贈与税と贈与税の時効と相続時精算課税制度

遺産相続の基礎知識

贈与税


家族からお金を借りると、贈与税がかかることはご存知ですか?
家族からお金を借りる場合、よく出世払いなどといって、いつかお金ができたら返せばよいと思っていませんか?
いつか返すのだから、もらったわけでもないし、贈与税の対象にはならないと思っていませんか?
しかし、銀行でお金を借りると、ただではけっして貸してくれませんよね。
マンションを購入する場合、銀行でお金を借りて、毎月ローン返済をすることが一般的です。その場合、利子も支払うと同時に、マンションにも銀行の抵当権を登記しますよね。

もちろん、担保なしにカードローンなどはお金を貸してくれることもありますが、その場合、貸付金利がとても高くなります。
・・・ということは、家族からお金を無償で借りるということは、そういったさまざまな手数料のお金を支払う必要もなく、利子も払うことはないのであれば、利益を得ていることになりますよね。

 マンションなどを購入する際、自己資金だけで購入できないので、親からお金を借りることがあります。他には、起業するために、開業資金を親から借りることもあります。
 こういったケースはよくあることだと思います。しかし、上記で説明したとおり、お金を借りる際に、利子を支払わないと、利子分は贈与とみなされる場合があります。
返済していても、ただでお金を借りていることになるのです。ただし、贈与税には、基礎控除枠があり、所得年度あたり、110万円を超えない場合は、課税されることはありません。

 たとえば、マンション購入資金として、親から1000万円借りたとします。この際に、利子を支払わなかったします。1000万円は親に返したとしましょう。この場合、利子に相当する分が贈与税の対象となります。
 親からお金を借りる場合、そのときの平均的な貸付金利で利子を返済していれば、贈与とはなりませんが、無利子であった場合は、法律で定めらている商事利率で利子を計算することになります。
 この場合、1000万円×6%となり、1年間で60万円となります。

この金額は贈与税の基礎控除の110万円を超えないため、贈与税はかかりませんが、2000万円だと、倍の120万円の利子となり、110万円を越えてしまいます。
 家族から、あげたり、もらったりは自由と思ってしまいがちですが、大きな金額のやりとりになると、注意が必要です。
財産家の家族が自由に財産を子供にあげても、贈与税がかからなければ、相続税もかかることはなくなりますし、財産が特定の人に集中してしまうことになりかねません。
ですので、みさなんも、マンションなどの高額な買い物をする場合は、親から無利子では借りることはないように気をつけてくださいね。


贈与税の時効


贈与は、誰かに何かをあげることですが、贈与をおこなうことは、本人の自由です。
ただし、贈与は、一定の金額を超えると贈与税を支払わなければなりません。
この贈与税には、時効があります。6年と決められています。
時効というのは、一定の時間が経過することによって、権利を行使できなくなることをいいます。
ですので、贈与税も、6年を過ぎてしまったら、支払う義務も、国が税金を催促することの両方の権利が消滅することになります。
ただし、贈与税の6年の時効は、知らない間に贈与がおこなわれた場合に適用されるので、知らない間に人に何かをあげるということはないため、意図的に贈与した場合の時効は7年と決められています。

 贈与については、税務署が知ることはむずかしいと思います。
相続税の場合は、マンションなどの不動産の所有者については、毎年、固定資産税という税金の情報が届きますが、贈与はさすがに情報は入らないはずです。
 では、どんなときに確認されるかというと、それは相続がおこったときです。
相続が起こったとき、一定の範囲を超えると、相続税を支払う義務が発生します。
その場合に、税務調査が入る可能性があります。

税務署では、被相続人の所有していたマンションなどの不動産のことを、毎年支払っている固定資産税などから、ある程度の財産を知っています。
税務調査があった場合は、マンションなどの不動産だけではなく、被相続人の預貯金や家族の預貯金などについても、さかのぼって確認することになります。大きな金額の引き出しがあった場合は、なんの目的なのか質問されることになります。
このときに、子供がマンションの購入資金のために、無利子で借りていたことが発覚すると、贈与税がかかってしまうことがあるのです。
そうならないためにも、家族からお金を借りる場合は、借用書を作成したうえで、平均的な利子を支払ってお金を借りるほうがよいでしょう。
または、贈与税は、所得年度あたり110万円の基礎控除があるので、この金額を超えない範囲で贈与すると、税金を支払う必要はなくなります。
 マンションを購入する際に、親から資金を援助してもらう場合は、ポイントをおさえておいてくださいね。

相続時精算課税制度


相続時精算課税制度は、相続のときに贈与を受けた金額を2500万円まで先延ばししてくれる制度です。
この制度は、財産面の余裕のある世代から、若い世代へ財産を移転することによって、経済を活性化させることを目的に作られた制度です。
経済の活性化というのは、資本主義社会では、お金が動くことを意味します。
贈与は、マンションなどを購入する場合に受ける場合が多いので、大きなお金が動くことになりますよね。
ただし、要件もあります。
1.贈与した年の1月1日の段階で、贈与者が60歳以上であること。
2.贈与をうけた年の1月1日の段階で、受贈者が20歳以上である贈与者の直系卑属にあたる人であること。
上記にあてはまる場合のみに利用できる制度です。
そのため、当然子から親への贈与には適用できません。

2500万円をこえた金額については、1律に20%の贈与税がかかります。
ただし、この贈与税は、相続がおこったときに、相続税から控除されます。
また、この相続時精算課税を選択した場合は、暦年課税の贈与税の基礎控除110万円は利用できなくなりますので、注意してください。

この制度を利用する場合は、贈与した翌年の2月1日から3月15日までの間に、贈与税の申告書とあわせて、相続時精算課税選択届出書を税務署に提出する必要があります。確定申告と時期は重なりますが、開始が少し早いです。

贈与税は相続税よりも高い税率がかかります。ですので、親からマンション資金の援助を受ける場合は、この制度を利用すると、相続税がかからない可能性が高いと、税金を支払わなくてもよくなります。もしくは、相続税がかかったとしても、支払った贈与税は控除できます。

仮に、この制度を利用しなかった場合、2500万円の贈与を受けると、2500万円-110万円=2390万円に贈与税がかかることとなります。
2390万円×45%-265万円=810.5万円の贈与税を支払わなくてはなりません。

数字を見ていただくと、一目瞭然かと思いますが、相続時精算課税制度は、贈与を受ける場合は、ぜひ利用するようにしてください。