アパート相続にかかる税金はいくら?初心者でもわかる相続税の計算方法

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「アパート相続することになった!相続税がいくらかかるのか今すぐ知りたい!」

今回は賃貸アパートを相続した時にかかる税金の計算方法を、やさしく丁寧に解説しています。
実際に数字を当てはめて相続税の計算ができるようにご説明していきますので、全く知識がなくても大丈夫です。

 

 

アパート相続にかかる税金の計算フロー

アパートを相続するとき相続税がいくらになるのか知りたいときは、以下の手順で調べる必要があります。

①相続するアパートの建物と土地それぞれの価値(相続税評価額)を計算する
②アパートの相続税評価額と他の全て遺産を合計し課税対象額を調べる
③課税対象額を相続人で分割してひとりひとりが支払う相続税を計算する

相続するアパートの価値(相続税評価額)は、国税庁の定めた評価基準に基づいて計算して調べます。以下で順を追って詳しく解説していきますのでご安心ください。

手順1:建物の相続税評価額を調べる

建物の固定資産評価額を確認する

建物の評価額は、固定資産税評価額と同じになります。

固定資産税評価額は、毎年4月から6月に役所から送られてくる固定資産税の納税通知書に記載されています。

納税通知書では、土地と建物それぞれに分けて評価額が書かれていますので、「建物」の価格の欄を確認しましょう。

その年の1月1日時点の不動産の所有者に送付されることになっていますので、相続するアパートは親の名義で通知書が送付されていると思います。

納税通知書が見つからないときは、相続人であれば各市町村の役所、東京都では都税事務所に保管されている固定資産課税台帳で確認する事ができます。

建物の固定資産税評価額から控除の計算をする

第三者に賃貸している相続アパートは、建物の評価額控除がありますので、固定資産税評価額からさらに評価が下がります。
控除後の正しい評価額は、以下の式で算出できます。

固定資産税評価額 ― 固定資産税評価額 × 借家権割合 (0.3)× 賃貸割合 =

 

借家権割合
全国一律で30%なので0.3で計算してください。

 

賃貸割合
アパートの貸し出し率です。空室がなければ賃貸割合は100%です。
空室がある時は、部屋数ではなく専有部分の床面積で割合を計算しますので以下の式で出します。

入居者のいる部屋の床面積÷アパート全室の床面積=

もし一時的に空室でも、これまで継続して賃貸していて、退去後すぐに入居者を募集していれば賃貸中とみなしてもらえる場合もあります。
一時的な空室とみなされる期間は、相続開始前後1カ月程度が目安だと考えておきましょう。

 

手順2:土地の評価額を調べる

路線価方式と倍率方式のどちらが適用できるかチェック

土地を評価する方法は、2種類あります。

・路線価方式
・倍率方式

路線価が定められている地域では、土地は路線価方式で評価します。
路線価が定められていない地域では、倍率方式で評価します。

ですので、まずは相続アパートの土地に路線価が定められているかを確認しなくてはなりません。
路線価の確認方法は、国税庁のホームページ「財産評価基準書路線価図・評価倍率表」から住所を検索すればわかります。画面が見にくい時は、国税局や国税事務所、税務署でも確認する事が出来ます。

路線価方式で賃貸アパート土地の評価額を計算する方法

最初に国税庁のホームページ「財産評価基準書路線価図・評価倍率表」でアパートの建っている土地を探して、面している道路に書かれている「数字+アルファベット」を確認してみてください。

路線価方式では、この数字とアルファベットを使用して土地の評価額と控除の計算を行います。
建物の評価額と同じで、第三者に貸している建物が建つ土地の場合は、評価額から控除があります。
まず土地の評価額を算出して、そこから控除の計算を行いますので式は以下の手順となります。


①路線価額 × 補正率 × 土地面積= 土地の評価額

②土地の評価額 ― 土地の評価額 × 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合
=控除した後の土地の評価額

これだけ見ても訳がわからないと思いますので、これからアパートの土地が200㎡で土地の前の道路に「250D」と書かれていた場合を例に計算してみます

 

①の式を計算する

・まず数字の250ですが、1平方メートル当たりの価額を示しています。
 数字の単位は千円なので、250,000円/㎡となります。

補正率は、形の整っていない土地に適用することができます。形状の悪い土地は使いにくいため評価額を下げて節税につなげることができます。ただ、補正率の算出方法は複雑ですので、専門家の力を借りる必要があります。今回は、整形された土地として補正率は「1」で計算しています。もしもアパートの土地の形状が悪いという場合には、今回算出する価格から少しだけ安くなる可能性があると思っておいてください。

それでは①の式に当てはめて土地の評価額を計算してみます。

250000×1.00×200= 50,000,000

土地の評価額は5千万円ということがわかりました。

 

次に②の式で控除の計算をします

・ここでアルファベットを使用します。アルファベットは、借地権割合を表していて割合は以下となります。今回はDなので60%ということになりますね。

ABCDEFG
90%80%70%60%50%40%30%


・借家権割合と賃貸割合は、先ほどご説明した建物の評価額の時と同じですので以下になります。
 借家権割合は全国一律30%なので0.3をかける。
 賃貸割合はアパートの貸し出し率です。今回は空室がなしの賃貸割合は100%で計算。


それでは、②の式に当てはめて控除後の土地の評価額を調べます。

50,000,000-50,000,000×0.6×0.3×1=41,000,000
控除後の正しい土地の評価額は4千100万円になります。
 

等倍方式で賃貸アパート土地の評価額を計算する方法

国税庁のホームページ「財産評価基準書路線価図・評価倍率表」で相続アパートの土地をみたときに、「数字+アルファベット」がなかった場合は、倍率方式で土地の評価額を計算します。

倍率方式は、最初に国税庁ホームページの「評価倍率表」で相続アパートの地域の倍率借地権割合を確認します。

倍率と借地権割合を活用して、土地の評価額の計算とさらに控除の計算を以下の式で行います。
建物の評価額と同じで第三者に賃貸している建物が建つ土地は、評価額の控除があります。

①土地の評価額 = 固定資産税評価額 × 倍率

②土地の評価額 ― 土地の評価額 × 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合
 =控除後の土地の評価額

 

これだけではわかりにくいので、「固定資産税評価額:2,000万円」「倍率:1.1」「借地権割合:60%」を例にして実際に計算してみます。

借家権割合と賃貸割合は建物の評価額の時と同じです。
借家権割合は全国一律0.3です。賃貸割合は今回は満室で100%ということにします。

①の式を計算します

20,000,000 × 1.1 = 22,000,000

土地の評価額は2千2百万円ということがわかりました。

 

②で控除後の評価額を計算します。

22,000,000 − 22,000,000 ×0.6 × 0.3 × 1 = 18,040,000
控除後の土地の評価額は、1千8百4万円になります。
 

注意点としては、固定資産税評価額は被相続人が亡くなった日の年度を使用するようにします。年度が異なると、固定資産税評価額が変わっている場合もありますので、正しく計算できなくなってしまいます。

 

小規模宅地などの特例を適用させる

親から相続するアパートの土地は、条件を満たせば小規模宅地などの特例を適用させさらに評価額を下げることができます。

適用される限度面積は200㎡、減額割合は50%となります。例えば500㎡の土地だったとしても200㎡までの部分は評価額が50%減額されます。

小規模宅地の特例は、親が経営していた賃貸物件を相続、自宅の相続に適用することができます。

 

手順3:全ての遺産を合計し相続税の課税対象額を算出する

相続アパートの土地と建物の評価額がわかったら、不動産以外の全ての遺産と合計します。

相続税を計算に必要な課税対象額を算出するためです。詳しい手順は以下となります。

 

①相続するアパート以外にも故人が所有していた相続財産を合計する

例えばアパート以外に預貯金、故人の自宅などといった財産があれば全てを洗い出し、合計します。負債も相続財産となり、プラスの財産から差し引きます。

 

②相続財産の合計から基礎控除額を差し引き課税対象額を算出する

基礎控除額は、相続人の数によって決まります。
以下の式で計算することができます。

基礎控除額 = 3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)
1人なら3,600万円、2人なら4,200万円控除されるイメージです。
控除額を計算したら以下の式で課税対象額を調べます。
 
課税対象額 = 相続財産の合計 ― 基礎控除額

もしも課税対象額がゼロやマイナスだった場合は、相続財産の総額が基礎控除内に収まっているということになりますので、税金は発生しません。

手順4:課税対象額を相続人で割り振って相続税を計算する

相続人ひとりひとりが支払う相続税を調べるために、ここからちょっと面倒な手順を踏みます。

①まずは課税対象額を法律で決められた割り振り方で、それぞれの相続人に割り振ります。

②割り振りされた課税対象額から、それぞれの相続人の相続税を導きだします。

③それぞれの相続人の相続税を全て合計して、相続税総額を調べます。

④相続税総額を実際の遺産の割り振りに合わせて、相続人に相続税を割り振ります。

 

ややこしくて文章だけではわからないと思いますので、法定相続人が「配偶者、子ども2人」の3人で、課税対象額が1億円だった場合を例に、一人一人が支払う実際の相続税を計算していきたいと思います。

法律で決められた相続の配分は、配偶者が1/2、残りの1/2を子ども2人となります。

 

法定相続分

税率(控除額)

相続税額

配偶者

1/2

5,000万円

20%(200万円)

800万=5000万×20%-200万

子どもA

1/4

2,500万円

15%(50万円)

325万=2500万×15%-50万

子どもB

1/4

2,500万円

15%(50万円)

325万=2500万×15%-50万

 

 

 

 

相続税合計額1,450万円

ちなみに税率と控除額は以下を参考にして計算してください。
【相続税の速算表】国税庁HPより抜粋

法定相続分に応じた取得金額

税率

控除額

1000万円以下

10%

3000万円以下

15%

50万円

5000万円以下

20%

200万円

1億円以下

30%

700万円

 

相続税総額は1,450万円になりました

それでは、1,450万円の相続税を実際の遺産の割り振りに合わせて割り振っていきます。

 

実際の相続割合

相続税額の計算

支払う税金の額

配偶者

55%

1,450万×55%=797.5万

0(配偶者控除の適用)

子どもA

25%

1,450万×25%=362.5万

362.5万円

子どもB

20%

1,450万×20%=290万

290万円

※配偶者は、法定相続分か1億6千万円のどちらか大きい方の金額までは控除が受けられますので、相続税の支払いはありません。


以上の手順を踏むと、アパートを相続したときに相続した人、一人一人が支払う税金がわかります。

相続アパートにかかる税金を実際に計算

それでは前の章で説明した手順で、親のアパートを子ども1人が相続する場合にかかる税金がいくらになるかを実際に計算していきます。

この章から読み始める方は、それぞれの手順の説明は省略しているためわかりづらく感じる箇所があるかもしれません!
わかりにくい部分がありましたら前の章の該当箇所で手順の詳細を確認してくださいね。

 

【相続するアパートの概要】

相続の15年前から親が経営していた賃貸アパート

建物の固定資産税評価額:2000万円

部屋数:10室の満室状態

路線価:260D

土地面積:250㎡  (整形地)

 

①相続アパートの建物の評価額を計算する

固定資産税評価額 ― 固定資産税評価額 × 借家権割合 × 賃貸割合 =

 2000万 ― 2000万×30%×100% = 1400万

相続アパート(建物)の評価額:1,400万円

 

②相続アパートの土地の評価額を計算する

1、路線価額 × 補正率 × 土地面積 = (A)
2、(A) ― (A) × 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合 = 土地の評価額

26万×1.00×250 = 6500万円
6500万 ― 6500万 × 60% × 30% × 100% = 5330万


ここから小規模宅地の特例を適用します。
小規模宅地の特例が適用できるのは、200㎡までなので、250㎡のうち200㎡までの土地の評価が50%減になる

5330万 ― 5330 × 200/250 × 50% = 3198万

相続アパート(土地)の評価額:3,198万円

元々の土地の評価額から比較すると賃貸アパートの土地はおよそ半分になりました。

 

③建物と土地の評価額を合計してアパートの相続税評価額を算出

相続アパートの評価額 = 1400万 + 3198万 = 4598万

相続アパートの相続税評価額:4,598万円

 

④すべての相続財産を合計し課税総額を算出する


【アパート以外の遺産の概要】

・故人の自宅(土地評価額2000万・建物評価額800万)
・預貯金1000万円
・負債1000万円


小規模宅地の特例は、故人と同居していた場合は自宅にも適用出来ます。
ただし自宅と賃貸の土地両方に適用を受ける場合は適用出来る面積に制約があります。
今回は自宅に適用はなく賃貸アパートのみの適用としています。
 

相続財産

評価額

賃貸アパート

4598万円

故人の自宅

2800万円

預貯金

500万円

負債

―1000万円

合計

6898万円

 

相続人は1人ですので、基礎控除額は3600万円になります。

総額から基礎控除額を引いた額が課税総額になります。

6898万 ― 3600万 = 3298万

 

⑤課税総額を法定相続人の法定相続分で振り分けて相続税総額を計算する

法定相続人はこの場合1人なので、3298万円に税率20%を掛けて控除額200万円を引いた額が納める相続税の額になります。

3298万×20% ― 200万 = 459万6000

 

「459万6,000円」が相続人の支払う税金の額になります。

 

小規模宅地などの特例を適用させるための条件

空室があると適用対象外になることがある

小規模宅地の特例の適用を受ける場合、アパートに空室があった場合はどうなるのでしょうか。相続開始時点で空室があった場合、空室の部分については減額の措置が受けられません。

賃貸割合の場合と同様に賃貸を継続していて、退去後すぐに入居者の募集を行っている場合は、一時的な空室であれば認められる可能性はあります。「一時的」の目安ですが、相続開始前後1ヶ月程度とされています。

相続でアパートを引き継ぐ場合は、相続時点でなるべく空室がないようにしておくのが理想的です。

 

申告期限まで賃貸事業を行う必要がある

賃貸アパートの土地で特例の適用を受けるには、相続税の申告期限まで継続して貸付事業を行っている必要があります。

 

3年以内の土地の取得は対象外となる

土地の取得が相続直前だった場合にも、適用対象外となります。

相続が始まる3年以内に賃貸経営を始めた土地の場合は適用の対象外となります。ただし、3年より前から事業規模(5棟10室規模)で賃貸経営をしている場合には、3年以内に取得した場合でも適用が可能です。

 

相続税申告を行う

小規模宅地の特例の適用を受ける場合は、相続税の申告が必要です。特例を受けるには、相続税申告書と共に小規模宅地等の特例を申請する書類を提出します。

相続財産が基礎控除の範囲内に収まれば税金の申告は必要ありませんが、特例の適用で相続税の支払い額がゼロになる場合には申告しなくてはいけない点には注意しましょう。

 

まとめ

賃貸アパートの相続税の評価額は、自用の土地と比べて評価を低くする事ができます。相続時には空室をなるべく出さないでおくこと、賃貸不動産が複数ある場合は評価の高い土地から小規模宅地の特例を利用する事で節税効果を最大限にする事ができます。

 

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