民法における「契約」と「契約の解除」について

遺産相続の基礎知識

民法の契約


 契約とは、約束という意味で、法律の効果が発生するための、当事者間の合意によって成立する法律行為のことをいいます。ふだんから、契約という言葉は、よく使うかと思います。マンション売却・購入の契約という大きなものから、携帯電話の契約まで、いろいろあります。契約をする意場合には、契約書というものがあり、たいていの場合、そこに捺印をするかと思います。
 民法の契約は、意思表示だけでも成立します。契約のときに、一方が申し込みをし、相手側が承諾をすることによって契約が成立します。つまり、申し込みと承諾によって成立するのです。
 例えば、マンションを持っているAさんにBさんが、「Aさんのマンションを購入させてください。」と申し込みしたとします。それに対して、Aさんが、「承諾しました。Bさんに売却しましょう。」というと、民法での契約は、この時点で成約することになります。この法律行為の成立には、発言と意思が一致することが必要です。発言と意思が異なる場合は、意思表示の契約としては、制限がかかるときがあります。 
 つまり、脅迫されるなど、第3者から不当な干渉を受けて発言した場合は、瑕疵のある意思表示となります。
 発言と意思が一致すれば、何の問題もなく、契約は民法上は成立しますが、もし、契約をした後で、契約したどちらかが、契約を解除したいといった場合、困りますよね。いわゆる、口約束だけの契約が有効だとしても、契約の証拠がないと、契約をどちらか一方が守らなくても、どうすることもできません。
 そのため、契約する際は、書類などを作成したうえで、契約することがとても重要となります。みなさんも、大きな買い物する際は、必ず書面にサインすると思います。マンションのような不動産の契約であれば、細かい契約内容をしっかりチェックする必要があります。必要書類にかかれたことをきちんと読まないままサインをしてしまっても、契約になってしまいます。もちろん、マンションを売却する側は、購入者に対して、契約の内容をわかりやすく説明すべきですが。
 トラブルがおこらないように、書面を交わすことは、とても重要です。
 また、民法では、契約については、当事者間で自由にすることができるように、契約の自由の原則をとっています。
 ふだんの生活の中で、たくさんの契約をしていると思います。マンションの購入することや、ライフラインの契約をすることなど、クレジットカードも契約です。とくに、金銭が関係する場合は、契約内容はとても重要です。携帯電話や保険などの契約は、特約などがありすぎて、途中でいやになってしまうかもしれません。しかし、大事な契約なので、よくわからない場合は、わかりやすく説明してもらって、十分に理解してから契約することが大切です。

契約の解除


 契約は、当事者の一方が申込をし、相手側が承諾すると成立すると、上記でお話しいたしました。
 では、この成立した契約を解除するとは、どういったことになるのでしょうか?
 契約の解除も、契約をなかったことにしますと、一方が意思表示をすることでおこなわれます。また、その解除は、契約した日にさかのぼって、契約がなかったことになります。
 解除というのは、前回お話ししましたが、さかのぼってなかったことになりますよね。
 ですので、契約の解除は、当事者のどちらかが、契約を解消すると意思表示をすれば、契約は解除となります。つまり、はじめから契約はなかったことになります。
 さかのぼってなかったことになるので、債務などの解除を申し入れた場合、まだ履行していない(未履行債務といいます。)債務は、履行しなくてよくなります。
 しかし、前回お話ししたように、なかったことにするということは、原状回復をしなくてはなりません。原状回復できない場合などは、解除された側は、解除の申し入れた側に損害賠償の請求をすることが可能となっています。この請求を、法律用語で、原状回復請求をよんでいます。
 契約は、マンション売却のような大きな金額が動くものもあります。ですので、解除の手続きも、書面でおこない、証拠をきちんと残すことが大切です。
 解除の場合、いつ解除したかという証拠も必要となってくるので、内容証明郵便を利用するのがよいでしょう。基本的に、解除は、当事者のどちらか一方が意思表示するだけで、法律上は可能ですが、やはり証拠がないと、トラブルになってしまうことも多いです。
 解除は当事者の一方が解除の申し出をした場合、可能ですが、契約は、法的な約束でもあります。簡単に解除できてしまうと、契約社会の日本は成り立たなくなってしまいます。ですので、基本的に、契約を解除する場合の内容を、契約の際に決めたうえで、契約を締結することがほとんどです。たとえば、携帯電話などを1年契約で契約した場合、1年以内に解約すると、違約金を支払う義務が生じますよね。
 また、解除には他に、法定解除・約定解除・手付解除などがあります。
 法定解除は、債務不履行による解除のことをいいます。例えば、AさんがBさんにお金を貸していたとします。しかし、Bさんは約束までにお金を返す約束を守らなかったとします。これを履行しなかったといいますが、履行しなかったということによって解除することを法定解除と言います。
 約定解除というのは、契約書などによって解除できる条件を決めたうえで契約し、その条件にしたがって解除することをいいます。
 手付解除というのは、購入の際に、手付としてお金を相手に渡し、購入の意思を表した側が購入できなくなったときにその手付のお金かもしくはプラスして渡し、購入の契約を解除することをいいます。マンションなども、売却するために、広告費用などかかっていますからね。
 マンションの購入の手付金は大きいので、解約するのは、何か大きな理由があってのことかと思いますが、やはりマンションなどの不動産を契約するときは、慎重に考えることが重要ですよね。

債権の相続


 債権の相続といっても、ぴーんとこないかもしれません。債権も財産のうちのひとつなので、もちろん相続できるのです。
 債権というのは、財産において、ある人に対してなんらかの行為の請求をできる権利のことをいいます。
 例えば、AさんがBさんから1000万円を借りていたとします。この場合、Aさんは債務者で、Bさんは債権者となります。AさんはBさんからお金を借りているので、返さなければならない義務があり、Bさんは、Aさんにお金を貸しているので、返してもらう権利をもっています。このBさんが持っている返してもらう権利は、債権であり、相続することができます。当然といえば、当然で、借金も相続するわけですから、その反対にある、貸しているお金も、相続できるはずですよね。
 ですので、仮に、Aさんが亡くなったとしても、この債務がなくなるわけではなく、Aさんの相続人は、放棄をしないかぎり、債務を相続することになります。また、Bさんが亡くなったときも同様に、債権は無くならないので、Bさんの相続人が相続することになるのです。
 債権には、可分債権というものと不可分債権というものがあります。字の通り、可分債権は、相続人の間で債権を分けることができる債権のことをいいます。ですので、100万円の債権を相続した場合、相続人が2人であれば、2人で分けることになります。これは、この債権が金銭であるからでもあります。
 一方、不可分債権は、言葉通り、分けることができない債権のことをいいます。例えば、Bさんが車の購入をして、引き渡しを待っている間に亡くなってしまったとしましょう。当然車は分けることができませんので、不可分債権となります。金銭と違って、物は分けることができないですよね。
 ですので、車の引き渡しをする義務のある債務者は、相続人がひとりでなく、複数人いる場合は、債権者の誰かに車の引き渡しをすることで、債務の履行を果たすこととなります。履行というのは、法律用語で、実際に行うという意味です。ですので、この場合、債務者は、、債権者に車を引き渡すことで、債務を履行したということになります。
 また、可分債権は、分けることはできますが、実際に相続になると、この債権をわけるというのではなく、相続財産の1部としての扱いとなります。