっていないものがあります。相続アパートの解体を検討されている場合には、自治体に相談し、どのような補助が受けられるのか確認してください。
「都市景観形成地域老朽空き家解体事業補助金」
長年手入れをしていない建物の場合、不法侵入や放火など犯罪が起こる危険性があります。また、倒壊しないとも限りません。「都市景観形成地域老朽空き家解体事業補助金」とは老朽化が進んだ家屋の解体を補助する制度です。補助金額が自治体によって異なりますから、お住まいの自治体に問い合わせましょう。
「老朽危険家屋解体撤去補助金」
「老朽危険家屋解体撤去補助金」も老朽化が進み倒壊の恐れがある建物に対して適用される制度です。一部の自治体で行われていますから、ご自身の自治体で取り扱いはあるかどうか確認してみてください。
「建て替え建設費補助金」
条件はありますが、大きな補助金が受けられる制度です。自治体に「建て替え建設費補助金」が利用できるか確認しましょう。老朽化の進んだアパートを、集合住宅に建て替える際の、建築費用や解体工事費用の補助を行ってくれます。ご自身の相続アパートが、対象となる建築物であるか?や、建て替えに対する要件は自治体によって違います。こちらも自治体に相談してみましょう。
相続アパートを取り壊し更地にしたら売却価格は高くなる?
築年数30年以上の相続アパートは更地にして売却した方が良い場合も
築30年以上のアパートの場合、かなり老朽化が進んでいるとみなされます。
ほとんどのアパートの耐用年数は10〜20年と言われています。30年以上経過すると、建物自体も古くなりますし、何より内装や設備に古さが感じられてしまいます。
そのため、築30年以上のアパートは残念ながら建物としてほとんど価値がない状態となってしまいます。
この状態から、お金をかけて修繕やリフォームを行い、アパートを再生しようと考えると、莫大な投資になってしまいます。
築30年以上のアパートの場合は、状態にもよりますが、解体して土地として売却した方が高く売れて、得をする場合もあります。更地だと解体費用をかけずにすぐに新しい事業を始めることができるので、好まれます。
相続したアパートをリフォームして活かすか、解体して更地にしたほうが良いのか判断は専門家に判断を仰ぎましょう。不動産会社で査定をとってみて、相談することをおすすめします。
立地条件や、土地の特性などから、どのような形で売却するほうが得なのか判断してもらうことができます。
以下はおすすめの不動産査定会社ですので参考にしてみてください。
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古いアパートを更地にする場合の注意点
古いアパートを取り壊して更地にした場合以下2つの注意点があります。
1.固定資産税の負担が最大で6倍に増える
2.新しい家が建てられない土地と定められていることもある
固定資産税は、更地の場合とても高額になります。更地にしてしばらく持っておきたいという場合には注意しましょう。できれば、早急に売却を行ったほうが、税金を支払う金額は少なくて済みます。
また、相続した土地が、「市街化調整区域」となっていて、新築の家を建てられない場合もあります。他にも、建て替えても良いが高さに制限があったり、これまで住んでいた家族に限るなど、様々な条件がある場合もあります。このことを公法上の規制と言います。土地を査定する際にも重視されるポイントです。
家を解体する場合には、再建築が可能かどうか調べておく必要があります。相続したアパートの区域が、新築は可能か?家族以外が入居しても良いのか?は売却する上で重要な課題となりますから、建築条件についてもこちらもお住まいの自治体へ確認をしましょう。
まとめ
相続したアパートを、すぐに取り壊してしまうと、小規模宅地などの特例を受けられなくなってしまいますから注意してください。収益が見込めない場合でも、節税対策のため3年10か月はキープしておきましょう。古いアパートを相続した場合でも、土地の価格はある程度まとまった金額を査定されると思います。土地の査定には、最寄り駅までの距離、土地の形状、接している道路の道幅、接する道路に対して間口は十分にあるか奥行はあるか、また角地かどうかなどが査定の際に見られるポイントです。土地が高く査定されれば、土地にかかる税金もけして馬鹿にできない金額になってしまいますから、積極的に節税に取り組みましょう。解体費用も、相続したアパートの立地条件などによって大きく変動していきます。アパートを相続して負担になってしまわないよう、最善の道を探してみてください。