売却指導されないケースもある? 土地や持ち家がある場合の生活保護の基礎知識

生活保護を受給する方法

「生活保護を受けるにはなかなかハードルが高そうだなぁ」というイメージを持っている方も多いと思います。限られた予算の中で生活保護の受給世帯が増えすぎれば、行政としても受給条件を厳しくせざるを得ませんから、当然のことと言えば当然のことです。

それに不正受給をする人も増えており、国民からの批判もあって、どうしても厳しくなってしまうということもあるのでしょう。

しかし生活保護をめぐっては、いろいろと誤解や誤った情報が錯綜しているのも事実。よくわかっていないのに、「あの人がこう言っていた」「あの人はこうだからきっとそうに違いない」などと勘違いしてしまっている人が多いのです。

特に誤解が多いのは、「生活保護を受けるには持ち家や土地は必ず手放さなきゃいけない」「生活保護を受けるにあたって持ち家があると売却指導されちゃう」というものです。

確かに生活保護を受給するためには資産となるものを持っていてはいけないという決まりがありますが、だからと言って必ずしも「持ち家や土地は手放さなければいけない」というわけではありません。これはちょっと意外ですよね。どういうことなのか気になるところです。

 

今回はそんな生活保護と持ち家・土地の関係性について詳しく解説していきます。

「自分は家を持っているから保護は受けられないのかな?」「友人は家がありながら生活保護を受けているけど、いいの? どうしてOKなの?」「持ち家や土地を売却しないで生活保護を受けるにはどうしたらいいの? そんなのって本当に可能なの?」「保護を受けてても土地を売却できるって本当?」「保護を受けている父から土地を相続して売ってしまったら、そのお金で父の保護費を全部返さなきゃダメ?」などの疑問にお答えします。

生活保護制度の概要と受給の条件

まずは生活保護とはどのような制度なのかについておさらいしておきましょう。

 

生活保護とは経済的に生活が困窮し、自力では生活ができない人に対して生活保護費が支給される制度のことです。生活保護費によって最低限の生活を送れるようサポートするシステムですね。これは経済的に困窮した人にとって、非常にありがたい制度であり、命をつなぐための制度、生活をやり直すための制度でもあります。

 

ではその生活保護を受けるためにはどのような条件を満たしている必要があるのでしょうか? 生活保護を受けるための条件は次のようなものです。

 

・働いていて収入はあるものの、その収入では最低生活費に満たない

・病気などによって働くことができない

・生活を助けてくれる親族がいない

・預貯金や車などの資産を保有していない

・高額な不動産や生活に必要のない不動産を持っていない

 

不動産に関しては、「高額なもの」「生活に必要のないもの」を持つことができないのであって、そうではなく、生活に必要だと判断されれば所有していても良いのです。

 

「持ち家や土地は手放さないといけない」「生活保護を受ければ自分の家に住み続けることはできない」と思っていた方もいると思いますが、それは誤り。必ずしもそうではないと覚えておきましょう。

原則として、持ち家にはそのまま住める

所有する持ち家がなく、マンションやアパート、借家など家賃が発生する賃貸物件に住んでいる場合、その家賃や地代は生活保護における住宅扶助の対象となり、実費を支払ってもらうことが可能です。

ただし住宅扶助には上限額があります。上限額については厚生労働省が決めており、世帯人数によって地域ごとに異なります。

上限額を超す家賃の賃貸住宅に住んでいた場合、自分で生活扶助の中でやりくりすればいいだけなので、必ずしも引っ越す必要はありません。ただ家計を圧迫しますから、特別な事情がない限りは引っ越すことを指導されるでしょう。家賃は固定費なので、それが高いと致命的ですからね。食費などを切り詰めなければならなくなり、生活が非常に厳しくなります。

転居にかかる費用は生活保護から出してもらうことができるのでご安心ください。

 

さて、では持ち家があり、そこに住んでいる人の場合はどうなるのでしょうか? 結論から言ってしまうと、生活保護を受けるにあたって、持ち家にはそのまま住むことができます。

なぜなら住まいは生活において必要なものだから。たとえ生活保護を受けることになっても、原則として現在居住している家は保有することが認められます。最低生活を維持するためには、自分の家に住むということも必要ですからね。

 

しかしこれも原則、ということであって、すべての持ち家がそうだと言うわけではありません。それについては後ほど詳しく見ていきましょう。

経済的自立のために行われる「資産活用の指導」

自分で生活をしていくためにあらゆる手段を講じて努力したけれども、自力での生活は無理……という場合に認められるのが生活保護の受給。その「あらゆる手段」の中には、持ち家や土地などの資産を活用することも挙げられます。

そのため福祉事務所へ生活保護の相談に行くと、資産を活用するようにと具体的な対策を指導されます。

前の項で挙げた「所有する持ち家に自分で住む」というのも立派な資産の活用ですが、他に行われる可能性のある「資産活用の指導」とは一体どういったものがあるのでしょうか? 詳しく見ていきましょう。

 

たとえば自分の所有する家に住んでいても、使わない部屋がある、部屋が余っているといった場合、その部屋を他の人に貸して賃料をもらうように指導されることもあります。家賃収入が生まれることによって、自分の生活費が賄えるようになるためです。

 

また所有している不動産を賃貸に出している人の場合、賃料を現状よりも高くするように指導されることになります。賃料を上げれば今より多くの収入が入ってきますから、その分で生活ができるようになるということですね。

 

賃貸に出している不動産に自分自身が住んでおらず、自分は他の賃貸物件に住んでいるといった場合は、自分の持っている持ち家に住むよう言われます。自分が持っている家に住めば賃料はかかりませんから、それで生活費が浮きますよね。

 

こういったことが、不動産という資産活用の指導として行われます。生活保護の受給を申請する前に、所有する不動産を活用して自分の生活を立て直してほしいということです。

 

そしてもう一つ。ここがポイントですが、当然ながら「売却するように」と指導されることもあります。売却以外の活用で十分なお金が作れない場合や、自分で利用する(住む)以上に処分価値(売却する価値)があると判断されれば、持ち家を売却することが指導されるのです。

 

このように、生活保護を受けるにあたり、持ち家を売却することを指導されるケースと指導されず所有して住み続けていいケースが存在するというのが実際のところ。

では生活保護を受けるにあたって売却しなくてはいけない不動産=「持っていてはいけない不動産」とはどんなものなのでしょうか?

また逆に「持っていてもいい(持っていても生活保護を受けられる)不動産」はどんなものなのでしょうか? 「自分のケースはどっちなんだろう?」という方は、次の項で確認していきましょう。「売らなきゃいけない」と思っていたのに、意外とそのまま住めるかもしれませんよ。

生活保護を受けるために保有していてはいけない不動産とは?

持っていると保護を受けられないという不動産とは、ずばり「住宅ローンが残っている持ち家・土地」のことです。

 

なぜなら、住宅ローンの支払いが残っている持ち家や土地を保有している人に生活保護費を支給してしまったら、国のお金で個人の借金を返済していることになってしまうため。また生活保護費で個人の資産を増やす援助をしてしまうことにもなってしまいます。

 

だからこそ住宅ローンの残っている持ち家・土地の場合は、売却して住宅ローンを完済するのが先というわけです。住宅ローンを完済した上で、なおかつ最低限の生活を営むためのお金がないという経済状況であれば、生活保護の申請を行うことになります。なるほどなと思いますよね。これを認めてしまったら、ローンを払うことが困難になってしまった人がみんな保護を受けて返済すればいいやと思ってしまいかねませんから……。

 

なお住宅ローンが残っている状態でも、とにかく早く生活保護を受けたいという場合は、福祉事務所で不動産の売却への明確な意思を伝え、交渉していくという方法もあります。

そのためには、売却のために不動産の査定を行ったり、査定の上で不動産会社と契約を結んだりして、不動産売却のための活動を行っていることを示す必要があるのです。たとえば「現在、〇〇不動産と契約を結んでマンションの売却活動をすすめているところです」とハッキリ主張すれば、売却前でも保護を受けられる可能性があります。

なんだか仕事を辞めてから雇用保険をもらうのに就職活動をしていることを認めてもらうためにハローワークへ行ったり面接を受けたりするのと似ていますね。

ちなみに福祉事務所側も、不動産売却のための活動をしっかり行っているかどうか調査しますから、嘘はいけません。嘘をついてもすぐにバレてしまいますし、心証が悪くなるのでやめましょう。福祉事務所の担当者との信頼関係を築くことも大切です。

 

「まだ売れていないから保護を受けるのはムリ……」と諦めないこと。本当に生活が困窮していて、1日でも早く助けてもらいたいのであれば、売却活動を進めながら福祉事務所へ相談に行きましょう。

不動産の売却査定をスピーディーに行いたいのであれば、一括査定サイト「イエイ」が便利。スマホがあれば簡単に査定依頼が申し込めます。

また住宅ローンの残額が少なく、短期間で返済が終わるという場合にも、生活保護の受給を認められます。残額や返済期間の目安としては、東京都で300万円以下、生活扶助基準の15%以下に毎月のローン返済が収まること、5年以内に返済が完了することとなっています。

 

つまり住宅ローン付きの不動産があっても、売却活動が認められれば生活保護も受けられる可能性があるということですね。

 

ただし注意したいことも。売却が成立する前に生活保護の受給がスタートした場合、売却できた時点で入ってくる売却代金については、生活保護の受給開始から売却成立までに支給された生活保護費をさかのぼって返還する必要があります。「家が売れたのなら、これまでに払ったお金をちゃんと返してね」ということですね。この決まりについてはしっかり覚えておきましょう。

 

不動産を売却して得た売却利益でこれまでの生活保護費を返還し、それでもお金が残ったという場合には、生活保護費が減額または支給自体が停止されることになります。

「え、いきなりもらえるお金が減っちゃうの?」「保護費がもらえなくなるなんて不安でしかない」という方もいるでしょう。しかし売却して得た利益がなくなって自力で生活できなくなったときには、また生活保護費の受給額は元に戻るので心配いりません。以前と同じ条件で受給することができます。

 

なお不動産の売却査定なら、「イエイ」がおすすめ。無料で複数社から不動産の一括査定が行えます。「念のため、先に家の価値を知っておきたい」「いくらくらいになるのか調べておきたい」という方はぜひ利用してみてください。

 

ちなみに当然ながら住宅ローンに限らず、借金があったままでは生活保護の認定はされません。借金をなくすよう、指導されます。「黙っていればわからないだろう」というのもNG。必ず調査されてバレてしまいますから、正直に申告しましょう。自力での返済が不可能な場合は、破産手続きなどの処置も必要となってくるため、どうすればいいか相談するようにしてください。

保有したままでも生活保護を受けることができる不動産とは?

次に、持っていても生活保護が受けられる不動産についてです。これはもうおわかりかと思いますが、「住宅ローンのない持ち家」です。「借りているお金はすべて返しましたよ、家は完全に自分のものですよ」というケースですね。

住宅ローンを完済してある持ち家であれば、保有していても問題なく生活保護を受けることができます。

 

土地に関しても、住宅ローンの支払いが済んでおり、「将来的には持っている土地を駐車場として活用したい」というケースや、「農業を行う農地として利用している」というケースでも保有が認められます。

住宅ローンがなくても高価な不動産は売却指導をされる

「うちは住宅ローンを完済しているから大丈夫」と思った方、ちょっと待ってください。住宅ローンを完済していても、所有が認められず売却指導をされる不動産もあります。

それは、値段が高い=高額で売れる価値のある家・土地です。先ほども少しご紹介しましたが、自分が住む=利用するよりも処分(売却)したほうが高い価値があると判断された不動産のことですね。

 

福祉事務所から、売却すれば高い金額で売れると判断された持ち家・土地については、売却するよう指導されることになります。高額で売却できれば、生活保護を受ける必要がありませんから、当然です。

 

ただどれくらいの金額の価値がある不動産であれば売却しなければならないかというのは、一概にいくらと言うことができません。福祉事務所によってその基準が異なるためです。

一般的には、売却すれば2,000万~3,000万円以上になるような不動産なら、売却するよう指導されると言われています。

とは言えこれは必ずしもそうとは言えないため、福祉事務所に確認しましょう。

福祉事務所へ行く前に売却価格を調べるには、一括査定サイトを利用

福祉事務所へ行って相談する前に、自分の所有している不動産の価値が知りたいという方は、不動産の売却価格について一括査定が行えるサイトを利用すると便利です。

複数社の査定価格を見比べることができるため、自分の持ち家・土地の価格相場がわかりやすいというメリットもあります。

 

査定額が基準以下であれば手放すことなく、持ち家に住んだまま生活保護を受けることができますし、想像以上に高い金額で売却ができるということがわかる場合もあります。

どちらにしても売却査定をしておいて損はありませんから、福祉事務所へ行く前に一括査定をしておくといいでしょう。

 

一括査定サイトなら、「イエイ」がおすすめです。1,000社にもおよぶ大手・中小の優良不動産が登録しているので安心して利用できます。

またイエイでは、悪徳な不動産会社を徹底的に排除しているため、とにかく安心感がバツグン。大手だけでなく、地域に根差した地元密着型の不動産会社から査定をしてもらうことができるのも嬉しいポイントです。

 

「売却指導される前に自分で売却価格を知っておきたい」「売却指導されないよう、持ち家の価値が低いことを福祉事務所に証明する材料が欲しい」「売却価格によっては生活が立て直せるかもしれない」「とりあえず不動産のプロに持ち家の評価を仰ぎたい」などの思いを抱えている方は、ぜひ一括査定サイト「イエイ」を利用してみてはいかがでしょうか。

売却しなくてはならないけれど自宅に住み続けたい場合は?

「住宅ローンが残っているから、せっかく買ったマイホームを売却しないと生活保護を受けられない。でも本当は長いこと住み慣れた家に住み続けていたい……」という人もいるはず。誰だってせっかく買った自分の家を手放したくないですし、思い出の詰まった家を出ていくのはイヤですよね。

そんなときは「ハウスリースバック」というシステムを利用するという手もあります。

 

ハウスリースバックとは、生活保護を受けるために持ち家を一旦売却し、売却した相手(買主)と賃貸契約を結んで、賃料を払いながら元・持ち家に住み続けるという仕組みです。

 

大手不動産会社がこのサービスを提供しているので、「持ち家からどうしても離れたくない」「引っ越したくない」「引っ越して子どもの学区が変わるのはかわいそう」などという方は検討してみるといいでしょう。

 

ハウスリースバックを使えば、住み慣れた家でそのまま暮らすことができますし、生活保護の申請もできるようになります。また売却した相手との交渉次第では、将来的に持ち家を買い戻すこともできる可能性があります。

 

ただしこのシステムは住宅ローンを滞納し、持ち家が競売にかけられている人は利用できないので注意しましょう。

 

さらにリスクとして、家賃が相場より高くなる可能性がある、一般的な売却と比較すると買取価格が安い傾向にある、将来的に買い戻す際は売却時より高い価格になるということが挙げられます。

 

ハウスリースバックを利用する際には、こうしたリスクも含めてどうするか検討するようにしましょう。

高齢者の場合は生活保護よりリバースモーゲージが先

高齢者になれば生活保護を受ける人の割合も増えてくると思いますが、2007年度から、居住用の不動産を持っている人が65歳以上の場合は、「リバースモーゲージ制度」の利用を生活保護より優先するよう求められるようになっています。不動産所有者に配偶者がいる場合は、配偶者も65歳以上のときに求められます。

 

リバースモーゲージ制度とは、生活保護が必要な世帯向けに生活支援資金を長期にわたって貸し付ける制度のことです。各都道府県の社会福祉協議会が、持ち家を担保にして毎月一定の金額を貸してくれるという制度になります。不動産の所有者が亡くなった場合、担保権を実行するか相続人が売却を行うかして、それまでに貸し付けた金額を回収するというシステムです。

 

この制度がつくられた目的は、高齢者の生活保護が増えることを抑制するということ。また生活保護を受けて生活していたのに、その子どもが資産である持ち家を相続するのはおかしいという考え方があったことに由来します。

 

リバースモーゲージ制度を利用する条件としては、所有する居住用不動産の実勢評価額が500万円以上であること、抵当権などが設定されていないこととなります。

所有する物件が対象となった場合、毎月生活費をローンとして貸してもらうことが可能。貸してもらえる金額は生活保護基準額の1.5倍となり、収入があった場合は減額されることになります。生活保護費よりも若干多く貸し付けてもらえるというのはありがたいのではないでしょうか。

 

なお貸付の上限は、一戸建ての場合、物件の評価額の7割、マンションの場合は5割です。もし上限額を超えた場合は、持ち家を売却して生活保護に移行することになります。

メリットとしては、連帯保証人がいらないこと。また割合小さい物件も対象となることです。あとは生活保護を受けるということに抵抗がある人でも、自分の持ち家を担保にしてお金を借りることができるというのは助かるでしょう。持ち家にそのまま住めるというのも高齢者にとっては安心できる点だと思います。

またリバースモーゲージの利率は、長期プライムレートとなり上限は3%です。

 

ちなみにリバースモーゲージ制度に申し込み、貸し付けが実行されるまで生活費が足りない……という場合も心配無用。その間は生活保護を利用することができます。

生活保護を受けていても土地の相続はできるの?

次に、生活保護を受けていた場合でも、親などが亡くなった場合に土地を相続できるのかどうかについて見ていきましょう。

 

結論から言うと、生活保護を受けていたとしても、親族の遺産相続による土地の相続は可能です。また「相続はしない!」と放棄することも選べます。

しかし遺産相続を行うことにより、生活保護を受給できる条件を満たさなくなり、生活保護が停止または廃止される可能性もあるので注意しましょう。「親から土地を相続して売却したら、けっこうなお金になった! 保護費ももらいながら大金が手に入ってラッキー」ということにはなりません。

 

また土地を相続し、それを売却した場合は、相続したときから売却までに受給した生活保護費を返還する必要があります。

 

土地を相続すると生活保護を受けられなくなる、生活保護を受けていたほうが良いという場合は、相続を放棄するという選択を取ることも可能なので安心です。自分がどちらにしたほうが得なのかを考え、相続するか放棄するかを決めましょう。

 

ちなみに生活保護を受けている人が不動産を相続した場合、固定資産税の支払いが免除されるということです。

固定資産税の免除を申請したい人は、自分の居住地域の市役所にある固定資産税担当課にて免除申請を行います。

 

固定資産税の他にも、東京都の場合であれば、個人の都民税、個人事業税、都市計画税が減免の対象となります。納期限が来る前に申請するようにしましょう。

生活保護を受けている人が亡くなった場合の持ち家・土地について

生活保護を受給している高齢者の中には、家や土地を所有しており、「自分が亡くなった後はどうなるのだろう?」と不安な方もいるでしょう。

では生活保護受給者が土地を所有しており、亡くなった場合、その持ち家や土地はどのようになるのでしょうか?

 

その場合も通常と同じように、遺産として相続人に相続されます。相続した人が家や土地を売却しても、被相続人が生前に受給していた生活保護費を返金する必要はありません。生活保護を受けていた親から土地を相続しても、親の受け取っていた生活保護費を返金しなくていいということです。これは親にとっても子どもにとっても安心ですね。

 

ただしはたから見るとこの仕組みには疑問を感じるのも事実。「なぜ相続人は生前に扶養義務を果たしていなかったのに遺産を相続できるのか」「義務を果たしていなかったのにおかしいのではないか」という声もあるのです。

これは確かに当然と言えば当然でしょう。たとえば親が生活保護を受けていた場合、相続人である子どもは親の生活の面倒を見ていなかった(経済的な援助をしていなかった)のに、親が亡くなったら家や土地を相続して売却し、お金を手に入れた。それでも国に生活保護費を返金しなくていい。ということになります。これをおかしいと思う人が多いというのは仕方のないことと言えます。

 

とは言え日本の資産のうちなんと4割は相続によって得られたものと言われていますから、国としても国民の生活基盤を奪ってはいけないと考え、そうした仕組みのままになっているのだと言えるでしょう。

 

その代わりと言っては何ですが、居住用の住居を所有する高齢者の場合は、生活保護を受ける前に先ほどご紹介したリバースモーゲージの利用をすすめられるようになったというわけですね。

しかし土地についてはリバースモーゲージ制度が利用できませんから、これまで同様、所有者である高齢者が亡くなれば相続人に相続されるということになります。

自動車は必ず売却しないといけないの?

ここまで持ち家や土地について見てきましたが、生活保護を受ける際に所有していてはいけないとされる資産の中には、自動車もあります。

では自動車については必ず売却して手放さなければならないのでしょうか?

 

現段階では、日常生活の利便性のために利用するだけであれば自動車の保有は認めないということになっています。

 

しかし生活保護を受けるにあたって、自動車の所有が認められるケースも増えてきています。たとえば以下のような場合には自動車を所有していても良いとされています。

 

・農業や個人タクシー、運送業などの事業に利用する場合

・障害者や深夜勤務、公共の交通機関を利用するのが困難などの事情により通勤に必要な場合

・障害者や障害児(身体障害に限らず)の定期的な通院・通学・通所に利用が必要となる場合

・公共交通機関を利用するのが非常に困難な地域において、定期的に通院・通学・通所に利用しなければならない場合

・病気やケガ、失業などで就労を中断中だが、6ヶ月以内に就労して生活保護から抜け出せる見込みがある場合(6ヶ月以上生活保護が続いていても、仕事に就くために具体的な活動を行っている場合は約1年以内まで所有が認められる)

・公共の交通機関を利用することが非常に困難な地域において、就職活動を行うのに必要となる場合

・子どもを保育所などへ送り迎えするのに必要となる場合

 

これらは家族を自動車に乗せる場合や家族が自動車を運転する場合も含まれています。

ただしこれは、障害者の通勤に必要となる場合を除き、自動車を処分(売却)する価値が低いこと、自動車の維持費を保護費でまかなえること、自動車以外の交通手段では移動が難しいことなどが条件とされています。

 

またここに上げたケース以外であっても、何か特別な事情がある場合は自動車の所有を検討してもらえることがあります。「どうしても車がないと生活に困ってしまう」という場合は、相談してみましょう。

しかし所有が認められなかった場合は、たとえ処分(売却)価値がないような自動車であっても、生活保護を受けるために売却を求められるのが現状となっています。これは少々厳しいですね。

長年使用してきた自動車を少しでも高く売るためには、以下のサイトを利用してみてください。

 

まとめ

これまでの結論をまとめると、持ち家や土地、車があっても条件次第で生活保護を受けることは可能になります。生活保護を受けている人が遺産として家や土地を相続することも可能ですし、生活保護を受けている人が自分の持ち家や土地を遺産として相続人に相続させることも可能です。

「自分はきっとムリ」と最初から諦めてしまうのではなく、自分が置かれている状況を客観的に整理して、不明な場合は福祉事務所へ積極的に相談してみましょう。保護を受けることで生活を立て直すチャンスになるかもしれませんから、躊躇は禁物ですよ。

現在は生活保護と無関係な方も、今のうちに生活保護と持ち家・土地・車といった資産の関係性について正しく理解しておくと、将来的にも安心です。