準確定申告
被相続人が亡くなり、相続が開始されて、一定範囲を超えた財産がある場合、相続税を支払わなければなりません。
しかし、相続税だけではなく、所得税が課税される場合もあります。
被相続人の確定申告が必要な場合があります。これを準確定申告といいます。
この場合は、被相続人の所得に対して、所得税を支払うこととなります。
また、相続財産を分割する際に、代償分割をおこなった場合に、相続人が不動産を売却すると、相続人が所得税を支払わなければならない場合があります。
準確定申告とは、被相続人が亡くなった年に取得した収入を、相続人が確定申告することです。被相続人が亡くなったことを知った時から4か月以内に申告および納税をする必要があります。ただし、国民年金や厚生年金などの公的年金の収入が400万円以下で、それ以外の所得が20万円以下の場合は、準確定申告はおこなう必要はありません。
準確定申告が必要な主な場合をまとめると、以下のようになります。
1.個人事業主・自営業者
2.給与所得と退職所得以外で所得が20万円以上あった場合
3.給与所得が2000万円以上の場合
準確定申告は、準確定申告という用紙はないため、確定申告の用紙に準と記載して使用します。用紙は国税庁のホームページでダウンロードもできますし、申告書類も作成することも可能です。必要書類も確定申告の場合と基本的に同じです。
被相続人が死亡日までに支払われた給与に関しては所得税の課税対象となりますが、死亡日の後に支払われた給与については相続財産の扱いになります。また、準確定申告で支払った所得税については、相続財産から控除することが可能です。
医療費についても、被相続人が亡くなるまでに支払った医療費については、準確定申告の医療費控除ができます。ただし、被相続人が亡くなった後に、相続人が医療費を支払った分に関しては、医療費控除の対象外になるので注意が必要です。
ただ、医療費控除の還付請求ができる期間は5年ありますので、落ち着いてからあとで行ってもよいでしょう。
また、被相続人が事業をおこなっていて、消費税納税義務者の場合は、消費税の申告もおこなわなければなりません。
準確定申告は申告期間が4か月と短いため、必要書類もその間に準備しなければならないので、よくわからない場合は、はやめに専門家に相談するほうがよいでしょう。
遺贈
遺贈とは、遺言によって被相続人が一方的に財産を処分することをいいます。
遺贈は相続人であっても、相続人でなくてもどちらでもよいですが、相続人に遺贈する場合は、実務上、相続させるといいます。
ですので、実際には、遺贈というのは、相続人以外の人に対して財産を処分することになります。
遺贈には特定遺贈と包括遺贈という2つの種類があります。
特定遺贈というのは、特定した財産を遺贈することをいいます。ですので、被相続人の死亡によって、特定された財産の所有権が指定した人に移転します。
包括遺贈は、特定された財産ではなく、何分の何のような形式で財産を遺贈することをいいます。ですので、相続人と財産を分割することになるため、債務についても相続することになります。
また、遺贈によって財産を取得した場合は、取得した人は、2割加算といって、相続税が高くなってしまいます。
相続税は、被相続人の配偶者・子供・両親以外は相続した場合は、相続税を2割プラスして支払わなければならないのです。ただし、孫が代襲相続で取得した場合は、除きます。
遺贈以外で、第3者に財産をゆずる方法として、死因贈与というものがあります。
遺贈は、被相続人の自由な意思によって、財産を一方的に処分することなので、遺贈された人は、もちろん放棄することもできます。
しかし、死因贈与は、贈与する側と贈与される側がお互いが合意したうえでおこなう契約です。そのため、贈与される側は放棄は認められていません。また、契約なので、口約束でも成立しますが、後でトラブルにならないように、きちんと書類を残すことは重要です。
換価分割
被相続人が亡くなると、相続が開始され、相続財産を相続人で分割することとなります。
分割方法は現物分割・換価分割・代償分割があります。
現物分割というのは、財産をそのままの単位で引き継ぐ方法で、一番シンプルな方法です。
例えば、自宅は、長男が引継ぎ、銀行の預金は弟が引き継ぐという分割を、現物分割といいます。
ただし、マンションのような不動産が主な財産の場合、相続人に公平に分割することがむずかしい場合があります。
換価分割というのは、相続財産をすべて売却して、現金に変えてから分割する方法です。
相続財産がマンションのような不動産の場合、公平に分割することは、むずかしくなります。
そこで、相続財産を売却することで、金銭に変えると分割しやすくなります。
ただし、相続財産を売却することになるので、売却するための手間もかかりますし、必要書類や税金なども必要です。
また、被相続人の財産として形を残すこともできなくなります。
例をあげます。
主な相続財産が被相続人の自宅用マンションだけだったとします。
このマンションに次男が住んでいたとします。
相続時には、長男だけが相続登記をしたとします。
そして、このマンションを2億円で売却し、長男と次男で1億円ずつ分けました。
このマンションの取得費は1億3500万円で、譲渡費用は500万円かかりました。
この場合、譲渡所得は、2億円から取得費と譲渡費用を差し引くので、6000万円となります。しかし、2人で分けたため、長男と次男が各自3000万円の譲渡所得が発生したこととなり、確定申告が必要になります。
ただし、弟は、このマンションに住んでいたため、居住用財産を売却したこととなり、所得税法の3000万円の特別控除を利用できたため、所得税は発生しませんでした。
しかし、長男はこのマンションに住んでいなかったため、この特別控除は利用できません。
そのため、譲渡所得が発生し、所得税を支払わなければなりません。
譲渡所得は、売却した年の1月1日の段階で5年以上が経過しているかしていないかで、短期譲渡と長期譲渡に分かれます。当然短期譲渡所得の方が税率が高く、39%となります。長期譲渡所得は20%です。
ですので、長男は、譲渡所得3000万円に対して税金を支払わなければなりません。
このように換価分割で相続財産を分割する場合は、相続人が所得税を支払わなければならない場合が出てきます。
税金には、特例もあり、さまざまなルールがあるので、大きな財産がある場合は、相続に強い税理士に相談することをおすすめします。