マンションを売却したい、とは思っても、初めて売却する場合にはいったい何から始めたらいいのかわからないという方も多いかもしれません。マンションを高値で売却するために必要なこと全てが知りたい、これだけは知っておくべき、という事を事前に調べておきたい、という方のために、中古マンションを売却するための事前準備、売約の流れ、査定のポイント、注意すべき点などを解説していきます。
少し長くなりますのでサイトを2つに分けて説明していきたいと思います。「中古マンション売却査定のポイント(1)」では、売却に入る前に知っておくべき点をまとめました。次の(2)では実際の売却の流れに沿って注意点や、ポイントなどを解説していきたいと思います。
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中古マンション売却したい、その前に知っておきたいポイントとは
中古マンションを売却すると言っても、まず何から始めたらいいのか分からない、といった方のために、事前に知っておきたい点をお伝えしていきます。
中古でマンションを売却する場合に私たちが選択出来る方法がいくつかあるのですが、最も一般的なのは、「仲介」による売却です。それ以外には、「買取り」によってマンションを売却する方法もあります。
両者の違いを簡単に説明しておきましょう。
「仲介」による売却では、中古マンションの売却の仲介を不動産業者に依頼します。その不動産業者を介して買主を見つけて売買契約を結びます。売買の契約は「個人(売主)」対「個人(買主)」です。一方の「買取り」による売却では、買取りを専門とした企業や不動産業者が、物件を直接買い取ります。ですから、売買の契約は「個人(個人)」対「会社(買主)」になります。
まずここでは最も一般的な「仲介」による中古マンション売却の流れについて説明していきたいと思います。
仲介による売却の活動は、主に次のような手順に分類されます。
・売却のための事前準備
・中古マンションの査定を依頼
・不動産業者と媒介契約を結ぶ
・中古マンションの販売活動を行う
・買主と売買契約を結ぶ
・マンションの引渡
・売却の翌年に確定申告を行う
中古マンションを売却する手順とは
<売却のための事前準備>
まず、中古マンションを売却するにあたって、おおまかに売却の計画を立てます。
買い換えなのか、売却だけなのか、住宅ローンが残っている場合にはその返済はどうするか等です。特に買い換えによる売却の場合には、売却が先なのか、新居の購入を先にするのか、などを考えておきます。住宅ローンが残っている場合には、残債がどのくらいなのかを確認しておくことも重要です。
<中古マンションの査定を依頼>
不動産業者に査定を依頼し査定金額を出してもらいます。査定というのは物件を売却する際に実際にいくらくらいでマンションが売却できそうなのかを不動産業者に算出してもらうことです。出された査定額によっては、売却計画を見直さなければならないかもしれません。マンションを売却した金額で残りの住宅ローンを完済出来るかどうかは重要です。住宅ローンの返済中のマンションは、ローンを完済して抵当権を抹消しないと売却が出来ないからです。ですから、ここで査定額が大きく残債を下回るようであれば、売却自体を見直す必要も出てきます。また、「中古マンションをいくらで売り出したらいいか」は売主が決める事になりますので、相場を踏まえた適正な価格を決める目的でも、査定が必要です。1つの業者だけの査定では、比較検討が出来ません。売却計画の段階では物件の住所や間取りや築年数などの情報から査定が受けられる簡易査定で充分ですので、できれば複数の不動産業者に査定を依頼して査定金額を算出してもらいましょう。
<不動産業者と媒介契約を結ぶ>
査定が終わったら不動産業者と媒介契約を結びます。媒介とは、仲介の専門的な用語です。マンション売却の仲立ちを依頼するための契約です。契約後はマンション売却に向けて、販売活動が始まります。
<中古マンションの販売活動を行う>
媒介契約を結んだ不動産業者は、広告を出したりして宣伝を行い、販売活動を行います。販売活動中は、購入希望者が実際に内覧に訪れます。居住中の売却の場合にはなかなか難しいかもしれませんが、内覧者に出来るだけ良い印象を与えられるように、事前に整理整頓をするなど準備をしておきましょう。
<買主と売買契約を結ぶ>
購入希望者がマンションを気に入ってくれて、売却の価格や引渡し日などの条件がお互いに折り合えば、売買契約を結びます。売買契約とは、売主がマンションの権利を買主側に移転する約束をし、代わりに買主は代金を支払う約束をするという契約です。マンションの売却では金額が大きくなりますので、売買が成立した段階で書面に残しておくのです。
<マンションの引渡し>
マンションの引渡しは、実際にマンションを買主に引き渡すことです。売買契約からだいたい1ヶ月から1ヶ月半ほどあります。その間に、引っ越しなど引渡しの準備をしておく必要があります。買主から残代金が売主へ入金され、引き換えにマンションの鍵やマンションの規約などを買主に渡します。これで引渡しが完了です。マンションの所有権を移転する登記のために必要な重要書類はこの際に提出します。
<売却の翌年に確定申告を行う>
個人でマンションを売却した場合に税金がかかる場合があります。譲渡益といって、マンションを購入した時かかった金額よりもだいぶ値上がりして売却したため利益が出たといった場合に、その利益分に税金がかかるのです。その場合には、売却の翌年に確定申告を行う必要があります。ただし、マイホームの売却では特例があるので譲渡益が発生していても税金を支払う必要はないのですが、この特例を使うには確定申告が必要です。また、逆に売却の価格が購入時より下がっていて損失がでている場合には税金が戻ってくる場合もありますが、この特例を利用する場合にも確定申告が必要になります。
中古マンションを売却するまでにかかる期間
中古マンションを売却する場合に、売却出来るまでどれくらいの期間がかかるのかを知ることは、売却計画を立てるためには必要になってくると思います。
もちろん物件によって差はありますが、中古マンションを売却する期間についてだいたいの目安をお伝えしておきましょう。
査定を依頼してから媒介契約まで約1ヶ月
媒介契約から売買契約締結まで約3ヶ月
売買契約締結からマンションの引渡まで 1ヶ月
この期間は、あくまでもだいたいの目安です。媒介契約を結んでから売買契約までは、平均3ヶ月程度かかると言われています。平均値ですので、人気物件の場合は1ヶ月で成約する場合もあるでしょうし、逆に半年、1年以上経っても売却出来ない、といった場合もあります。
短い期間で売却が決まるかどうかは、マンションの売り出し価格に大きく影響される事も事実です。例えば1ヶ月以内にマンションの売却が決まったという場合、もしかしたら相場よりもかなり安い価格で売り出してしまったという可能性もあります。その一方、半年が経っても売却できないといった場合には、マンションの売り出価格が相場よりもかなり高い事が要因である可能性もあります。
そのため、いくらでマンションを売り出すかという事は、とても重要なのです。
不動産業者が行う査定価格は、おおよそ「3ヶ月程度で売却できる価格」を算出しています。ですから、査定でしっかりと売却の相場を押えておけば、例え早期に売却できても決して安過ぎた価格だったわけではなく、マンションを「高値で」かつ「短期に」売却する事が出来るでしょう。査定を受ける際のポイントについては、後で説明していきたいと思います。
中古マンションの築年数と価格の関係
新築でマンションを購入して、何年か経った後に中古で売りに出す場合、いったい今いくらくらいで売却出来るのか、どのように価格を設定したらいいのかは悩むところだと思います。
東日本不動産流通機構(東日本レインズ)が発表した2017年の首都圏の動向を見てみましょう。2017年に成約した中古マンションにおける平均の築年数は20.70年です。成約した中古マンションの平均価格を見てみると、
築5年以下 5,000万円台
築6から15年 4,000万円台
築16から20年 3,000万円台
築21から25年 2,000万円台
築26年超 1,000万円台以下
となっています。
中古マンションの売却価格は築年数とともに下がっていることが分かると思います。
東京オリンピックの影響もあって中古マンションの市場は上昇傾向でしたが、ここ最近は横ばいだと言われています。その年のトレンドなども影響するため、現在いくらで売却出来るのか相場を知っておくというのはとても重要です。また、住宅ローンの返済や、買い換えの場合、自己資金がいくら準備できるのか等、資金計画を立てる上でも非常に重要になってきます。ですから、中古マンションを売却する場合に、最初の段階で相場を知る為の査定をすることが重要となってくるのです。
媒介契約の種類を知っておこう
不動産業者に査定を依頼する前に、知っておかなければならない点があります。それは不動産業者と締結する媒介契約についてです。
媒介契約の種類には3つあります。
一般媒介
専任媒介
専属専任媒介
これら3つの契約の違いは、複数の不動産業者へ仲介が依頼できるかどうかです。
一般媒介契約では、他の業者への仲介の依頼が可能です。一方、専任媒介、専属専任媒介契約の場合には、他の複数の業者への仲介を依頼する事は出来ず依頼出来るのは1社のみです。専任と、専属専任の違いは、売主が自分で買主を見つけてきた場合に取引が出来るか出来ないかの違いになります。自分で買主を見つけて取引できるのが、専任媒介契約になります。
売主にとっては、マンションの売却を複数の不動産会社へ依頼できるので、一般媒介契約の方が早く高値で売却できるように思えます。ただ、不動産業者側からすると、一般媒介契約は他の不動産業者と競争になってしまうため、せっかく営業活動をしても契約が取れない場合もあります。そのため積極的な販売活動をしてくれない可能性もあります。業者にとって一般媒介契約は不利な契約ですから、業者側は専任媒介契約を結びたいと考えるのです。売主が一般媒介で依頼しようと思っても、結局、不動産業者に言われたまま専任媒介で依頼してしまう場合も多いかもしれません。
一般媒介契約では、全国の物件情報が登録されている業者向けのシステム「レインズ」への登録は任意となっています。また、売主への業務を状況報告する義務も一般媒介契約にはありません。専任、専属専任媒介契約ではレインズ登録の義務および、売主への業務報告義務があります。
専任媒介契約を結ぶ場合には、「レインズ」の登録内容は、売主であれば確認出来ますので、売却に必要な内容が細かく登録されているかを必ずチェックしましょう。
一般媒介契約を選択する場合には、業者へレインズの登録をお願いしたり、売却活動はどうなっているのかを自ら業者へ確認したりといった積極的な働きかけが必要となるでしょう。
仲介手数料について
次に仲介手数料について見ていきたいと思います。
仲介手数料は、不動産業者に支払う報酬です。支払うタイミングは、マンションの売買契約が成立した際に半額、引渡しが完了してから残りの半額、というのが一般的に多く見られるパターンです。
仲介手数料は、宅地建物取引業法によりその上限の額が決められています。
マンションの売却額が200万円以下なら売却金額の5%+消費税が上限です。200万円超から400万円以下の時は、売却金額の4%+2万円+消費税。売却金額が400万円超 であれば、3%+6万円+消費税が仲介手数料の上限額になります。
例えば、2000万円でマンションが売却出来たとすると、不動産業者に支払う仲介手数料は66万円+消費税ということになります。かなりの額になりますね。
上限はこのように決まっていますので、万が一この上限額以上の仲介手数料を請求されたとしても支払う必要はありません。
また、一般的な販売活動の広告宣伝費や交通費等は売主に対して別途請求することはできません。広告宣伝費とは、ダイレクトメールや、折り込み広告、ポスティング、自社のサイトに掲載するなどといった宣伝です。その販売活動にかかった費用は、例え請求されても支払う必要はありません。ただし売主が特別に依頼した広告であれば、かかった費用を請求出来る事になっています。
仲介手数料は成功報酬なので、売買を成立させた場合に支払う事になります。ですから、一般媒介契約で複数の不動産業者に仲介を依頼した場合でも、仲介手数料を支払うのは売買を成立させた1社だけでいい、ということになります。
マンション売却の瑕疵担保責任について
中古マンションを売却する際に知っておかなければならない事の中に、瑕疵担保責任があります。
瑕疵というのは、一般にキズや欠点などを指します。法律では売主が売却するまでに気付かなかった隠れた瑕疵を買主が購入後に発見した場合には、発見後1年以内であれば売主に対し損害賠償、または契約解除を請求できるとの定めがあります。
つまり、マンションを売却した後で何か不具合が見つかった場合、売主側がその修理などにかかった費用を負担しなければならないという法律なのです。
売主はこの法律の規定通りであれば、売却後も何かあるかもしれないと気が気でないでしょうし、そもそも中古でマンションを売却する事が迂闊に出来なくなってしまいます。
ですから、個人間の取引では一般的に売買契約書で売主の瑕疵担保責任を軽くするような条文を入れるのです。多く見られるのは、売主の瑕疵担保責任の期間を2~3ヶ月とするという契約です。また、売主と買主が双方合意していれば、瑕疵担保責任を負わないとすることも可能です。ですが、そのような場合には交換条件として買主からマンションの値引きを要求される可能性あります。
また、注意が必要なのは、例え免責の契約をしていたとしても、事前に欠陥に気が付いていた場合には責任を負わなければなりません。欠陥を隠して契約しても、後でそれが分かった場合には、免責の特約が付いていても無効になってしまうのです。ですから、後々トラブルにならないためにも、売却にマイナスになってしまうような点がもしあっても、隠さずに見せて確認してもらって了承の上で購入してもらうのが一番でしょう。
中古マンションを売却した後に確定申告が必要?
中古でマンションを売却した場合に、全ての人が必ず税金を払う、というわけではありません。売却して利益がでた場合は、税金がかかるのです。次の式で譲渡所得がプラスになった場合には、税金を払う必要があります。
<譲渡所得を求める式>
マンションの売却金額 -((マンション購入時の金額-償却費)+取得費)-譲渡費用
償却費を購入時の金額からマイナスするのは、マンションなど建物はだんだんと古くなるので、その価値が少しずつ減少していくという考え方によるのです。
取得費は、マンションの購入に掛かった仲介手数料や、固定資産税、不動産取得税、契約書の収入印紙代、保証会社に支払う保証料などになります。譲渡費用とは、売却に掛かった費用で、仲介手数料や印紙税などです。
確定申告を行うのは、譲渡所得がプラスになった場合です。ただし、マイホームを売却した際には、譲渡所得がプラスでも3000万円まで非課税となる特例があり、条件を満たせば利用が出来ます。
また、マイホームの売却によって課税譲渡所得がマイナスになった場合に、税金が戻ってくる特例があります。特例を利用する場合には、どちらにしても翌年の確定申告が必要になります。マイホームを売却した場合、ほとんどの方の課税譲渡所得がマイナスになると思います。確定申告はよく分からない、面倒だと感じて敬遠される方も多いかもしれませんが、申告することで戻ってくる税金がありますので、是非利用してみて下さい。
相続したマンションや共有名義のマンションを売却する場合の注意点
売却しようとしているマンションがご自分の単独名義ならばよいのですが、相続したマンションであったり、共有名義のマンションであったり、といった場合に、いくつか注意が必要な点があります。
まず、親から相続したマンションである場合をみていきましょう。
親の所有していたマンションを相続してそこに住んでいる場合には、「相続登記」を済ませておく必要があります。相続登記というは、相続人から被相続人へ不動産の名義を書き換える手続きのことです。相続したマンションの「相続登記」を行い、名義を自分に書き換えておかなかった場合、売却する事が出来ません。もし相続後に相続登記をまだ行っていないという場合には、司法書士に相談するなどして早めに手続きしておきましょう。
次に、売却しようとするマンションが複数の名義人によって所有されている共有名義の場合をみていきましょう。
共有名義のマンションの場合には、その各名義人がマンションの売却に同意していない場合などは売却する事が出来ません。契約する際には、名義人全ての署名や実印が必要になりますので、名義人全員の単独で勝手に売却してしまうことは出来ないのです。
その場合、不動産業者とのやり取りを誰が中心で手続きなどを行うのか、売却価格はいくらくらいまでなら値下げしてもいいのかなど、しっかりと事前に話し合っておくことが大切です。これらの事を事前に話し合っておけば、話が具体的に進んでから揉めることもないのでスムーズに売却が出来るでしょう。
中古でマンションを売却するために必要な書類の中に「登記済権利証」もしくは「登記識別があります。マンションを購入した際に所有者の登記を行ったと思いますが、その登記が完了した際に法務局から発行される書類になります。この書類は万が一紛失してしまった場合には再発行が出来ません。もし見つからないといった場合には、司法書士に所有者本人であるという証明を作成してもらう必要がありますので、早めに司法書士か、不動産業者に相談した方がいいでしょう。
ここまで、中古でマンションを売却する場合の準備や注意点について解説してきました。次回は売却活動を始めてから売買契約までを詳しく解説していきたいと思います。