空中族という言葉を耳にしたことのある方は多いのではないでしょうか。空中族とはタワーマンションを購入し、売却をすることによって利益を得ている投資家のことをあらわします。また、賃貸での収入ではなく売却での収入で富を得ているのも特徴で、この空中族に憧れている人も少なくありません。とはいえ短期間でマンションを売却することに対して不安に思っている方もいらっしゃいますので、購入したマンションを5年以内に売却することのメリットやデメリットについて考えていくとともに売却する際に査定額を少しでも高くするためにはどうすればいいか考えていきましょう。
所得税率の違いと課税譲渡所得について
東京カンテイによりますと、主要都市における70㎡のマンションの年別価格推移は、2016年度の東京23区で5,249万円となり前年度の価格と比較すると10.6%上昇しています。東京23区の2015年度の価格はと言いますと4,748万円ですので、1年間保有することで資産価格が501万円アップしたと言うことができます。これを1億円の億ションで考えますと、1年間で10%値上がりすることによって1,000万円もの利益を得ることができるという計算になります。
東京都内なら1億円以上のタワーマンションは数多くあります。中古マンションを購入する際借入金が発生したとしても1年間で回収することは十分に可能ですし、転売利益として1,000万円を手に入れることができるとあっては目が離せません。これは即ち年収1,000万円のサラリーマンがマンション投資によって更にプラス1,000万円を稼ぐということになるのです。しかし、中古マンション投資が成功した場合でもそれが全額収入に繋がるという訳ではありません。個人投資家が中古マンションなどの不動産を売却して利益を得た場合は所得税が課税されますので注意が必要です。
課税譲渡所得の計算は、譲渡価額―取得費―譲渡費用によってあらわされます。中古マンションの購入価額が取得費のことで、建物につきましては減価償却後のものになります。取得費には他にも中古マンションを購入した際の仲介手数料や購入時の売買契約書に必用な印紙税、不動産取得税や登録免許税、司法書士手数料などが含まれます。また、譲渡費用には売却の際に掛かった仲介手数料や売却時の売買契約書に必用な印紙税などが含まれています。
中古マンションの購入から数年しか経っていない場合はこういった契約書や領収書等が残っているケースが多いこともメリットのひとつだと言えます。
反対に、短期間での売却におけるデメリットはと言いますと、復興特別所得税は中古マンションの保有期間関係なく2.1%掛かるのに対して所得税や住民税に関しましては中古マンションを所有する期間が5年以下か5年を超えるかによって税率が異なるという点があげられます。所得税における税率は短期譲渡所有にあたる5年以下で30%、長期譲渡所有にあたる5年超の場合は15%となりますし、住民税における税率は短期譲渡所有の場合は9%、長期譲渡所有の場合は5%となりますので注意が必要です。
減価償却とは
減価償却とは、建物の価値が築年数によって落ちていくことをあらわします。土地はどれだけ長い年月が経過しても減価しないため減価償却資産にはなりませんが、建物は新築当時と比較して価値が下がるというのは明確だと言えます。そのため、建物付属設備や機械装置などを含めた事業用マンションは使用期間に応じて経費化することが可能になり、1年毎に費用を算出して減価償却費という経費を決算書に計上することができます。
1年で全てを経費化してしまうと、建物が残っているのに価値がゼロになってしまうといった事態になってしまいますので、毎年少しずつ取得費を経費化するという仕組みになっていると言えます。
中古マンションを売却する際関わってくる税金を計算するために必要な項目のひとつでもあります。中古マンションに限らず、不動産を売却した際は譲渡所得税が発生するのですが、この税金はその他の所得とは分離して課税され、対象の不動産の所有期間や用途によって定められています。所有期間は譲渡した年の1月1日時点で所有する年数が5年を超えているかそうでないかによって税率が異なります。5年を超える場合を長期譲渡所得、5年以下の場合を短期譲渡所得と言い、長期譲渡所得の方が短期譲渡所得よりも税率が低いのが特長です。
また、不動産を売却する際に仲介業者に支払う印紙税や手数料といった費用のことを譲渡費用と言い、売却した不動産を取得した際にかかった仲介手数料や購入代金のことを取得費と言います。これらを譲渡価額から差し引かなくてはなりませんので、計算方法は課税譲渡所得=譲渡価額-取得費-譲渡費用となります。
不動産の購入代金は、購入した時の金額ではありません。あくまでも売却する時点での不動産の価値によって計算されます。減価償却は一般的に事業用の会計手続きに用いられ、毎年減少していく価値を金額に換算したものをあらわします。個人の自宅用中古マンションも減価償却の対象になる場合もありますが、あくまでも減価償却の対象は建物部分のみであるということを頭に入れておきましょう。
空中族の人はもちろん、そうでない人も将来的に中古マンションの売却を検討している方は減価償却についての知識を高めておくことをおすすめします。
まとめ
数字上で見た場合長期譲渡所得の方が手元に残る金額は多くても、中古マンションの価格がどのように推移していくかは予測できませんので注意が必要です。築年数が5年以内の中古マンションは比較的高額での売却が期待できますが、築年数が経つにしたがって査定額にも影響を及ぼしますし、強気な金額では売却することはできません。
また、固定資産税や都市計画税に関しましても短期譲渡の方が低負担だと言えますし、少しでもリスクを抑えるためには短期間での売却を検討した方が中古マンションの売却価格もある程度予測することができます。
他にも、タワーマンション高層階ともなれば贅沢な眺望が期待できますし、地震や免震、防災面に関しては高層階や低層階に関係なく配慮された施工になっていますので資産価値としては下がりにくい傾向にあります。駅に近い場合が多く、設備なども充実しているため一定の人気を博していると言えます。こういったさまざまな条件は査定額に大きく影響を及ぼしますし、大手のデベロッパーが手掛けていることからステータスが保たれ安心感に繋がることから需要が高く査定額も高いと言えます。こういったことからも短期譲渡は高額での売却が期待できますし、不動産会社に査定を依頼する際や売却価格を決定する際も強気な価格設定をすることが可能です。
売却する際の査定は複数の不動産会社に依頼しましょう。それぞれの会社によって査定額は異なりますし、少しでも査定額をアップするためにもおすすめします。
ちなみに、査定額を少しでもアップさせるためには日頃の手入れを怠らないようにすることも大切です。住まいは使う人によって状態が大きく変わってきますし、状態が良い場合は査定額が高くなることは言うまでもありませんので、日頃から意識しておきましょう。
査定を依頼してから売却までの大まかな流れとしましては、複数の不動産会社に査定を依頼して査定金額を算出してもらい、その査定価格や内容、担当者の方が信頼することができそうかなどで不動産会社を比較検討して決めます。不動産会社が決まったら売主として媒介契約を結び売買活動を行ってもらい、買い手が決まったら売買契約を取り交わすといった流れになります。
誰もが一度は憧れる空中族ですが、少しでも多くの利益を得るためにも、日頃から知識を身につけるとともに査定額アップを心がけ、中古マンション価額の動きに注目しておくことが大切だと言えます。