遺産分割の解除
遺産分割を決定した後、それを解除ことはできるのでしょうか?
はい。遺産の分割を取り消しすることや無効にすることはできるのです。
ただし、条件もなしに簡単に取り消しができてしまうと、それはおかしいですよね。遺産分割するためには、相続人となるひとが全員集まって、遺産分割協議をせっかくしたのに、それが取り消しとなってしまったら、時間と労力の無駄になってしまいます。
ですので、相続において、勘違いがあった場合のみできることとなっています。
例えば、遺言書があったにも関わらず、そのことを知らなくて、遺産分割協議が行われて、遺産分割が決定した後に、遺言書が見つかった場合などです。
もし、遺言書があることを最初からわかっていたのなら、遺産分割協議には応じなかった場合などは、遺産分割協議の決定に対して無効を主張することができます。
この遺言書があることを知らなかった・・という場合を法律の用語で錯誤と呼んでいます。ですので、この場合は、錯誤による無効という言い方をします。
他には、詐欺や脅迫などがあった場合には、取り消しや無効が可能となります。
遺産分割協議をするということは、相続人が複数いるために、各相続人の相続分を話し合うわけですが、この遺産分割協議を決定する際に、詐欺行為や脅迫があった場合は、この内容を取り消すことができます。
例えば、ひとりの相続人が、他の相続人の弱みなどにつけこんで脅迫して相続分を減らされたり、もしくは、相続財産の内容を改ざんし、うその内容を聞かされたことによって、相続分に対して承諾してしまった場合などは、遺産分割協議の決定事項を取り消すことができます。
上記のような詐欺や脅迫による取り消しや無効を主張する場合に、それを認めないという場合も考えられます。そういった場合は、遺産分割協議自体を無効とする確認の訴えをおこなうことができます。しかし、訴えたとしても、詐欺や脅迫の証拠がなければ、訴えが認められることがむずかしい場合が多いと思います。ですので、証拠を残すことはむずかしいかもしれませんが、やりとりを録音しておくなどしておくことが重要です。
相続が開始されること自体、身内が亡くなっているため、心身ともに疲労がたまるかと思います。しかし、戸数が多いマンション1棟などのたくさんの相続財産があるにも関わらず、相続人同士が、普段からあまり懇意にしていない場合は、相続は慎重にするほうがトラブルは防げるかと思います。
次に、遺産分割協議は、相続人全員が揃っていない状態で行われた場合、当然、無効となります。
ただ、相続人の中に、失踪者がいて、生存自体がわからなくて、失踪宣告された相続人がいた場合は、その失踪宣告された相続人を参加させることはできないため、当然その人なしで遺産分割協議はおこなわれます。しかし、その後、その人が見つかって失踪宣告を取り消ししたら、遺産協議の決定は無効となるでしょうか?この場合は、無効にはなりません。
他には、相続人全員が遺産分割協議をやりなおしたいという場合です。全員がやりなおしたいというのなら、特に問題は発生しないので、取り消しすることができます。
たくさんの財産がある場合、遺産分割協議は、スムーズにすすまないことも多いと思います。遺産には、マンションなどの不動産が含まれる場合も多いと思います。そのマンションに住まない場合は、売却しないと、保持するだけで固定資産税などの税金を払い続けなければなりません。これからの日本は人口が減ってきて、マンションの売却もむずかしくなってきます。住まないのに売却できないと、借金でもないのに、マイナスの財産になってしまいます。持ち続けると、減価償却され、土地の価格があがらないかぎり、価値はどんどん下がってしまいます。。。マンションなどの不動産などは、ふだんからどうするか考えておいたほうがよいかもしれません。
共同相続において、詐害行為の取り消しとなる場合
詐害行為、、これはどういうことかわかりますか?詐欺の字の詐が入っているので、詐欺みたいな意味に思いませんか?
詐害行為とは、債務者が債権者を害することで、自己の財産を減少や破産などをさせる法的な行為をいいます。
例えば、AさんがBさんに1000万円を貸してあげたとします。このときに、Bさんは1000万円の価値のある土地を第三者に贈与したとします。この場合、Aさんは、贈与するくらいなら、私にお金を返すべきなのにおかしいと思うと思いませんか?AさんはBさんが1000万円相当の土地をもっているからお金を貸したということもあるでしょうし。
もちろん、Bさんは自分の財産をどうしようが勝手といいますか、自由ではありますが、この場合は、ちょっと事情が異なります。なぜなら、この行為をすることによって、Aさんはお金を返してもらえなくなる可能性があがるからです。
ですので、こういった場合に、民法では、「ちょっと待った!」とAさんはBさんに贈与にストップということができます。つまり干渉できるのです。法律用語で、Aさんは債権者、Bさんは債務者といいます。
では、相続が絡んだ例をあげてみましょう。
AさんはBさんに1000万円を貸していたとします。Bさんは父親の財産がたくさんあるので、Aさんに、相続のときに返すからと話していたとしましょう。
Aさんは父親の財産が多くある為、相続をした時に返済すると言っていたとします。
しかし、父親が亡くなっても、Bさんはお金を返してくれませんでした。なぜなら、Bさんは相続人ではありましたが、他の相続人である母と兄がすべて相続をしてしまい、Bさんは、何も相続しなかったからでした。
お金を貸しているAさんからすると、Bさんに騙されたことになるわけで、Bさんは法定相続人ですし、相続財産もあるにもかかわらず、相続しなかったのであれば、Bさんは相続財産で返すといったのですから、うそをついたことになりますよね。ですので、相続財産からAさんはお金を返してもらうことは当然なことです。
ただし、Bさんが相続自体を放棄している場合は、詐害行為の対象とはなりません。また、詐害行為取消をするには、訴訟をしなければなりません。
親の財産があるから、、ということは、よく聞くような気がします。マンションを2棟も3棟も所有しているから、財産たくさんあるだろうと、普通は思いますよね。しかし、バブルと言われた80年代は不動産投資にお金がまわりました。今では考えられない利率でお金を借りている場合もあります。当然、途中で借り換えしているかとは思いますが。。
ですので、実際に相続することになったら、マンションの価値よりも借金の方が多かったということもあります。上記の場合は、財産があるにもかかわらず、受け取らなかったわけですが、マンションを所有しているだけで、財産があると思うのは、違う場合もあります。人にお金を貸す場合は、かなり慎重になるべきでしょう。
相続の承認
相続を承認する種類は、大きく分けて3種類あります。
1.単純承認
2.限定承認
3.相続放棄 です。
単純承認が一般的で、特に何もしない場合は、単純承認となります。
相続が、被相続人が亡くなったと同時に開始となるのは、前回お話ししたとおりです。また、相続人は、相続する権利を持っていますが、放棄する権利も持っています。
この相続人が相続するという意思を示すことは、相続の承認をすることになります。単純承認の単純という言葉が表すように、マイナスもプラスの財産もすべて相続することとなります。特に法的な手続きも必要ありません。ですので、相続を知った日から3か月後に、自動的に単純承認したこととなります。
では、限定承認とはどのようなことでしょう。
すべてを相続するわけではなく、限定して相続をするという承認方法です。
たとえば、財産がプラスとマイナスを計算すると、マイナスという借金の方が多かったとしましょう。その場合、3つめの相続放棄をしてもよいのですが、この場合、すべての財産を放棄しなけれななりません。ですので、限定承認は、プラスの財産でマイナスの財産を精算し、それ以上は負担しなくてよいという承認方法です。
単純承認というのは、相続の開始を知ってから3か月後に何もしないでいても、自動的に単純承認をしたことになるとお話ししました。つまり、何もしなければ、借金が多かったとしても、すべてを相続してしまうことになります。それは誰でもいやですよね。もちろん、相続人として債権者に借金は返すべきだと思う方もいらっしゃるかと思いますので、その場合は、よいですが、借金を返す財力がないにもかかわらず、借金を相続してしまったら、その相続した人が破産してしまいかねません。しかし、この3か月の間に、被相続人が相続財産をすべて把握することがむずかしい場合もあるかと思います。被相続人が相続人に生前、財産についてすべてを教えてくれていたらそうはなりませんが、何も知らなければ調べなければなりません。マンションを保有していれば、わかりやすいですが、土地だけをどこかに持っていたり、株などの金融財産を持っていた場合は、金融機関に問い合わせする必要があります。しかし、個人情報などによって、簡単にすべてを調べることはけっこう大変で、弁護士や司法書士に依頼してもらうこととなると、それなりに費用もかかってきます。
そんな場合は、とりあえず、限定承認をしておけば、マイナスの財産を相続することありません。ゆっくり調べることができます。ですので、財産の全容がわからない場合は、限定承認の手続きをすることをおすすめいたします。