親から相続したマンション、売却してしまおうか。そう考え始めた時に、そういえば名義変更をしていなかったかもしれない、と気付いたら。マンションの所有者の名義変更をしていなかった場合にはマンションを売却することが出来るのでしょうか?
その前にまず、名義変更をしていないケースがなぜ起こるのか、また名義変更していないマンションを査定してもらえるのかについて見ていきたいと思います。
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名義変更していないケースとは?マンションは査定してもらえるの?
新築や中古でマンションを購入した場合には、自分が所有者であることを登記する手続きを行います。自分一人で購入した場合には、所有するマンションの名義は当然自分の単独名義です。夫婦二人で頭金を出し合ったなどといった場合には、二人の共有名義となります。
では、所有するマンションの名義変更をしていないケースとはどういうことでしょうか?所有するマンションの名義が異なるケースは、親が亡くなってマンションを相続したもののその後の名義変更の登記をしていないといった場合が考えられます。
相続をした場合には、マンションの名義を相続人へ変更する「相続登記」で名義変更をしなければならなりません。しかし、その「相続登記」をいつまでにしなければならないといった期限が法律で決められているわけではないのです。登記をしなかったからといって特に罰則があるわけでもありません。ですから、相続が終わって落ち着いた頃に名義変更の登記をしようなどと思っていてそのまま忘れていたりする場合、マンションの名義は親のままという事になります。
では、名義変更はまだしていないけれど、マンションがいくらで売れるのかだけでも知りたいといった場合には査定だけでもしてもらうことは可能でしょうか?
まず査定には、「机上査定」と「訪問査定」の2種類の査定があります。
「机上査定」は簡易的な査定になります。実際のマンションを見ないで、周辺の似たような物件の売り出しの事例や、成約した物件の事例などからおおよその査定金額を算出します。インターネットの一括査定などは、「机上査定」になります。売却することを検討している段階や、だいたいの査定価格をすぐに知りたいといった場合に向いています。
一方の「訪問査定」は、仲介業者が実際に現地のマンションを訪問して査定を行います。マンションの間取りやリフォームが必要かどうか、マンションの敷地と道路との位置関係、周囲の状況などを実際に見て細かく確認することでより精度の高い査定価格を算出するのです。ですから、実際に売却することを決めた場合には「訪問査定」がいいでしょう。この査定価格で納得が出来て不動産会社と媒介契約を結ぶとあとは実際の販売活動に入ることになります。この際マンションの売出し価格は、この訪問査定の価格を参考にして決められることになります。
売却するかはまだ決めていないが、マンションのだいたいの相場だけでも知っておきたいといった場合には、「机上査定」を申し込むのがいいでしょう。電話などで不動産会社に依頼することも出来ますし、インターネット上ではマンションの価格を匿名で査定してもらえるサイトもあります。所在地や間取り、築年数などを入力すれば匿名でも簡易的な査定をしてもらえます。
不動産会社が行う査定は、どちらの査定の場合にも基本的に無料で費用はかかりません。
名義変更していないマンションを売却することは出来る?その際の注意点とは?
結論から先に言うと、名義変更をしていないままではマンションを売却することは出来ません。相続したマンションの名義変更をしていない場合は、亡くなった方から相続する人への「相続登記」をしてからでないと、マンションを買ってくれた人の名義に「所有者移転登記」をすることができないのです。
「相続登記」とは、マンションを所有している名義人が亡くなった場合に、マンションの登記名義を亡くなった方から相続する人に名義変更をすることです。特に法的なルールで変更の期限が決められているわけではないのですが、出来れば早めに名義変更をしておいた方が無難でしょう。
この「相続登記」で名義変更しておけば、通常の売却方法でマンションを売ることが可能です。
ただ、1つ注意が必要なケースがありますので、みてみましょう。
それは、「相続登記」で共有名義になっているマンションを売却する場合です。
例えば親のマンションを兄弟で相続する場合は、相続する人が複数いるという事になります。こういった場合は、相続人全員で相続の名義をどうするのか話し合わなければなりません。これを遺産分割協議と呼びますが、この遺産分割協議で名義を誰にするのかを決めます。
例えば、長男一人で相続して単独名義にするのか、兄弟全員で所有する共有名義にするのかといった事です。複数で共有名義にする場合には、今後マンションを売却する時の売買契約には、共有名義の全員が売主になることに注意が必要です。では、共有名義全員が売主になるとどういった事が起こるのでしょう。
マンションを売却するための全ての契約に、名義者全員が直接関わる必要が出てくるのです。具体的には、マンションの売却を依頼する際に不動産会社と結ぶ媒介契約や、その後の売買契約には共有名義の全員の署名と押印が必要になってきます。もし、その中の一人でも病気や遠方に住んでいるなどといった理由でその契約の際に出席出来ない場合には、誰かに委任する必要が出てきます。また、共有名義人がマンションの売却に反対をしているといった場合には、そもそもマンションを売却することが難しくなってきます。
共有名義で揉めていて売却が出来るか不安だといった場合には、不動産会社の「訪問査定」を利用してみるのもいいかもしれません。訪問査定では、物件の価格を査定するだけでなく、必要であれば共有する名義人などの権利関係の調査を行います。マンションの価格を査定することで売却の予定価格が明確になるので、売却に反対する共有者から持分割合を買い取るなどといった時も、目安になる金額が計算しやすくなるといったメリットもあります。
共有名義人のトラブルでマンションの売却が出来ない場合は、不動産会社や法律の専門家とよく話し合ったり、親族や知人など第三者に仲介してもらったりする事も有効でしょう。
名義変更するための「相続登記」について
最後に、相続したマンションを名義変更する「相続登記」の手続きについてです。まず登記するために必要な書類からみていきましょう。
亡くなられた方に関係する書類としては、出生してから死亡するまでの全てが連続している戸籍謄本と、登記簿の住所と本籍地の記載のある住民票の除票または戸籍の附票が必要になります。相続する人に関係する書類として、法定相続人全員の戸籍謄本と新しく名義人になる方の住民票です。その他としては、名義変更する年度の固定資産評価証明書、相続関係説明図(家系図)、相続人全員の印鑑証明書、遺産分割協議書などです。
相続登記の手続きは自分で行うことも可能です。ただ、法務局や役場に何度も足を運ぶといった手間がかかるため、司法書士に代行を依頼する場合が多いかもしれません。自分で手続きを行った場合の費用は、書類の発行にかかる費用と登記する際にかかる税金ですが、司法書士に代行を依頼した場合には、さらに司法書士手数料がかかります。司法書士手数料の相場は、6から10万円程度だといわれています。
名義変更されていないマンションはそのままでは売却することは出来ません。相続などで名義が変更になった場合には出来るだけ速やかに相続登記を行い、名義変更をしておくことをおすすめします。