「古い実家を相続した」「老人ホームへ入所した」「転勤で住まなくなった」など、よくある様々な理由から、空き家をどうしたらいいのかと悩むケースが多いです。
空き家を放置したままにするとどうなるのか、所有している古い空き家を手放したい場合の解決方法を不動産会社スマートアンドカンパニーが解説します。
以下のポイントを解説した記事です。
・空き家を放置していると受ける罰則
・空き家を手放したいときの解決方法
・空き家を解体したいときの費用の補助制度
Contents
空き家を放置しているとどうなるの?罰則はある?
空き家の管理を怠り放置していると指導が入る
売却や賃貸に出されずに長期間放置されている空き家は年々増加しています。2019年の総務省の住宅・土地統計調査によると、賃貸や売却に出されていない空き家は 348 万7千戸で総住宅数の5.6%を占めています。2013年と比較して9.5%増加しています。特に多いのが、高齢の親が住んでいた住宅が様々な理由から空き家になってしまうケースです。
放置されたままの空き家は、近隣の住民に深刻な影響を与える心配があります。具体的には、老朽化した建物の倒壊や、放火による火災、ゴミの不法投棄、景観の悪化が挙げられます
「空家等対策特別措置法」によって、所有者は空き家を適切に管理することが義務付けられています。そして放置されたままの問題ある空き家には行政の介入が認められています。
法律施行前は、空き家の立ち入りには所有者の許可が必要でしたが、施行後は所有者の許可無く自治体が調査出来るようになっています。
調査の結果、「特定空き家」に指定されてしまうと、行政からの助言や指導を受ける事になります。指導を受けても改善出来ない場合は以下のような罰則が課せられる場合があります。
特例が受けられなくなり固定資産税が高くなる
建物が建っている土地には、固定資産税を減額する特例があります。特定空き家に指定されて改善を勧告された場合は、減額の特例を受ける事ができません。翌年から固定資産税の支払額が増えることになります。
行政の勧告、命令を放置した罰金
所有者には法に基づいた改善が求められますが、改善に応じずに空き家を放置したままにすると、最大50万円の罰金が科せられる場合があります。
加えて、行政代執行により行政が所有者に代わって建物の解体やゴミの撤去などを行う事も可能となっています。行政代執行は特に緊急性が高い場合に行われますが、解体などに掛かった費用は、所有者に請求されます。税金の滞納と同じく、支払えない場合は不動産など財産が差し押さえられる事になります。
一度「特定空き家」に指定されても、行政からの指導や助言を受けた箇所を修繕したり改善したりすれば、指定は解除されます。
放置されていると判断される空き家の特徴
「空き家」などに該当する家屋のうち、適切な管理がされていない危険な空き家として「特定空き家」に指定されるのは次のようなケースです。
・屋根や壁、窓などが損壊している、建物が傾いているなど危険な家屋
・草木等が生い茂っている、廃棄物が投棄されて衛生環境が悪化している
・立木の枝などが道路にはみ出している、多数のネズミやシロアリが発生しているなど、周辺の生活環境の保全のために放置することが不適切な状態
・外壁などが落書きや汚物などで外見上傷んでいるなど景観を損なっている状態
空き家の適切な管理方法
住まなくなった家でも、定期的に手入れをするなど管理ができていれば問題はありません。
1年に1回以上は様子を見に行き空き家の状況を確認しておくことが必要です。
所有者が気をつけておきたい部分を具体的に以下に挙げておきますので空き家を管理する際に参考にしてみてください。
定期的な室内の換気・清掃
長期間人が住んでいない家はカビが生えやすくなり老朽化が早まります。天気の良い日に全ての窓を開けてしっかりと時間をかけて風を通すとよいでしょう。
収納の扉なども忘れずに開けておきます。
雨漏りのシミなどがないか天井の状態も確認しておきましょう。雨漏りを放置すると家全体が腐ってしまうため見つけた場合は早めの対応が必要です。
敷地内の見回り
敷地内にゴミが投棄されていないか、落ち葉などが散乱していないかなどを確認します。捨てられたゴミを放置したままにしておくと、不法投棄がさらに増える原因になりますのでしっかり片付けておきましょう。また、庭木が伸びすぎて隣家や道路にはみ出している場合や倒れる危険性がある場合は必ず早めに対応しましょう。
近隣の方への挨拶
管理されていない空き家は付近の住民から行政に通報されるケースもあります。
近隣の方へ不安を与えないような配慮も大切でしょう。隣家などへ迷惑を掛けていないか、治安に問題がないかを確認する意味でも、機会があれば挨拶をしておくのがおすすめです。
遠方に住んでいる、病気で入院中のため動けないなどといった事情から定期的な管理を行う事が難しい場合もあるでしょう。所有者自身が頻繁に行かれない、頼れる親類や知り合いもいないという場合は、費用はかかりますが空き家管理を代行してくれる会社もあります。
放置している空き家を解体するときの解体費用の補助
放置した空き家の解体には自治体の補助がある
家が傾いていたり土台や柱が腐っていたりするなど、明らかに危険な空き家は解体を考える必要があるでしょう。ただ、空き家を放置することが問題だと分かっていても、解体費用を考えるとなかなか踏み切れない方もいらっしゃるかもしれません。
危険な放置空き家を解体する際は、解体費用の一部を自治体から補助金、助成金として受けられる場合があります。限度額はありますが工事代金の1/2までが助成されるケースが多いようです。
地域や建物が面している道路の幅などによっても費用は異なりますが、解体にかかる費用の目安は木造では坪あたり3~5万円程度です。延床面積が20坪の木造の空き家では、およそ100万円程度の解体費用がかかる計算です。
空き家の解体に費用面で迷っている場合は、補助を受けられるかどうか自治体に確認してみることをおすすめします。
例として補助金制度がある自治体についていくつかご紹介しておきます。
「空き家に対する解体助成制度」神奈川県横須賀市
老朽化や痛みの激しい空き家で市内の解体工事業者による解体工事が行われる事を条件に、解体工事費用の1/2(上限35万円)を助成する制度。対象の空き家には市職員の老朽度判定が必要です。
旧耐震基準の空き家で5年以上使用していない空き家の解体は、上限15万円まで補助金が受けられます。
「老朽危険空き家の除去工事費助成金」東京都杉並区
特定空き家および特定空き家に準じる住宅と判定された個人所有の空き家に対して、除去工事費80%(限度額150万円)が助成されます。
「危険空き家除去支援補助金」新潟県糸魚川市
市内の1年以上使用していない危険な空き家の解体に除去費の1/2(上限額50万円)が補助されます。
「空き家解体費用の補助」東京都福生市
1年以上居住されていない住宅や、1/2以上の居住していない住戸がある共同住宅の解体費用の1/2が助成されます。戸建ては30万円、共同住宅は1棟あたり100万円が上限となっています。
自治体から助成金や補助金を受けるには、解体する前にまずは適用が受けられるかどうかの確認が必要です。工事が終わった後で申請することは出来ませんので、制度が利用出来そうであれば、解体する前に役所に相談しましょう。
助成金などがあるかどうかや、受けられる条件、金額などは各自治体によって異なります。最新の情報はホームページや役所の窓口で確認するようにしてください。
また、空き家を解体した後は、1ヶ月以内に建物の滅失登記をする義務が法律で定められています。滅失登記の申請が出来るのは、所有者本人、共有名義人、相続人です。
司法書士に依頼することも出来ますが、依頼の費用がかかります。滅失登記の申請自体はそれほど難しくない手続きですので、本人が申請すればその分費用を抑えることができます。
空き家は放置しないで売却した方がいい
相続して3年以内の売却なら所得税が抑えられる
令和5年年末までの期限付ですが、築40年以上の相続空き家を売却した場合、譲渡所得税の優遇が受けられる場合があります。
「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」です。
相続で取得した空き家を売却し、一定の適用条件に当てはまれば、譲渡所得金額から最高3000万円まで控除できる特例です。
特例の対象となるのは以下に挙げた3つすべての条件に当てはまる相続空き家です。
・昭和56年5月31日以前に建築された家屋
・建物に区分所有建物登記がされていないこと
・相続直前に被相続人が1人で住んでいた
建築基準法が改正される前の旧耐震基準で建てられている家屋が対象です。また、要介護認定を受けて相続の直前まで高齢者介護施設などに入っていた場合には特例の対象となります。
上の条件に当てはまる空き家を売却して特例を受けるための要件は以下になります。
・相続開始から3年経過する年の12月31日までに売却すること
・相続時から売却まで、家屋が事業や賃貸に利用されていないこと
・売却代金が1億円以下であること
空き家付きで土地を売却する場合は、一定の耐震基準を満たしている必要があります。指定検査機関に依頼し耐震基準の審査を受けます。基準を満たしていない場合はリフォームが必要です。
建物を解体して更地で売却した場合でも、要件に当てはまれば適用が受けられます。審査依頼費やリフォーム代、耐震基準適合証明書取得費などを考えると、空き家は解体して売却した方が現実的でしょう。
■賃貸に出した空き家は適用が受けられない
相続した空き家を賃貸に出してしまうと、売却時に特例の適用が受けられなくなりますので注意しましょう。
■自宅を売却した場合の特例は併用できる
相続した空き家を売却した年と同じ年に自宅も売却した場合は、自宅の売却に適用される3000万円の特別控除と空き家の特別控除の特例は併用することが出来ます。
ただし、併用する場合は適用出来る金額に制限がある点には注意が必要です。
それぞれ適用要件を満たしていれば自宅と相続空き家どちらも控除が適用出来ますが、両方あわせて最大6000万円まで控除が受けられるわけではなく、両方で3000万円までの控除となります。
どんな空き家でもプロに任せれば売却できる
離れて暮らしていた親の家を相続した場合などは特に、空き家の適切な管理が難しく負担も大きいため、不動産のプロに相談して早めに売却した方が良いでしょう。
最近では、インターネットから簡単に不動産会社へ売却査定を申し込むことができるようになっています。仲介による売却だけでなく、買取業者へ売却を検討している場合も利用する事ができます。ネット上で不動産の売却査定依頼が出来る一括査定サイトは、物件の所在地などの情報を入力すれば物件の仲介や買取が可能な複数の不動産会社が紹介される仕組みです。登録されている不動産会社からサイト側に料金が支払われるため、利用者側の料金負担は一切ありません。
空き家の売却に最適な不動産会社を選ぶには、1社だけではなく複数の会社へ査定を依頼するのがおすすめです。査定額や各社の対応などを比較して、信頼出来そうな不動産会社を選ぶようにしましょう。
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空き家を放置していて事故が起きた場合に支払う賠償金
放置したままの空き家に生じるリスクとして最も怖いのは、第三者に深刻な被害を与えてしまうケースです。
民法717条では、「建物等の土地の工作物の所有者は、工作物の占有者が損害賠償責任を負わないとき、設置又は保存に瑕疵がある限り、過失の有無に関係なく、損害賠償責任を負う」と定められています。
空き家は占有者がいないため、損害賠償責任を負うのは土地の所有者になります。
空き家が損害を及ぼして実際に所有者に損害賠償が命じられた以下のようなケースもあります。
除雪を怠ったことによる隣家家屋の倒壊・死亡事故(金沢地裁/昭和32年3月)
除雪をしていなかった空き家の屋根から崩落した積雪が、隣家と家財を壊して隣人を圧死させたケースでは、建物・家財の損壊や、死亡した住民の葬式費用などの損害賠償が命じられました。大卒初任給1万円程度の時代に68万円の損害賠償が認定されています。
豪雨で石垣が崩壊し隣家が全壊(広島地裁/平成10年2月)
豪雨で石垣が崩壊して隣家が全壊したケースでは、降雨量が数十年に1度はありうる程度であり不可抗力にはあたらないこと、所有者が石垣の全面的補修を行っていれば崩壊を防げたとして、建物の損害、家賃、引越し代、慰謝料など計364万円の損害賠償を命じられました。
日本住宅総合センターによると、空き家が原因で発生する被害に対する損害賠償金額は、数千万から億を超えるという試算結果も出ています。
想定事例 | 前提の被害モデル | 損害額の試算 |
火災による隣接家屋の全焼と死亡事故 | 築20年の隣家が全焼 老夫婦の死亡 | 物件損害:1,315万円 人身損害:5,060万円 合計額:6,375万円 |
倒壊による隣接家屋全壊と死亡事故 | 築20年の隣家が全壊 夫婦と8歳女児の死亡 | 物件損害:1,500万円 人身損害:19,360万円 合計額:20,860万円 |
外壁材落下の死亡事故 | 11歳男児の死亡 | 人身損害:5,630万円 |
まとめ
放置されたままの空き家には様々な問題やリスクが発生します。もちろん定期的な点検や確認を怠らず適正な管理が出来ている空き家であれば問題はありません。しかし費用などの都合で適正な管理が難しい空き家は、放置して状態が悪化してしまう前に早めに解体や売却を検討しましょう。解体費用の補助や、税制の優遇が受けられる場合もありますので、自治体や不動産会社などに確認してみると良いでしょう。